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【特集】キウイの栽培続けて約40年 「より甘く、よりおいしく」挑戦し続ける男性 香川・善通寺市

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 香川県善通寺市に約40年間「キウイ」の栽培を続けている男性がいます。男性が目指しているのは「より甘いキウイ」です。

 キウイを専門に栽培・出荷している善通寺市の農業法人「キウイバード」ではこの日、キウイの糖度検査が行っていました。輸入モノのキウイは12度から13度が多い中、ここでは15度が出荷の最低ラインです。

(キウイバードコーポレーション/島田満沖 社長)
「これ(印)はね、園地別、生産者の畑の番号」

ビワ農家がキウイづくりを始めた理由

 「キウイバード」の社長・島田満沖さん(73)は、高校卒業後、飲料メーカーやクレーン会社で働いていました。しかし、ビワ農家を営む父親が倒れたことをきっかけに20代後半から実家を手伝うようになりました。

(キウイバードコーポレーション/島田満沖 社長)
「当時ビワを収穫していた時のかごです。こんな風に木によじ登って枝に引っ掛けて、これに収穫したビワをここに入れて……。懐かしくもあり、ちょっと寂しいような気もする」

 このころ、ビワ農家としての経営は厳しく、島田さんは新たな作物を探していました。そんな時、県の農業試験場が品種開発を進めていたキウイと出会いました。

(キウイバードコーポレーション/島田満沖 社長)
「先入観を持って否定していたんだけど、当時は無名のキウイだけど、その時のキウイフルーツがうまかったんですよ」

朝から晩までキウイづくりと向き合う日々

 島田さんは10アールほどの農地を借りてキウイづくりを始めました。しかし、当時周囲にはキウイづくりについて教えてくれる人はいませんでした。

(キウイバードコーポレーション/島田満沖 社長)
「座っていたのはこの椅子ね。観察をとにかく続けたら、何か木が教えてくれるんじゃないかなと」

 ヒントを得ようと岩に腰をかけて朝から晩まで木を見続けたこともあったそうです。

 島田さんは目指していたのは、大量に輸入される海外のモノと差別化するためより甘く、高く売れるキウイづくりです。そのために取り組んだものの1つが「肥料づくり」です。

(キウイバードコーポレーション/島田満沖 社長)
「適正な酸度をいくらにしたらいいんだろうかという模索は相当長い間ありました」

 今使っている肥料にはカキの殻や昆布などの粉末を混ぜているそうです。この他にも、木1本1本の「状態」を記録した「カルテ」を作成。せん定の方法や肥料のタイミングを変えるなどして、最も適した管理方法を探り続けました。

販路の開拓で感じた「高い壁」

 品質の向上と合わせて取り組んだのは新しい販路の開拓です。「お歳暮の贈答用」としてデパートに売り込みましたが……。

(キウイバードコーポレーション/島田満沖 社長)
「『もう来るな』というのも何回も言われた」

 贈答用のキウイが一般的でなかったこともあり、高い壁を感じました。それでも島田さんは営業を続け、何とか売り場に置いてもらえることになりました。

(キウイバードコーポレーション/島田満沖 社長)
「30回は行った。当時はキウイフルーツは野菜コードだったんですよ、果物ではなく。だから果物売り場ではなく、野菜売り場に置かれたジャガイモとかニンジンとかタマネギの間に置かれた」

 デパートに並べられても初めは全く売れませんでしたが、試食した人が大量に注文するなど、次第にその品質が認められるようになりました。

(キウイバードコーポレーション/島田満沖 社長)
「34ケース(170個)持ってこいという返事をいただいて、その時はうそかと思ったんだけどね。もう天にも昇るような気持ち」

 その後、島田さんのキウイは東京・銀座の千疋屋などでも扱われるようになり、今では北海道から注文が入るそうです。

1998年、キウイに特化した農業法人を設立

 40歳を過ぎたころ島田さんは栽培する作物をキウイ一本にしぼり、1998年にはキウイに特化した農業法人、「キウイバードコーポレーション」を立ち上げました。

 若手農家の育成にも力を入れていて、今は地元の若手農家と協力して1シーズンで、6種類、約100トンのキウイを出荷しています。

(キウイバードコーポレーション/島田満沖 社長)
「とにかくうまいものをお届けするというのがフルーツ農家の使命。プロである以上はね」

新たな課題に直面も…40年変わらぬ思い

 その後も「より甘いキウイ」、「おいしいキウイ」を目指して研究を続けていますが、最近は新たな課題に直面しています。それが「物価の高騰」です。

 キウイを出荷するときに実を包む「フルーツキャップ」や緩衝材、段ボールも値上がりました。

(資材購入など担当/国重亜紀子さん)
「1個単価は数円。10円しないぐらいの単位なんですけど、それがやっぱり何万個っていうような発注の仕方になるので、やはりそこはかさんでくる」

(キウイバードコーポレーション/島田満沖 社長)
「出荷資材と生産資材といろいろコストのかかる面はあるんですけど、極力企業努力の中で吸収していきたい」

 一部の商品では、仕切りをつけてフルーツキャップなしでも出荷できるような工夫もしましたが、キウイ自体の値上げは避けられない状況です。

 生産者としては苦しい状況が続きますが、島田さんはキウイの加工品を作るなど挑戦を続けています。

 キウイを作り始めて約40年、思いはずっと変わっていません。

(キウイバードコーポレーション/島田満沖 社長)
「買ってよかった、おいしかったと言ってもらえるようなキウイ作りを目指していきたい」

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