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【特集】大好きな動物を描く自閉スペクトラム症の双子高校生 同じ環境で育った兄弟の作風が違う理由は 高松市

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 右と左で絵のタッチが全く違う動物の絵。高松市に住む自閉スペクトラム症の双子高校生が描いたものです。ふたりは個展を開催したり、地元の動物園の看板を描くなど活躍の場を広げています。

 トラやゾウなどを間近に見ることができる東かがわ市のしろとり動物園。そんな子どもたちに大人気の動物園に8月8日、ちょっと個性的な動物が描かれた色鮮やかな看板が掲げられました。

 描いたのは高松市に住む平田泰一さんと祥大さんです。

祥大さん「泰一! ロバ大きく!」
泰一さん「ロバさん大きく!」
泰一さん「しろとり動物園」
祥大さん「の絵を描いて」
泰一さん「絵を描いて」
祥大さん「楽しいです!」
泰一さん「楽しいです」

 ふたりが絵を描き始めた3歳ごろの作品です。小さいころから大好きな生き物の絵を飽きることなく描き続けてきたふたり。現在は高松市の特別支援学校に通いながら大好きな絵に向き合っています。

 2025年5月には初めて個展を開くなど、ふたりの絵に魅せられた人はどんどん増えています。

 そんなふたりの作品をよく見ると……右と左で全く違う作風の絵がぴったりと中央で重なっています。まん丸い目が印象的な顔は兄の泰一さんが描いたもの。やや写実的で優しい表情の顔は弟、祥大さんが描きました。

(弟・祥大さん)
「(Q.泰一さんの絵はどう思う?)なんか愉快だなと思ってました!」

双子なのになぜ作風が違う?

 同じ環境で育ったふたりの作風がなぜこんなに違うのか? 今回の取材で、その答えが少しだけ見えてきました。

 泰一さんと祥大さんは3歳ごろに知的障害を伴う自閉スペクトラム症、ASDと診断されました。

(母・貴代美さん)
「私は落ち込むというよりは、とりあえずこの子たちをこの先可愛く育てようというか、みんなに可愛がられる子に育てようっていう方が先で。絶対誰かにお世話になるし」

 2歳になっても言葉を話さなかったふたりの様子を見て、母の貴代美さんは診断を受ける前から心の準備はできていたそうです。

(母・貴代美さん)
「とりあえず本を読み漁って、どうやって育てたらいいかな、みたいな。2人いるので。忙しすぎて。泣いてとかじゃなく、とりあえずどうしようみたいな」

 動物が大好きなふたりは、小さい頃は月1回以上しろとり動物園に通っていました。17歳になった今でもご褒美はしろとり動物園に行くことなんだそうです。

 この日、取材をしていて、ふたりの動物との触れ合い方が少しだけ違っていることに気づきました。

 写実的な絵を描く弟の祥大さんが積極的に触るのに対して……

祥大さん「襲わないよ。たいち、襲わないよ」
貴代美さん「なんていう犬?」
泰一「グレート・ピレニーズ」

 兄の泰一さん。動物の名前はばっちり覚えていますが、実は触るのちょっぴり苦手なんだそうです。泰一さんは動物を絵本で見るのが大好き。まんまるな目の作風も絵本の影響かもしれないと母の貴代美さんは話します。

 一方、泰一さんよりも写実的な絵を描く弟の祥大さんは、絵本より図鑑の方が大好き。ページまで暗記するほど読み込んでいたそうです。

 ふたりの作風の違いはそんなところが影響しているのかもしれないと貴代美さんは考えています。

大好きな「しろとり動物園」の看板制作

 大好きな絵に向き合い続けたふたり。高校2年生の終わりごろ、大きな作品を手がけることが決まりました。

 その内容はなんと、大好きなしろとり動物園の看板制作! 描くものは全てしろとり動物園にいる動物たちです。

 先に絵を描くのは弟の祥大さん。下書きが終わったら兄の泰一さんが祥大さんの絵を見ながら制作に取り組みます。そのため、大きな動物は弟の泰一さんに先に描かれてしまうそう。それでも……

記者「1人で絵を描くのと、2人で絵を描くのはどっちが楽しいですか?」
泰一さん「こっち!」
祥大さん「やっぱり2人が描く方がとても楽しいです」

(母・貴代美さん)
「卒業した後、生活できるくらい、自分たちが食べていけるくらいあればいいかなあと。私が絶対先に死ぬので。その後のことを考えると心配しかないので」

 ふたりで力を合わせた看板。わずか10日で完成しました。そして、8月8日に動物園で行われたお披露目会には多くの人が集まりました。

祥大さん「みんながアーティスト的に見てくれてとても楽しかったです!」
泰一さん「ありがとうございました」

 今では多くのファンがいる双子の作品ですが、最初のファンは母、貴代美さんと、父、博幸さんです。

(母・貴代美さん)
「気が付いたらずっと絵を描いてた。2人が描く絵が可愛いなとは思ったんですけど、上手とかいう感じじゃなくって。保育所入ったくらいでクレヨンにクレヨンをつけて色塗ったのを見てすご、とは思いました。そんな塗り方あるんやとは思いました」

(父・博幸さん)
「普通の兄弟では考えられない意思の疎通というか、そういうのは絵からも思うんですけど。僕ら夫婦でも分からないところがあって。言葉じゃない何かで会話してるのかなという感じですかね」

(母・貴代美さん)
「自分たちで好きなものを買って、ってしていってほしいなとは思ってますけど。(Q.力を合わせて?)そうそう! もちろんもちろん。そうですね。2人で一緒にしてもらえたらいいなとは思ってます」

 そんな2人の夢は……

(兄・泰一さん/弟・祥大さん)
「もちろん! 画家になりたいです!(Q.祥大さんと泰一さんで?)はい!(Q.なんで2人がいいですか?)兄弟愛で描かなきゃいけないんです」

 両親の愛情を受けて夢と大好きを追いかける泰一さんと祥大さん。そんな2人の姿を大好きな場所からこの看板は見守り続けます。

(2025年8月25日放送「News Park KSB」より)

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