沖縄のシンボル・首里城が火事で全焼してから5年余り。2026年の完成を目指し復元が進む首里城正殿に飾る彫刻を手掛ける、高松市出身の女性がいます。
首里城正殿の顔となる唐破風の下の部分に飾られる「向拝透欄間」。
牡丹や唐草、獅子の透かし彫りが施されていて、正面に3枚、両側面に2枚の計5枚。全長は約12mです。
この日、2026年の正殿完成を目指して、沖縄県那覇市では「向拝透欄間」の彫刻作業が進められていました。彫刻家3人が細い彫刻刀を使いながら3.8mの板に文様を細かく彫っていきます。
その中の1人、高松市出身の彫刻家・小泉ゆりかさん、27歳です。学んだ知識を制作の場に生かす難しさを感じながら作業に取り組んでいます。
(高松市出身の彫刻家/小泉ゆりか さん)
「これからずっと残っていくであろうものを今の年齢で作らさせていただいて、自分の手で今までの人たちの思いを感じながら作っていけていることが、自分の中ではすごくうれしかったので、より身を引き締めてやっていこうと思っています」
小泉さんは高松市の高校を卒業後、沖縄県立芸術大学に進学し大学院を卒業。現在は沖縄で木彫りの作品を制作するほか、大学の非常勤講師も務めています。
(高松市出身の彫刻家/小泉ゆりか さん)
「学生時代に(大学の隣にある)首里城が燃えて、衝撃的な思いをしたので、後から(復元に)携わらないか、話をいただいて。彫刻の修行の時が来たかと思って、そのまま分かりましたって言ってお受けしました」
首里城の復元にあたり欠かすことのできない香川県出身の人物がもう1人います。
(高松市出身の彫刻家/小泉ゆりか さん)
「鎌倉芳太郎先生の写真が、鮮明な物が出てきたということで、それを見ながらどのぐらいの深さで彫っていくのか」
香川県三木町出身の型絵染の人間国宝認定者・鎌倉芳太郎です。
鎌倉芳太郎は大正から昭和にかけて4年にわたり琉球文化の調査をして、約7500点もの資料を残しました。
首里城の設計図ともいえる「寸法記」の一部、正殿の様子を描いたものです。きらびやかな首里城の正殿の龍や牡丹などの色が文章で指定されています。
(高松市出身の彫刻家/小泉ゆりか さん)
「自分と同じ出身地、香川の方が残した記録が今、沖縄っていう場所で自分の制作に生きているというか、そこに向かわせていただいているっていうのが、感慨深いところはあります」
11月、小泉さんらが約3カ月かけて制作した向拝透欄間が首里城に納品されました。
今回の復元では鎌倉芳太郎が大正時代に撮影した写真を解析し、獅子の毛並みなどがより繊細に再現されています。
向拝透欄間は塗装され、2年後の秋には正殿を色鮮やかに飾ります。
(高松市出身の彫刻家/小泉ゆりか さん)
「今やっぱりこういった彫刻物を彫れる人が少なくなってきているということで。今後もこういうことを続けて、もっとより自分の力で作っていけるようになって、それをまたつなげていければいいなと思っています」
小泉さんは今、首里城正殿の柱に巻きつく2体の龍「金龍」を制作しています。
(高松市出身の彫刻家/小泉ゆりか さん)
「彫刻はここまでやってきましたし、ずっと続けていきたい。今回こういう仕事に携わらせていただいたので、またこういう受ける仕事っていうのも、できたらもう自分の力にもなりますし、より社会と繋がって生きていく彫刻家になれるんじゃないかなと思うので」