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旧香川県立体育館解体へ 丹下憲孝氏が声明公表「慎重で責任ある判断が求められる」

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 香川県は、旧県立体育館の解体に3月中に着手する見通しです。設計を手掛けた故・丹下健三さんの長男で、建築家の丹下憲孝さんが「抗議の声明文」を公表しました。

 19日午前、丹下憲孝さんが会長を務めるTANGE建築都市設計のSNSなどで公表したものです。

 旧香川県立体育館の解体が進む状況について、「一つの建築の問題にとどまらず、日本の近現代建築のあり方全体に関わる重要な課題として強い危機感を抱いている」としています。

 2月10日、TANGE建築都市設計の役員が香川県庁を訪れ、知事に宛てた書簡を手渡しましたが、知事から解体の方向で進める旨の回答があったため、声明文の公表に踏み切ったということです。

 2025年7月、建築家らで作る民間団体が土地と建物を買い取るなどして民間資金で再生することを提案しましたが、県と県教委は「倒壊の危険性がある」ことなどを理由に協議には応じませんでした。

 その根拠としたのが、2012年に丹下さんの事務所が行った耐震診断の結果でした。しかし、丹下さんは2025年9月、KSBの取材に対し……。

(TANGE建築都市設計/丹下憲孝 会長 2025年9月)
「倒壊というと、確かに驚かれる方が。あしたにでも崩れちゃうのかなとかっていうこともあるかと思いますけども。私どもは一切そういうことは言っておりませんで。より長く使っていただくための補修、改修のための診断書であって、それ自身がそういう形で(解体の根拠として)取り沙汰されるのはちょっと私としては残念な気がしている」

 声明では、安全性や財政的な制約が重要な判断要素であることは理解しているとする一方、「どのような文化を未来に残そうとしているかという姿勢が問われている」とし、慎重で責任ある判断を求めています。

 香川県は「3月中の解体工事着手に向けて最終調整中」としていて、20日、近隣住民に対する工事の説明会を開きます。2027年9月までに解体を終える予定です。

【TANGE建築都市設計 代表取締役/CEO 丹下憲孝氏の声明全文】

 現在、旧香川県立体育館の解体が進められようとしている状況について、私は一つの建築の問題にとどまらず、日本の近現代建築のあり方全体に関わる重要な課題として強い危機感を抱いています。
 近年、日本各地において戦後に建てられた優れた建築が、十分な議論がなされないまま次々と姿を消しています。これらの建築は、単なる老朽施設ではなく、戦後の社会がどのような価値観のもとに都市や文化を築いてきたのかを示す、極めて重要な文化資産です。
 旧香川県立体育館もその一つであり、地域の風景として長く親しまれると同時に、日本の建築技術と表現の到達点を示す存在として評価されてきました。建築は、時代の思想や技術、人々の記憶を内包するものであり、それが失われることは、単に物理的な建物を失うことではなく、社会の歴史的文脈の一部を失うことを意味します。

 この問題は国内にとどまらず、国際的にも関心が高まっています。米国の有力紙「ニューヨーク・タイムズ」において、日本の戦後建築が急速に失われている現状が指摘され、旧香川県立体育館もその象徴的な事例として紹介されました。またニューヨーク近代美術館やハーバード大学などの文化・研究機関からも、こうした動きに対する懸念が示されています。

 もちろん、安全性や財政的な制約が重要な判断要素であることは理解しています。しかし同時に、近現代建築の文化的価値をどのように評価し、どのように継承していくのかという社会的な議論は、いまだ十分に成熟しているとは言い難い状況にあります。この継承という意味は、ただ単に形を残すという事ではなく、今の時代に求められる新しい用途を有した上で、継承していくという意味です。今問われているのは、個別の建築の存廃ではなく、私たちがどのような文化を未来に残そうとしているのかという姿勢そのものです。もしこのまま重要な建築が失われ続けるならば、その選択は将来の世代から、現代社会の文化に対する意識、認識として評価されることになるでしょう。

 旧香川県立体育館をめぐる問題が、日本の近現代建築の価値を見つめ直し、保存や再生の可能性について社会的な議論を深める契機となることを強く願います。民間からこの建築の用途の変更も含めた再生の検討・提案がなされるなか、その可能性の議論が進まない状況についても深く憂慮しています。文化は、一度失われれば二度と取り戻すことはできません。だからこそ今、私たちには慎重で責任ある判断が求められていると考えます。世界中から注目を集めるこの県立体育館を取り壊せば、香川県の観光資源を損なうことになり、観光ツーリズムにも大きな影響が及ぶことでしょう。

 この様な損失は香川県の県民の皆さんにとって、決して良い事ではないはずです。旧香川県立体育館の保存、再生を願う思いは、今も変わっていません。

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