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“もう一つのWBC” 障害者野球の世界大会へ! 前回MVPの早嶋健太選手ら意気込み「可能性広がっている」 岡山

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 手や足などに障害がある選手たちがプレーする「世界身体障害者野球大会」。この大会は「もう一つのWBC」とも呼ばれています。

 5回目の大会は新型コロナの影響で1年延期され、9月9日と10日に名古屋市で開かれます。この大会に岡山から5人の選手が出場します。

(岡山桃太郎/早嶋健太 選手)
「今回も『背番号1』をつけさせてもらうので、打つのも投げるのも走るのも、全部で1番を背負っていけたらと思います」

 身体障害者野球チーム岡山桃太郎の早嶋健太(27)は、2大会連続で日本代表に選ばれました。2018年の前回大会では日本代表のエースとして活躍。日本の世界一に貢献し大会MVPに輝きました。

 早嶋は生まれつき左手首から先がありません。それでも、大学まで健常者と一緒にプレーし、身体能力の高さと負けん気の強さを武器に、実力でポジションをつかんできました。

 それだけに20歳で障害者野球の道に進んだ時には葛藤もありました。

(岡山桃太郎/早嶋健太 選手)
「最初に飛び込むときには『僕は普通にできるんだ』『普通の野球でできるんだ』というのを思っていたから、見下す……じゃないけど、一緒にしてほしくなかったところもあって。20代前半の時はすごく野球が苦しかったというか……周りには絶対負けたくないとか、そういう気持ちでやってきたんですけど、だから野球が苦しくて……」

 自らの力を証明しようと臨み、22歳でつかんだ世界一の称号。しかし、酷使した右腕は悲鳴をあげ、半年後には右ひじの手術を受けました。

 そんな時、始まったのが「特別なグラブ作り」です。

 和気閑谷高校野球部の球児たちが早嶋の手に合わせたグラブのアイデアを出し合い、グラブ職人が試行錯誤しながら形にしました。2020年3月、完成した特別なグラブが早嶋に贈られました。

(岡山桃太郎/早嶋健太 選手)
「あのグラブにも出会えてまだまだ成長できるんだなと思って……。大学生の時とか、これが僕の一番、頂点なんだなと思っていたんですけど、いろんな人と出会ってまだまだ可能性って広がっているんだなと、それがすごく楽しかった」

 世界一に輝いてから5年……。手術、グラブ作り、新型コロナによる大会中止など、いろいろな事を経験する中で、早嶋の意識も変わってきました。

(岡山桃太郎/早嶋健太 選手)
「障害者野球と健常者の野球って区別したときに差は何だろうと思ったときに、特にないんですよ、ルールが違うだけで。普通の人が軟式野球や硬式野球をするように、僕らも軟式野球するし硬式野球するし障害者野球するし、そういう自分で作っていた『壁』は今はない」

 早嶋とともに日本代表に選ばれた浅野僚也(28)。

 高校時代は伝統校・倉敷商業でプレーし、エースナンバーを背負いましたが、8年前の交通事故で右手が思うように動かせなくなりました。

(岡山桃太郎/浅野僚也 選手)
「事故した時は、野球終わったんだなと思っていたんで、軽い運動ぐらいで、そこに障害者野球というものがあって。最初は『みんなについていこう』から『俺も俺も』『俺も負けたくない』になった」

 岡山桃太郎に入って6年……。2023年春の全国大会で2本のホームランを放つなど、チームでは主に4番バッターを任されています。

 日本代表でも目指すのは――。

(岡山桃太郎/浅野僚也 選手)
「代表の愛媛合宿の時、3番打って、福島合宿の時6番で、『悔しい~』と思って。希望は4番です。4番がいい」
「今はピッチャーではなくバッターなので、どんな場面が来ても動じずに自分らしいバッティングでチームに貢献できたらなと」

 早嶋・浅野と同学年の井戸千晴(28)も日本代表として世界大会に臨みます。井戸の右手は、生まれつき物をつかむことができません。

 それでも井戸は高校野球に打ち込み、最後の夏はエースナンバーを背負いました。そして高校卒業とともに岡山桃太郎に入りました。

(岡山桃太郎/井戸千晴 選手)
「もう10年になります。入ったきっかけは、誘われてやってみようかなって軽い気持ちで入りました」

 その後、早嶋、浅野と同学年のメンバーが加わると井戸の意識が変わっていきました。

(岡山桃太郎/井戸千晴 選手)
「『みんなで楽しく野球をしよう』というだけの感覚だったんですけど、今は楽しみつつ勝ちにこだわっていくという感覚に変わっています。もう早嶋と浅野のレベルが高すぎて、僕からしたら(笑) ただそれに負けないようにしたいとは思っています」

 岡山桃太郎では副キャプテンを任され、早嶋とバッテリーを組む井戸。初めての世界大会で目指すものは――。

(岡山桃太郎/井戸千晴 選手)
「もう自分ができることは限られているので。ランナーを進めるとか、得点につながるバッティングとか、守備だったら絶対にそらさないとか……そういう細かいところをやっていきたい。早嶋と一緒に最後バッテリーを組んで、優勝の瞬間を一緒に喜べたらなと思います」

 このほか、岡山桃太郎からはキャプテンの槇原淳幹(34)と、力強いバッティングが魅力の高月秀明(24)が日本代表に選ばれています。

 前回大会から5年……。連覇をかけた日本の戦いがまもなく始まります。

(岡山桃太郎/早嶋健太 選手)
「僕らはこれにかけている部分があるので。今回、仲間がたくさんいるので、世界大会でも頼りにしています」

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