高松市のバス路線について考えます。11月、高松市はバスの運行本数を2024年度から大幅に減らす再編計画を明らかにしました。背景にあるのは「運転手不足」と「2024年問題」です。
(高松市の担当者)
「社会情勢や公共交通を取り巻く環境の変化に対応しながら、持続可能な公共交通ネットワークの再構築利用促進施策に取り組んでまいりたい」
11月28日、高松市の交通事業者などが出席した総合都市交通推進協議会で、バス路線の再編計画が示されました。
高松市では現在19路線36系統のバスが運行されています。再編計画ではこのうち、13路線の17系統を減便。2路線2系統を廃止します。
この多くは2024年4月に行います。
減便される17の系統では、平日は合わせて428便、土日祝日は合わせて340便が運行されています。これを、平日は263便から267便、土日祝日は201便から205便、約4割減便します。
減便や廃止をするのは、他のバス路線や電車と重複していたり、利用者が少なかったりする路線です。具体的に何時の便を減らすかなど詳細は決まっていませんが、利用者が少なくなる昼間の便が中心です。
「減便・廃止」の方針に利用者は……。
(利用者は―)
「4割!? ちょっと使いづらくなりますね。現状維持してほしいですね」
減便や廃止の背景にあるのは、「運転手不足と高齢化」です。
運行することでんバスの運転手は、2023年3月時点で118人です。年々減少傾向で、2014年と比べると20人近く少なくなりました。また、運転手の平均年齢は63.5歳と、2014年から5歳以上上がりました。
(ことでん/植田俊也 社長)
「非常にバス運転手の高齢化と人手不足に悩まされている。人数にすれば30人とかのレベルではないでしょうか。30人くらいは足りないと思います。フルスペックのサービスはできない状況」
この厳しい状況に追い打ちをかけたのが、2024年4月からドライバーの時間外労働に上限が適用される、いわゆる「2024年問題」です。これによって、運転手の業務量を2024年4月以降は減らす必要が出てきました。
(高松市/大西秀人 市長 5日の定例記者会見)
「限られた資源の中でいかに効率的な運行体制を確保していくか。そういうことで設定したのが今回の整備計画」
効率化のために市が減便・廃線と合わせて打ち出しているのが「経路の変更」と「路線の新設」です。
JR高松駅と香川大学医学部付属病院などを結ぶ大学病院線は、平日は1日40便運行していますが、これを1日14便に減らします。その一方で、ことでん伏石駅と大学病院を結ぶ路線を平日に1日6便。ことでん高田駅と大学病院を結ぶ路線を平日1日14便、新たに運行します。
これによって、電車とバスを乗り継いだ場合の大学病院へのアクセスが向上します。
高松市は、このような「電車とバスを組み合わせた交通」を目指しています。
(高松市/大西秀人 市長)
「乗り継ぎを増やすことによって、同じような資源でも、より広範囲の交通の需要を確保(していく)」
そこに深く関わってくるのが、高松市が目指す町の形です。
高松市は、中心市街地や、各地の駅周辺を「核」として、それぞれに人や商業、医療などのの施設を集めるまちづくりを進めています。核同士を結ぶ手段としては、「電車」を軸としています。バスを活用して「駅」に人を集めることで、効率的な交通の形を目指しています。
2020年にオープンした「ことでん伏石駅」には2021年11月にバスターミナルが整備され、電車とバスを乗り継ぐ結節拠点として期待されています。現在、伏石駅のバスターミナルには、4つの路線バスが乗り入れていますが、再編計画では高松空港に向かう路線も乗り入れる予定としています。
電車とバスを組み合わせる高松市の方針について、公共交通に詳しい呉工業高等専門学校の神田佑亮教授は、「簡単なことではない」と指摘します。
(呉工業高等専門学校/神田佑亮 教授)
「特に、乗り換えというのは、使う人にとっては嫌な行為。恐らく高松にお住まいの方がバスと何かを乗り継ぐというところって、あまりピンと来ないんじゃないか」
その上で、「乗り換え」を前提とした交通網を作るためには、利用者のストレスを少しでも減らすことが大切だと考えています。
(呉工業高等専門学校/神田佑亮 教授)
「ダイヤもそうですし、本当にそこでつなぐのがいいのか。相当な試行錯誤と、利用される方々へのコミュニケーションが必要になってきて、きっちり探りながらやっていかないと、結局利用者離れにつながる可能性もある」
(ことでん/植田俊也 社長)
「『地域のエリアの人たちの生活を豊かに』ということが一番ですから、住みやすい香川、住みやすい高松を、一緒に皆さん方と作っていきたいと思っている。きめ細やかな鉄道とバスのサービスをやっていきたい」