春2度、夏3度の甲子園出場を誇る強豪、玉野光南高校が岡山の高校野球の聖地、倉敷市のマスカットスタジアムで16日、紅白戦を行いました。 新型コロナウイルスの影響で「この夏、親にユニホーム姿を見せる機会がないかもしれない」。そんな球児たちのために急遽、実現した試合でした。
球場に入る選手たち。その勇姿に保護者が盛大な拍手を送りました。拍手の大きさは、この日が「特別な1日」であることを物語っていました。グラウンドに保護者が並び、入場行進が行われました。
(玉野光南高校野球部/田野昌平 監督) 「(代替大会では)開会式がないと決まっていますので、2年間半頑張ってきた3年生の勇姿を、行進をしてそれを親に感謝の気持ちとして見ていただきたい」
新型コロナウイルスの影響で夏の甲子園と地方大会が中止となり、その代替大会として「夏の岡山県大会」が開催されます。しかし「夏の岡山県大会」で開会式は行われません。また試合は無観客」で行われる予定です。 3年生だけでなく支えてきた保護者にとってもつらい「決定」です。
(能瀬偉月 主将) 「玉野光南高校は夏の代替試合に向けて、必ず岡山一番になり最高の夏にすることを誓います」
紅白戦では「3年生チーム」と「2年生チーム」が対戦、3年生は27人全員が出場しました。3年生チームのレフトで先発出場したのは、高校通算39ホームランを誇る「大塚将馬」です。
(大塚将馬 選手) 「下級生たちに伝えられることをしっかり伝えて、先輩たちで(伝統を)しっかり残していきたいと思います」
長打を狙ってフルスイングしますが、バットの芯でボールを捕らえられません。
(大塚将馬選手の母/大塚佳子さん) 「(試合を見るのは)久しぶりだったんですけど、見られてよかったと思う半面、ちょっとドキドキしながら」
密になることを避けて、応援席に座る保護者は公式戦と同じように全てのプレーに拍手や歓声を送りました。中には子どものプレーに涙ぐむ保護者も。キャプテンの「能瀬偉月」は7番サードで出場しました。
(能瀬偉月 主将) 「たくさんの方に支えてもらってるのはもちろんですけど、一番は家族の支えが、とても僕たちの支えになっているので、家族への感謝を忘れずにやっていきたいと思います」
能瀬は、2019年5月に痛めた肘を手術したこともあり、これまで公式戦の出場経験はありません。そのため、誰よりも強くこの夏にかけてきました。そして、その様子を家族は見守ってきました。
(能瀬偉月主将の母/能瀬晶子さん) 「手術をすると決めたのも本人ですしその間約10カ月、長いリハビリに耐えて、一言も弱音を吐くこともなく頑張ってきたことが、私にとっても一番の誇りです」
ベンチで人一倍、声を出していたのは、林結人。トルコ人の父と日本人の母を持つハーフです。トルコの大学で教鞭をとる父はこの春、日本で息子の試合を観戦する予定でした。 しかし新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、来日することができませんでした。
(林結人選手) 「父親は海外にいて、会えない存在なんですけど、野球を自分が頑張っていることを、少しでも遠い所からでも伝えられるように、自分はベンチスターとなんで、声を出して、出場したらホームラン打てるように全力で取り組みます」
8回、満塁のチャンスで、林結人に出番が回ってきました。
(林結人選手の母/林訓子さん) 「本人が自分で選択してこっちで野球をする、トルコに野球がないので、そういう気持ちでやったので、いい形で終わってほしいなと思っています」
試合は、9回表の途中で球場の利用終了時間になり打ち切られました。唐突な終わりでしたが、保護者は選手たちに惜しみない拍手を送りました。
(玉野光南高校野球部/田野昌平 監督) 「2年半という時間を本当に子どものために捧げてきたと思うんです。その集大成として、ユニホーム着てプレーしてるあるいは行進してる姿をきょう見ていただいて、夏に向けての感謝の気持ちを表す取り組みになったと思います」