岡山大学学術研究院環境生命自然科学学域の根本理子准教授らの研究グループは、ヒザラガイの磁鉄鉱(Fe3O4)の歯の形成に関わる新規タンパク質を発見し、生体内で磁鉄鉱を形成するメカニズムを明らかにしたと発表しました。
ヒザラガイ類の歯は非常に硬く、人工歯のジルコニアを超える耐摩耗性があることから、高強度材料の開発につながることなどが期待されます。研究成果は8月8日、アメリカの科学誌「Science」に掲載されました。
研究グループは、瀬戸内海から3種のヒザラガイ類を採集し、歯舌組織から共通する遺伝子をつきとめて、ヒザラガイ類にしか存在しないユニークなタンパク質を発見しました。
タンパク質は歯の形成において、骨組みとなる繊維に酸化鉄が沈着する前の段階で最も多く発現していました。さらに組み換え発現して行った実験で、タンパク質があらかじめ骨組みに結合し、後から入ってきた鉄と結合して酸化鉄を形成していることが分かったということです。
研究グループは、真核生物が磁鉄鉱を形成する仕組みが初めて明らかになったとしています。
根本准教授は「火成岩の成分として知られる磁鉄鉱が生物の体内で形成される一端を明らかにできた。環境にやさしい材料開発や、鉄が関わる疾患の研究への応用も期待される」と話しています。