巻貝の進化の歴史を紐解くかもしれない大発見がありました。生きた個体としては2例目の発見となる幻の貝・タクミニナが岡山県倉敷市の干潟で見つかりました。
タクミニナを見つけた岡山大学農学部の福田宏准教授。貝の分類学の専門家です。
(記者) 「何の変哲もないですね」
(岡山大学農学部/福田宏 准教授) 「知識がないとありがたみが分からないんですがこれはすごい貝なんです。本当の意味の幻の貝です。60年ぶりの再発見です」
タクミニナは体長1センチほどの一見、普通の巻貝です。海の浅瀬に暮らしますが、詳しい生態は分かっていません。
発見したのは7月。調査のため全国指折りの研究者が倉敷市の干潟に集結した時のこと。
(記者) 「先生、これどうやって捕まえたんですか?」
(岡山大学農学部/福田宏 准教授) 「こういう小さい貝は肉眼ではもちろん見つけるのは無理なので ザルを使って、ホームセンターで買ったやつ、家庭用品です。これで表層の砂をザっとすくってふるうわけです。そしたら入って…あっとびっくり仰天!」
(記者) 「どんな様子だったんですか?」
(岡山大学農学部/福田宏 准教授) 「僕は見た瞬間、タクミニナだと思って絶叫した。タクミニナ入ったぞー!そしたら周りにいた11人いましたけど全員が全速力で私の周りに集まってきて、タクミニナ入ってるぞー!みんな言葉を失う異様な雰囲気になりました」
生きた個体の確実な記録は60年ぶり。国内2例目です。
このタクミニナには、さらに興味深いストーリーがあります。地球上に現れた巻貝の長い歴史の途中の段階を物語っている貝なのです
巻貝はエラの起源により、比較的原始的なグループと、新しいグループに分かれます。よく知られるサザエ、タニシなどは原始的なグループに、一方新しいグループには海で暮らすウミウシや肺で呼吸するカタツムリが含まれますが、もともとどんな貝から進化したのか謎に満ちていました。
ところが、1980年代後半、もともと原始的なグループとされていたタクミニナがここに位置することが分かり、 分類を一変させます。
(岡山大学農学部/福田宏 准教授) 「全世界の研究者はタクミニナを見たい訳です。捕れないです。あまりにも珍しいから」
今回、生きた個体の発見でDNA解析も可能になります。小さな貝の中に巻貝研究の未知のフロンティアが潜んでいます。