ニュース

【特集】香川県独立の父・中野武営と「能楽」との関係に迫る 石川・金沢市では特別展も

ADVERTISEMENT

ADVERTISEMENT


 香川県独立の父と言われる中野武営、実は武営の趣味は「能楽」でした。この能と中野武営の関係についての展示会が、11月に能の本場と言われる金沢市で開かれました。武営と能の関係について迫ります。

 石川県金沢市。ここに全国でただ一つ「能楽」を専門に紹介する美術館があります。

(金沢能楽美術館/山内麻衣子 学芸員)
「金沢能楽美術館は、金沢市指定無形文化財である『加賀宝生』を次世代に伝える施設として、今から約16年前に開館致しました」

 この美術館で11月まで開かれていたのが「香川県独立の父」と呼ばれる中野武営ゆかりの特別展です。

 江戸時代の終わりに高松藩に生まれた中野武営は、明治から大正にかけて政治家として、また財界人として活躍しました。

 2024年に新しい1万円札の顔になる実業家、渋沢栄一の盟友といわれていて、渋沢らとともに日本とアメリカとの友好親善使節団をまとめました。

 また中野武営は、香川県の独立に力を尽くしたことから「香川県独立の父」とも呼ばれています。香川県では没後100年に当たる2018年に顕彰会が発足し、さまざまな活動が行われています。

 その中野武営ゆかりの特別展が金沢市で開かれた背景には武営の趣味が関わっています。それが「能楽」です。

(金沢能楽美術館/山内麻衣子 学芸員)
「実は中野武営さん、(息子の)岩太さんは、元江戸居住の加賀藩のお手役者(お抱え役者)に宝生流の『謡』を師事することによって、能楽との関わりが始まりました」

 能楽には「観世流」や「金春流」などの流派があります。加賀藩前田家には「宝生流」が伝わり「加賀宝生」と呼ばれています。

 中野武営は幕末から明治にかけて、「名人」と呼ばれた加賀藩の能役者・松林鶴叟に能の声楽の部分、「謡」を学びはじめます。

 熱心に稽古を続けていた武営は「謡」の名人ばかりを記した本にも名前が載るまでに上達しました。その父親の姿を見ていた武営の長男・岩太は能楽師として活躍します。また武営の4人の孫もそれぞれ「鼓」や「笛」の名手として活躍しました。

(金沢能楽美術館/山内麻衣子 学芸員)
「当時の能楽界というのは、武家に保護されていた能から、その次の世代ですね、華族や政財界の人々らのパトロネージュによって隆盛した『紳士能』という新しいジャンルができるんですけれども、そのまさに移行期だったんですね」

 明治時代以降政治や経済の世界で活躍した人物たちが集まって能を楽しんだ「紳士能」。中野武営と岩太の親子は、まさにその中心にいました。

 こちらは中野岩太が「謡」を吹き込んだレコード。今回初めて公開されました。

 金沢市での展覧会では、最近になって見つかった中野家の「能楽」に関するいろいろな資料が展示されました。これらは、武営の玄孫に当たる、中後まどかさんが、父親の遺品を整理しているときに見つけたものです。

 中後さん自身も金沢とはゆかりがありました。

(中野武営の玄孫/中後まどか さん)
「うちの父は高松で生まれておりますけれども、その後、両親が早く亡くなったこともありまして、京都に住んでおりました。そこから就職をしたのが金沢だったんですね。で、うちの母が金沢の出身でそこで所帯を持つ。だから私たちは金沢で生まれております。ですから私たちにとっては古里でこれ(展覧会)をやるということになりました」

(まどかさんの弟/中野肇さん)
「ひいじいさん(岩太)のものを姉が調べているというのは知っていたんですけれども、実際、父が亡くなってからほとんど家を整理してなかったものですから」

 中野武営が住んでいた東京の家は、1923年の関東大震災で焼けて無くなってしまいましたが、武営が大切にしていた「謡」の本は無事で今も残っています。

(中野武営の玄孫/中後まどか さん)
「謡ということが武営の大きな柱……忙しかったので、それを心をチェンジするというのではないですけれども、そういうところで謡が武営を支えていたような気がするんですね」

 今回の展覧会は、小さな能面の標本をきっかけに中野家の子孫と交流が生まれたことで実現しました。

 今後は、武営らを通して、能楽について新たな視点を持った研究ができるのではないかと期待されています。

(金沢能楽美術館/山内麻衣子 学芸員)
「これまでは宝生宗家ですとか、そういった流儀の中心的な側の資料で近代の能楽の歴史が語られていたんですけれども、そうではなくて、紳士能の中心にいて、少し中心とは距離があったけれども実際に、その実務的なことですとか能楽界の実情をよくご存じの方の資料から、これまで知られていなかった側面を明らかにできたらと思っています」

 中野家と能に関する展示会は今後、高松市での開催も検討されています。                                                                                                                  

関連ニュース

全国ニュース(ANN NEWS)

新着ニュース