サッカーJ1ファジアーノ岡山には、今シーズン限りでの引退を決断したゴールキーパーがいます。入団から8年……ファジらしさを体現した男の最後に密着しました。
J1ファジアーノ岡山のゴールキーパー、金山隼樹。プロ生活15年、ファジアーノ在籍8年目の最古参は今シーズン限りでピッチを去りました。
(ファジアーノ岡山/金山隼樹 選手)
「きょうは最後解散式でチームみんなで全員で会えるのは多分これが最後だったので、いろいろな人の思いとか話したりとかして。(Q.きょうでプロサッカー選手は終わり?)そうですね、どういうふうに過ごしていいのかわからない。もう練習もしなくていいのかと思って何食べてもいいのかと思ったけど、何していいのかわからなくてちょっと戸惑っています(笑)」
ホーム最終戦を控えた11月26日。政田サッカー場にはこれまでと変わらない金山の姿がありました。
(ファジアーノ岡山/金山隼樹 選手)
「発表したからこそ変わるのかなと思っていたんですけど、正直何も変わらなくて、本当になんかいつも通り一日一日を全力でやるし、きょうの練習でも残り何日かで引退かもしれないですけど、でもやっぱり成長したいなと思ったので。やっぱり変わらないんだろうなって今までこうやって生きてきたし、自分の大事にしているものってそういうところだったので」
困難の多いサッカー人生
島根県出雲市出身の金山。小学1年生から始めたサッカー人生は、決して日が当たり続けたものではありませんでした。
高校、大学時代ともに最高学年では試合に出られず、プロキャリアのスタートは当時JFLのV・ファーレン長崎から。合格通知がきたのは大学4年の1月でした。
(ファジアーノ岡山/金山隼樹 選手)
「実際(大学の)4年間ほとんど試合に出られなかった。本当に最後の最後で長崎のセレクションがあるってなって、それをいけなかったらサッカー辞めようと思ってた」
その後、長崎・札幌で活躍し29歳で岡山に加入。自分が試合に出てチームを勝たせたいと決断した移籍でしたが、岡山では1年を通して出場できたシーズンは0。
ゴールキーパーはアクシデントがない限り出場できるメンバーは1人。ベンチを温める日々が続きました。
(ファジアーノ岡山/金山隼樹 選手)
「(Q.心折れそうなときってなかった?)ありましたよ、何度も何度もそれは。本当につらいし、じんましん出たりとかそういうのも結構あった。なんで出られないんだ、なんで使ってくれないんだと思って、俺の方がいいのにって」
試合に出られない悔しさと歯がゆさが募るなか、岡山に加入して3シーズン目の2020年。金山は現状についてこう答えていました。
(ファジアーノ岡山/金山隼樹 選手・2020年)
「常に俺が思っているのが、5年後、10年後の自分を想像して今の自分をその時の自分が見たらどう思うんだろうなって常に思ったときに、いやここで落ち込んじゃだめだなとか、やり続けないとなと思ってそれを意識してやったら元気が出て、毎回毎回悔しさはあるんですけどもう一個奮い立たせて」
見せた姿がクラブのDNAに
試合に出られなくても、チームの勝利のために。いつか来るかもしれないその日のために全力を尽くす。
そして5年が経った今。サッカー選手・金山隼樹が政田サッカー場で見せ続けた姿は、いつしかクラブのDNAになっていきました。
(ファジアーノ岡山/金山隼樹 選手)
「いろいろな人たちが応援してくれるので逃げられないし、やっぱりみんなのために頑張りたいなって。だからこそどんなときでもやらないとって思うし、みんなのためにやらないとだし、ピッチに出て自分のプレーを見せることが恩返しだと思っていたので、だからこそやり続けることができた。自分1人じゃなにもできない、みんながいるから常にできるっていうのがあった。金山隼樹ってやっぱりいつもこうだったよねって。俺の全力を出してる、出し続けたっていう姿を見てほしい」
やり続けてつかんだ約3000日ぶりのJ1
そして迎えたホーム最終戦。待ち続けたその日がやってきます。
(コールリーダー)
「きょうのメンバー皆さん見てると思うんですけど、金山選手スタメンに入ってます。きょうこのスタジアムで彼がプレーするのはこれが最後なので、全員でやっていきましょう!」
(姉・有紗さん)
「常にプラス思考で、頑張り続けるというか」
(母・未央子さん)
「素直で元気が良くて誰とでもすぐお友達になれるそんな子でした」
(父・幹人さん)
「ラインでも送ったんだけど、もう舞台は整ったので、隼樹らしく笑顔で頑張ってくれと」
自身8年ぶりとなるJ1のピッチは念願だったという娘との入場。
うれしいときも。苦しいときも。やり続けてつかんだ約3000日ぶりの国内最高峰のピッチ。出場時間は14分。ファジらしさを体現し続けた男へ、スタジアムからは惜しみない拍手が送られました。
(ファジアーノ岡山/金山隼樹 選手)
「この時のために挑み続けたなって思ったし、やっぱりあのピッチに立つことに自分は最大限の努力をし続けたんだなって思った。本当に最高のサッカー人生でした」
すでに見据える次の目標
プロ生活を終えた7日、金山はある場所へ向かっていました。
(ファジアーノ岡山/金山隼樹 選手)
「大事な時に神社とか行くことが多くて、引退試合の日も当日朝一人であいさつして、そのあいさつしたのもみんなにしっかり思いを伝えられますようにっていうあいさつの仕方だった、そのお礼を、ちゃんと伝えられましたよって」
今後はファジアーノに残るとしつつ詳細はまだ内緒とのこと。ただ、すでに未来の目標を決め、やりたいこともたくさんあるようです。
(ファジアーノ岡山/金山隼樹 選手)
「1つだけ夢を語れるのがあった、いつかファジアーノのOBたちみんな集めてOBとか、1日試合をやったりとかそういうのは自分企画でやってみたい。みんながいたからこの景色を見れるんだよっていうのを見せてあげたいっていうのは自分の中でいつかできたらいいなと思っていることの1つ」
(ファジアーノ岡山/金山隼樹 選手)
「やったことのないことをやるのがすごい好きだし、自分の性格上どんどんチャレンジしていくっていうのがこれまでやってきたサッカーで得たこと、これからもチャレンジするし、人を大切にするし。そこは俺の中のベースかな」
金山選手は10日、岡山市で引退会見を行い今後について明らかにするということです。
(2025年12月9日放送「News Park KSB」より)