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【特集】女子サッカー岡山湯郷ベル 失いかけた「地域とのつながり」を取り戻し、共に1部復帰へ

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 かつて「なでしこフィーバー」に沸いた女子サッカー。岡山湯郷ベルがある美作市も大きく盛り上がりました。しかし、その後、湯郷ベルは成績も観客動員数も落ちていきました。今シーズンは、失いかけた「地域とのつながり」を取り戻し、共に頂点を目指します!

 17日のアウェーでの開幕戦、エース横山選手の1点を守り抜き勝利した岡山湯郷ベル。ホーム開幕まで1週間を切った19日、チームの練習にも熱が入っていました。

(岡山湯郷ベル/谷口博志 監督)
「去年失点が多かったということを考えて、(失点)ゼロで終わるゲームを増やそうと。まさにイメージ通りのゲーム」

 湯郷ベルは現在、なでしこリーグ2部に所属。昨シーズンは、リーグ2位の45得点を挙げた攻撃力を武器に、1部昇格まであと一歩に迫る3位に入りました。一方で、24失点はリーグで4番目に多く、守備に課題を残しました。

 そこで今シーズンは、守備陣に実績のある選手を多く補強しました。チームに加わって3年目の高橋寿輝ゼネラルマネージャー、GMは戦力に大きな手ごたえを感じています。

(岡山湯郷ベル/高橋寿輝 GM)
「みんなが力を出してくれたら、なでしこリーグ史上初の全勝優勝というのを目指したいとは思っています」

 チーム結成から20年以上がたつ湯郷ベル。長年培ってきた「地域とのつながり」は、大きな強みです。

 この日は、地元のひな祭りの準備を、谷口監督とスタッフが手伝っていました。

(岡山湯郷ベル/高橋寿輝 GM)
「大体何か地元でやるときのリストに名前が入っています、最初から名前が。ああやって一緒に作業すると、勝手に仲良くなれる。でもこれが、2016年になでしこリーグ1部から2部に降格した時に、大きくぐらついてしまって……」

 2012年、湯郷の街は「なでしこフィーバー」に沸いていました。湯郷ベルに所属していた宮間選手、福元選手が、ロンドンオリンピックでなでしこジャパンの中心選手として活躍し、銀メダルを獲得。凱旋パレードが行われました。2人は、前の年に行われたワールドカップの優勝メンバーでもありました。

 しかし2016年……。

(黒田和則 GM[当時])
「宮間、福元含めて4人の選手が『辞めたい』と」

 中心選手たちがフロントと意見が合わないことなどを理由にシーズン途中に退団を申し入れ。大きな混乱の中、クラブも2部に降格しました。

(岡山湯郷ベル/高橋寿輝 GM)
「そこからちょっと(地域との)関係性があまりなく、2021年まで下降の一途をたどっていて」

 失いかけていた「地域とのつながり」。それを取り戻すため、湯郷ベルが始めた試みがあります。

 高橋GMがやってきた先には、元日本代表で、今のチームの絶対的エース、横山久美選手が。その横でGMは、エプロン姿に……。

 ここは、湯郷温泉街の中心部に2023年9月にオープンした湯郷ベルが経営するカフェ、その名も「ベルカフェ」。時間があるときは高橋GM自ら厨房に立ち、カレーや丼などを日替わりで提供しています。

(岡山湯郷ベル/高橋寿輝 GM)
「一番はコミュニティースペースという形で。稼げればいいなとかはなくて、いろんな人がここをのぞけば湯郷ベルと触れ合える」

 きれい好きという横山選手。店が忙しいと、掃除をしたり配膳を手伝ってくれたりするそうです。

(お客さんは―)
「すごく身近な存在でうれしくなります。去年はここ(ホーム戦)を全部見ました。選手がすごくかわいい」
「(選手たちが)湯郷を盛り立てようというコメントが多いんよ。やってくださるんじゃないかと思う」

 こうした「地域とつながる」取り組みはカフェだけではありません。

 津山市の小学校で開いたサッカー教室です。

「岡山湯郷ベル、知ってる人?(児童たちが手をあげる)おぉ、みんな知ってるな」

 ここ数年、子どもとのふれあいに力を入れていて、2023年は県内約50の小学校や幼稚園を回りました。

(参加した小学生は―)
「とても楽しかったし、プレーを見て驚きました」

(南小学校出身/内田好美 選手)
「地元が津山なので、地域の人の応援の力を一番身近に感じますし、いただいているパワーをこういう形(サッカー教室など)で恩返しできたら」

(岡山湯郷ベル/高橋寿輝 GM)
「(地元に)小さい子が少ない中で、しっかり関わっていかないと女子サッカーをやる子もいなくなってしまうかもしれない。女子サッカーの火種を絶やさない」

 地道な活動が実を結び、下降の一途をたどっていた観客数は徐々に回復。2023年の平均観客数は837人でした。これは、なでしこリーグ1部と2部を合わせても2番目に多い数です。比例するように、チームのスポンサーの数もここ3年で3倍近くに増えました。

 今シーズンからトップスポンサーになった美作市の英田エンジニアリング。事務所でデスクワークに打ち込んでいるのは、ディフェンダーの上村彩華選手です。
 湯郷ベルでは、プロ契約以外の選手は企業などで昼まで働き、夕方から練習に打ち込んでいます。英田エンジニアリングは3月から上村選手を受け入れています。

(岡山湯郷ベル/上村彩華 選手)
「他の部署の方も声をかけてくださったりするので、うれしいし楽しく過ごしています。結果で返さないといけないという覚悟がすごく高まります」

 英田エンジニアリングは、選手の雇用を始めたのは社会貢献だけでなく、社員に与える影響への期待もあると話します。

(英田エンジニアリング 総務部/角南元恵 部長)
「現役でやっている人がどういう気持ちで(仕事と競技)両方をやっていくのか、うちの社員も頑張っている人のいいところを見させてもらって学んでいこうと。『(選手が)うちに来ておられるんよ』と余計親しみがわきますから、社員も一生懸命応援してくれるんじゃないか」

 一度は失いかけた「地域とのつながり」。それを取り戻した湯郷ベルは、地域と共に再び歩み始めています。

(お客さん)「ファジアーノかベルがどっちが先に1部に上がるかなあ」
(高橋GM)「僕らは今年上がりますから、ファジアーノさんが上がってくれたら一緒に上がれます」

(岡山湯郷ベル/高橋寿輝 GM)
「どこを歩いても、どんな方にお会いしても、大体結果を知っているんです。街の中の一つのシンボルにはなっていると思います。『湯郷ベルがこの地域をけん引しているよね』といった、リーダー的な位置に、次のステップには行きたい」

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