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専門家「狙いはプーチン氏への圧力」米ウ“ひざ詰め会談”関係に変化は?

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この週末、アメリカのトランプ大統領と、ウクライナのゼレンスキー大統領の会談が行われました。ロシア寄りの姿勢を示してきたトランプ大統領ですが、思惑はどこにあるのでしょうか。

■米ウ“ひざ詰め”会談で進展は

亡くなったフランシスコ教皇をしのぶため、世界中から大勢の人が集まったサンピエトロ大聖堂。会談はその中で行われ、教皇の死がいざこざのあった2人を引き合わせる結果となりました。ゼレンスキー大統領いわく「歴史的になる可能性を秘めた会談」。CNNによると、当初は通訳を含め3人の予定でしたが、通訳を交えず2人が文字通りひざを突き合わせることになりました。

関係が修復困難になると予期させた激しい口論から2カ月。雪解けを演出するには絶好の機会です。トランプ大統領はゼレンスキー大統領の印象を問われると…。

アメリカ トランプ大統領 「冷静さを取り戻し、状況が見えていると思う。合意したいのか否か…彼は合意したいはずだ」 (Q.ゼレンスキー氏との関係は改善したか) 「関係が悪かったことはない。あの時は彼の発言のせいで少々もめただけだ。カメラは回っていたが構わなかった。確かにもめたが…彼はとても厳しい状況にある。はるかに強大な勢力と戦っている。会談はうまくいった。数日後には色々見えてくるだろう」

■トランプ氏“ロシア側”に制裁?

ロシア寄りの言動が多いトランプ大統領ですが、キーウに対する大規模攻撃が行われた24日以降、批判する様子も見せています。

トランプ大統領のSNS(26日) 「プーチンは戦争をやめたいのではなく、私をもてあそんでいるだけかもしれない」

ロシアと取引する第三国を対象にする2次制裁や金融制裁も行うと匂わせています。FOXニュースの番組に出演した側近からは…。

アメリカ ウォルツ大統領補佐官 「大統領は金融や石油・ガスの分野に制裁を検討していると述べている。アメとムチを使い、双方を交渉テーブルにつかせようとしている」

ロシアに対してムチが打てるのでしょうか。

アメリカ トランプ大統領 (Q.どんな対ロ制裁を検討) 「やれることは色々ある。やるつもりはないが、私には大いに力がある。我々はアメリカを強くした。かつてないほど尊敬される国になった。もうゲームはなしだ。分かっている人間がやっている。何も分かっていない前任とは違う」

政権内からは「今週がヤマ場」との声が上がっています。NBCニュースでのルビオ国務長官の発言です。

アメリカ ルビオ国務長官 「今週は非常に重要な週になる。継続か別の課題に移るか見極める時期にきている。ただ、停戦は実現はしたい。楽観できる根拠もあるが、現実的になるべき根拠もあります」

「就任24時間で戦争を終わらせる」と豪語していたトランプ大統領は間もなく就任100日を迎えます。

CNN リプタク記者 「交渉期限と就任100日が同じ週に重なるのは偶然ではないでしょう。大統領は側近らに解決を迫るも、実現の可能性は低そうです」

CNN サンガー政治・安保アナリスト 「個人的見解では、トランプ氏は停戦の細かい内容は意に介さない。ロシアと関係正常化できるよう合意さえできればいい」

■ロシア クルスクを完全奪還か

ロシアが一方的に宣言したクリミアの併合をアメリカが承認することも和平案の1つとして浮上しています。

アメリカ トランプ大統領 (Q.ゼレンスキー氏からクリミアの話は) 「少しだが話は出た」 (Q.ゼレンスキー氏にクリミアを諦める用意は) 「あると思う」

しかし、ゼレンスキー大統領は武力でのクリミア奪還は現状、不可能としつつも…。

ウクライナ ゼレンスキー大統領 「我々の立場は不変です。ウクライナの領土を決定する権利はウクライナ国民だけにあります。ウクライナは“被占領地域”を法的に承認することはありません」

主張が平行線をたどるなか、ウクライナは軍事的にも厳しい状況に追い込まれています。去年、ウクライナ軍が侵攻し、一部地域を支配したロシア・クルスク州。停戦交渉の材料にできるとの期待がありましたが、ロシア軍は26日に完全に奪還したと発表しました。ウクライナにとって数少ない交渉材料が失われた形です。

クルスクでの作戦に北朝鮮兵が関与していたことをロシアも北朝鮮も認め、訓練映像が公開されています。

ロシア プーチン大統領 「ウクライナの冒険は完全に失敗した。クルスク州での敵の壊滅は、我が軍をさらなる成功に導き、ネオナチ政権の打倒に近付けた」

■米ウ“ひざ詰め”会談 関係に変化?

今回の“ひざ詰め会談で関係は改善したのでしょうか。アメリカ外交や安全保障に詳しい、慶応義塾大学・森聡教授に聞きました。

慶応義塾大学 森聡教授 「会談は、トランプ氏がプーチン氏に対しての圧力をかける狙い。アメリカが示した停戦案には、クリミアをロシア領としてアメリカが承認するなど、ロシア有利な内容と伝えられているが、その中には停戦後のウクライナの安全の保証はヨーロッパ中心との内容もあると伝えられている。プーチン氏は、これを拒んで停戦案をのんでいないはず。ロシアに有利な条件が盛り込まれた停戦案を受け入れないプーチン氏に、業を煮やしたトランプ氏がゼレンスキー氏との会談に応じたのだろう。ただし、全体的な停戦条件の面でウクライナ寄りに変わったわけではない」

(Q.トランプ大統領は以前、合意しなければ「交渉から手を引く」ともしていましたが、トランプ大統領の停戦への意欲はどうなったのでしょうか)

慶応義塾大学 森聡教授 「外交課題としての優先順位は低くない。トランプ氏の狙いは主に3つ。まず、アメリカの軍事負担を減らし、ヨーロッパに負担を委ねたい。次に、ピースメーカーとして歴史に名を残したい。3つ目は、米ロ関係の改善でロシアを中国から引き離し、米ロ経済関係を再開させたいから」

ロシアは、ゼレンスキー大統領とトランプ大統領の会談後、ウクライナ軍が越境攻撃したロシア西部クルスク州を完全奪還したと発表しました。なぜこのタイミングで発表したのでしょうか。ロシア情勢に詳しい防衛研究所・兵頭慎治さんに聞きました。

防衛研究所・兵頭慎治さん 「プーチン氏が“停戦に前向きに応じる姿勢”を示すため。ロシアが停戦に応じる大前提は、ウクライナに逆侵攻されたクルスクの奪還です。西側の分析では、100%の奪還ではないとの指摘もあり、“見切り発車”“みなしの完全奪還”での宣言とも言える。見切りでも発表して、ロシア国内からの批判を避ける狙いがある。また、就任100日が迫り、交渉が進まないことでトランプ氏がいら立って“ロシア寄りの停戦案”がとん挫することを恐れたのでは」

ロシア大統領府は、5月8日午前0時から72時間、軍事作戦を停止すると一方的に発表しましたが、これも「トランプ氏に対して、停戦を前向きに考えている姿勢のアピールの1つで、今後も米ロ主導で停戦条件を詰める形は変わらないだろう」と指摘しています。

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