今回は岡山市のバス路線の再編について考えます。
「めぐりん」のJR岡山駅前への乗り入れ
岡山市内を循環するバス「めぐりん」を運行する八晃運輸は2021年1月、JR岡山駅前への乗り入れを国に申請していましたが、却下されたことが分かりました。
めぐりんを運行する八晃運輸の岡山駅前への乗り入れをめぐっては2021年2月、岡山市や事業者が集まってバス路線などを考える協議会の場でも議論が紛糾しました。
(両備グループ/小嶋光信 代表)
「めぐりんさんはこの1月の初めにこの協議会に何の話もなく申請を出された」
(八晃運輸/成石敏昭 社長)
「岡山駅の乗り入れに対して当社は全く取り下げる気持ちはありません」
(両備グループ/小嶋光信 代表)
「岡山市の方が議論しろということを指導するのが筋ではありませんか」
(岡山市都市整備局/平澤重之 都市・交通・公園担当局長)
「岡山市が手続き上で何かすることはできないので事業者が国に申請をして国が審査して判断する」
めぐりんを運行する八晃運輸は約8年にわたって岡山駅前への乗り入れを要望。2021年1月、中国運輸局にJR岡山駅の東口バスターミナルへの乗り入れを申請しました。
しかし2021年8月、中国運輸局はこの申請を却下。中国運輸局は却下理由について「管理者の承諾がないため」としています。
八晃運輸は申請の却下は不服だとして10月下旬、国交省に対し処分の取り消しを求め審査請求を申し立てました。
(八晃運輸/成石敏昭 社長)
「同業他社さんの了解がない以上はJRとしては使用許可をめぐりんに出すことはできませんと。(Q.そうした理由を運輸局から電話で聞いた?)口頭ですよね。法的にそんな条件あるんですかと。不服審査を請求して、そこのところ(却下理由)を明確に示していただきたい」
岡山駅東口のバスターミナルを管理するJR西日本岡山支社と岡山県バス協会は、いずれも「回答できる立場にない」としています。
協議会をまとめる岡山市はめぐりんがバスターミナルに乗り入れした場合、運行状況がどうなるのかなどを2年前に調査しました。
(岡山市都市整備局/平澤重之 都市・交通・公園担当局長)
「我々の方で現地に行って現場を測って図面をひいてバスが安全に入っていけるということを確認したということです」
今回、乗り入れが却下されたことについては。
(岡山市都市整備局/平澤重之 都市・交通・公園担当局長)
「岡山市は手続き上絡むことはありませんけれども、市民の方々、バス利用者の方々の利便性を考えると、物理的に可能であれば入るべきだと思っています」
却下理由について専門家は
(松木梨菜リポート)
「専門家は、このバスターミナルの安全確保ができないことが却下理由の根本にあるのではないかと指摘しています」
(岡山大学大学院/橋本成仁 教授)
「現状、ほぼいっぱいいっぱいの状況で使っているというようなことだと思いますので、下手な運用をすると、中で事故が起こることも懸念されますので、安全に安定的に運行しようと考えると今いる会社がどこかに出ていくか、あるいはバスターミナル自体を大きくすると」
法定協議会のメンバーで公共交通に詳しい岡山大学大学院の橋本成仁教授は、事業者の意向を調整する必要があると考えています。
(岡山大学大学院/橋本成仁 教授)
「安全に安定的に運営できるということが確認できないと。その確認するためには事業者の調整が必要であるということです。駅前広場をJRさんがやっているんであれば、JRさんということになるかもしれませんし、バス会社も集まって岡山市も公共交通会議もやっておりますのでそこの議論になるということもあるかと思います」
法定協議会は2月以降開かれず
法定協議会は2021年2月以降、開かれていません。
協議会では路線の再編と運賃の適正化、高齢者・障害者割引制度の3つを実現しようとしていましたが、路線の再編については「中断」となりました。
運行の効率化や利用者の利便性の向上などが狙いですが、事業者間で意見がまとまらず中断となったんです。他の2つは進んでいます。
まず運賃の適正化については市内を運行する9社のうち8社が賛同していて協議を進めています。
そして割引制度は10月1日からスタート。高齢者や障害者が路線バスや路面電車を利用する場合、運賃が半額になります。
2つは前進していますが路線の再編については進んでいないのが現状です。
今後、岡山市は事業者側から再開の意向が示されたら議論を再開するとしています。これまでの経緯をみているとまだ先のことになりそうなんですが、こうした状況に危機感を示すのが橋本教授です。
事業者の「存続」のために議論を再開を
アフターコロナを見据えて今のうちに議論しておく必要があるとしています。その背景にはバス利用者の減少がありました。
(岡山大学大学院/橋本成仁 教授)
「全国的にみて2~3割ぐらい利用者が減ってると、新型コロナが収まっても(利用者数が)元に戻るかといわれても、戻らないんじゃないかって思うわけなんですね」
新型コロナの影響でリモートワークや宅配サービスが増えるなど、私たちの生活は「変化」しています。
(岡山大学大学院/橋本成仁 教授)
「いろんな人の生活が変わってしまったと。それがバス会社にとって長期的に構造的に大きな影響を与えるだろうと思います。赤字幅が増える。減便・廃止。最悪、会社自体がなくなるということが出てきても不思議はないかもしれないですね」
それぞれの事業者の「存続」のために議論を再開することを求めています。
(岡山大学大学院/橋本成仁 教授)
「できるだけ効率の良い交通システム体系を組み直すと。そのためには調整が難しいといいながらも、そこ(再編)をやらないとどうしようもないですよね」
岡山市は新たな取り組みを
一方で、岡山市も事業者を下支えしようと新たな取り組みを行います。市内を走る路線バスと路面電車のほぼ全ての路線で運賃を無料にするというものです。
11月28日と12月10日の2日間行うもので、誰でも何度でも無料で乗ることができます。
市によると、路線バスと路面電車の利用者は新型コロナ感染拡大前と比べ3割から4割減っていて、公共交通の利用を促進するのが狙いです。
(岡山大学大学院/橋本成仁 教授)
「非常に厳しい時期を過ごしているのは間違いなくて、そこを行政がいろんな手で下支えしている最中なんですけれども、街中にも人出が出てきているんで、公共交通使ってもらえるのか、今もう1回公共交通を頭に入れてもらうタイミングなのかなと思います」
岡山市内を運行するバス事業者は9社あり、全国的にみても多いといわれています。市民の足がなくなることがないよう、行政と事業者が調整を重ねることが求められます。