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【報ステ解説】フジの取材パス没収は「取引妨害」NPBに“警告”公取委の狙いは

経済

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去年10月、プロ野球・日本シリーズが放送された同じ時間に、フジテレビはMLB(メジャーリーグ)ワールドシリーズのダイジェストを放送しました。これを受けて、NPB(日本野球機構)がフジテレビの日本シリーズの取材パスを回収したことなどについて、公正取引委員会が11日、独占禁止法に違反する恐れがあるとして警告を出しました。

■フジの取材パス没収「取引妨害」

公正取引委員会のミッションは自由競争を促すことです。

公正取引委員会 岩渕権上席審査専門官 「公正取引委員会は本日、一般社団法人日本野球機構に対して、野球機構の行為が独占禁止法第19条『競争者に対する取引妨害』の規定に違反する恐れがあるとして警告を行いました」

事の発端は去年10月26日のこと。DeNAとソフトバンクが対戦した日本シリーズの第1戦、TBSが中継を放送していました。そこへ同じ時間帯、いわゆる“裏番組”にフジテレビがぶつけてきたのが、ワールドシリーズのダイジェスト番組でした。試合の生中継ではないとはいえ、ドジャースの大谷翔平選手が出場する注目度の高いコンテンツです。

フジテレビのこの選択にNPBがかみつきました。日本シリーズの取材パスを没収したのです。さらに、フジテレビが予定していた第3戦の中継を別のテレビ局に変更しようとしていました。NPBのこうした行為がフジテレビに対する制裁と位置付けられました。

公正取引委員会 岩渕権上席審査専門官 「本件は野球機構が放送事業者A(フジテレビ)に科した制裁を通じて、MLBが放送事業者に対して野球コンテンツを供給する取引を妨害する恐れがあるということを問題とするものです」

NPBが運営する日本シリーズを見るか。MLBが運営するワールドシリーズを見るか。それは視聴者の選択であり、視聴者の獲得は競争です。公正取引委員会は、取材パスの没収などがNPBと競争関係にあるMLBとフジテレビの取り引きを妨害する恐れがあるとしました。

公正取引委員会 岩渕権上席審査専門官 「本件行為は、放送事業者が日本野球機構の意向に反する形でMLBの野球コンテンツを放送した際に、制裁が科せられる可能性があるとの認識を放送事業者に広く生じさせ、これにより放送事業者がMLBの野球コンテンツを放送することを躊躇(ちゅうちょ)させる可能性があるものです」

■認定に反論「重大な誤り」

NPBは真っ向から反論しました。

NPB 「独占禁止法の法解釈、及び事実認定において重大な誤りがあるものと言わざるを得ません」

NPBの主張はこうです。メジャーリーグの放送権は大手広告会社を通じてテレビ局に販売されるため、MLBとテレビ局は直接取引しておらず、取材パスの没収などによって取引は妨害されないというものです。この主張に公正取引委員会は…。

公正取引委員会 岩渕権上席審査専門官 「MLBの直接の取引先が代理店(広告会社)であったとしても、代理店自体はMLBのコンテンツを放送する立場にはありません。日本野球機構の主張は形式的な側面を捉えているにすぎず、本質的に今回の行為が独占禁止法上どのような影響を与えるか理解が十分ではないと言わざるを得ない」

今回、スポーツの世界にメスを入れた公正取引委員会。実は近年、ショービジネスに変化を促す機会が増えています。2019年には当時の当時のジャニーズ事務所に注意を出していました。独立した元SMAPのメンバー3人を出演させないよう、テレビ局に圧力をかけた疑いがあるというものでした。去年には、芸能事務所と芸能人の関係について調査。移籍や独立をめぐり、独占禁止法に抵触する恐れがあるケースを指摘しています。11日の会見でも自らこう宣言しました。

公正取引委員会 岩渕権上席審査専門官 「公正取引委員会としては、日本野球機構の行為に警告を行った。今後も放送コンテンツの提供など、芸能スポーツなどの分野で独占禁止法上の問題が認められれば厳正に対処する」

■NPBに警告 公取委の“狙い”

テレビ朝日経済部の進藤潤耶デスクに聞いていきます。

(Q.今回の公正取引委員会の判断をどう見ていますか)

経済部 進藤潤耶デスク 「公正取引委員会がスポーツコンテンツをめぐって警告を出したのは、かなり異例のことと言えます」

(Q.今回の公正取引委員会の判断に対して、NPBは反論していますね)

経済部 進藤潤耶デスク 「NPBは11日に声明を出しました。その中で強調したのが『今回の件は独占禁止法に違反する恐れすらない。警告は誤りだ』という点です。そのうえで、取材パスの没収についても『事前告知もせずにメジャーリーグを放送したフジテレビに対し、日本シリーズ放送の重要性を伝えるため、やむを得ず行った一時的な対応で、必要最低限の緊急措置』と弁明。ただ、今後については『類似の事案が起きても、同様の行為はしない』としています」

(Q.公正取引委員会はこのところ、スポーツのほかに芸能の分野でも動きが見られますが、どんな狙いがありますか)

経済部 進藤潤耶デスク 「今回、公正取引委員会はコンテンツ業界に対して“けん制”する姿勢を強めた形です。公正取引委員会の元幹部で早稲田大学の中里浩准教授に聞いたところ『コンテンツ市場が拡大するなか、日本はスポーツ・芸能を国の“重要な産業”と位置付けている。かつて公取委はこの業界に着目せず、当時のジャニーズ事務所に対する注意や、東京五輪をめぐる“談合事件”をきっかけに競争を歪める行為がないか注目するようになった。今回の事案はその延長線上にある』と指摘しています。公正取引委員会も11日の会見で『芸能・スポーツなどの分野で問題が認められれば厳正に対処していく』と強調していて、この業界に対する姿勢を明確にしたと言えます」

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