今回は卵が品薄になったり値上がりしたりする、いわゆる「エッグショック」について考えます。このエッグショックの影響はいろいろな所に出ています。
岡山市の「西洋料理 BIZENYA」。慣れた手つきで作っているのは、看板メニューのカラフルなオムライスです。白っぽい黄身の卵にホウレンソウなどを合わせて色を出しています。
オムライス1つ作るのに必要な卵は3つ。北海道の養鶏場から取り寄せています。しかし、3月下旬以降、北海道で鳥インフルエンザの発生が相次いだこともあり、入荷できる数が減ったそうです。
(西洋料理 BIZENYA/佐藤知恵さん)
「3月まではまだ入ってきてたんですが、4月に入ってからは(入荷が)半分ぐらいにちょっと今減ってきてます」
卵を巡っては値上がりも続いています。
「JA全農たまご」では、東京地区の卵の3月の卸売り価格がMサイズ1kgあたり343円でした。1年前より148円も上がり、過去最高値を更新しました。4月も19日までの平均価格が350円とさらに上がっています。
値上げの要因の一つが鳥インフルエンザです。
(野村哲郎 農林水産大臣)
「(ウイルスを)渡り鳥が運んでいることは間違いない」
今シーズンの鳥インフルエンザは、2022年10月に倉敷市の養鶏場で全国で初めて確認されました。その後、全国26道県に広がり、4月に入っても北海道で相次いで発生しています。
先週までに全国で約1771万羽が殺処分の対象になり、その多くが採卵用の鶏です。殺処分数は2年前の約987万羽を上回って過去最多です。
餌代などの高騰によって卵の価格が上がっていた中で、この鳥インフルエンザが値上げに拍車をかけることになりました。
この店では卵の高騰を受け、3月にオムライスの価格を100円から200円値上げしました。新型コロナ禍で始めたテイクアウトできるサンドイッチの販売も卵不足のため、今は休止しています。
(西洋料理 BIZENYA/佐藤知恵さん)
「新型コロナが落ち着いてきて、お客様が戻ってきたなって時の鳥インフルなので、厳しいですけれども、卵が入ってくる限りは、ご提供はさせていただこうと思ってます」
流通する卵の数確保へ 農林水産省が関係団体に要請
農林水産省は、流通する卵の数を確保するために2023年1月、関係団体に要請をしました。1つ目は、鶏が卵を産む期間を延ばすこと。2つ目は、家庭で使う卵の供給を優先することです。
採卵用の鶏は1日1個のペースで1年半ほどの期間、卵を産みます。農林水産省は、卵を産ませる期間を延ばすことで流通する卵を増やそうとしています。一方、年を取った鶏は卵を産むペースが落ちるため、関係者からは餌代などのコストがかさむと懸念の声が上がっています。
続いて「家庭用を優先する」という要請についてですが、日本で流通する卵の半数ほどは家庭で消費されています。このほか、飲食店などで使われる「業務用」とマヨネーズや練り物などの「加工用」がそれぞれ20%あまりとなっています。
関係者によりますと、業務用や加工用の卵は2割から5割ほど減っているということです。
帝国データバンクの調査では、外食大手100社の約3割が卵を使ったメニューを休止するなどの影響が出ているということです。
「加工用の卵」の中には病院での食事に使われている物も…
そして、制限されている「加工用の卵」の中には、病院での食事に使われている物もあります。それが「凍結全卵」です。
真庭市の総合病院・金田病院の調理室では、入院患者約70人分の食事を作っています。
20日の夕食のメインはスパニッシュオムレツです。使われているのは、卵を混ぜて冷凍させた加工品「凍結全卵」です。1度の食事で4kgから5kgを使います。
「凍結全卵」は生卵より価格は高いものの、衛生的で長期保存できるため病院などで使われています。金田病院では、たんぱく質の摂取を考えて基本的に週1回卵を使った主菜を提供しています。しかし――。
(金田病院 管理栄養士/小椋いずみさん)
「凍結全卵を発注したんですけど、『欠品』ってその時点で1カ月先の発注で言われた時のファックスです。供給制限がかかっているので入れられませんっていうことで」
複数の卸業者にあたり何とか確保できましたが、品薄状態は続いていると言います。また、卵を含めた「食材の高騰」にも頭を悩ませています。
(金田病院 管理栄養士/小椋いずみさん)
「病院としては、患者さんに対して食材費が上がってるので食費を上げますっていうことはできないので、その辺がとても厳しいです」
入院中の食事に関しては、国が患者の負担額を定めています。一般患者の場合、一食当たり460円です。
金田病院では1人1日当たり食材費が1年前と比べて100円以上上がっているということですが、食費に転嫁することはできず病院側の負担が増えています。
(金田病院 管理栄養士/小椋いずみさん)
「安くて栄養価の高い卵っていうのは非常に助かっていたので、卵の値段が落ち着いてくるようであれば、肉とか魚の代わりに卵料理を増やすこともできるんですけど、それが今できないので大変苦慮しています」
卵ショックいつまで?
この品薄、値上がりのエッグショックがいつまで続くのか……。
鶏は生まれてから卵を産むようになるまで半年ほどかかるため、5月のゴールデンウィーク明けごろから、卵の供給量は徐々に増えていくとみられます。一方、日本養鶏協会は供給量が鳥インフルエンザ発生前の水準に戻るのは2024年以降になるという見通しを示しています。
鳥インフルエンザは北半球の国を中心に世界で発生しています。日本では、今シーズン鳥インフルエンザが確認されていないブラジルから加工用の卵を輸入することも検討されています。