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【解説】新アリーナ巡り“すれ違う”岡山県と岡山市…専門家「順番が逆」「計画そのものを一緒に考える必要ある」

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 18日は岡山市が整備を検討している新アリーナについて解説します。
 市は、岡山県にも計画への参画を求めていますが、岡山県は態度を明らかにしておらず、協議は進んでいません。

 岡山市が北区野田の市営住宅跡地に整備を検討している新アリーナ。市の基本計画によりますと、メインアリーナは観客席を5000席以上設けるなどプロスポーツのトップリーグの参入条件を満たすものにするとしています。総事業費は約145億円です。

 岡山市は経済団体などからの要望を受けて整備を計画。経済団体やプロスポーツチームは新アリーナの実現を求めて署名活動を展開しています。

 1月15日時点で約3万5000人の署名が集まっているということです。

(岡山シーガルズ/河本昭義 監督)
「活動をするのにどうしても施設が不十分である」

(トライフープ岡山/大森 勇 ヘッドコーチ)
「ぜひアリーナをつくっていただいてスポーツで岡山を元気にできたら」

 岡山市内には、すでに「ジップアリーナ岡山」という県の体育館施設があります。

 県のまとめではジップアリーナの2022年度の利用率は98.9%で利用可能な日はほぼ埋まっている状態でした。

 また、施設の予約には優先順位が決まっています。
 最も優先順位が高いのが国際大会。一方、プロスポーツの試合は、6番目となっています。[①国際大会②全国大会③中国大会またはこれと同等規模の大会(シーガルズの大会)④全県規模の大会⑤全国・中国大会などの代表を決定する大会⑥プロの試合]

 バスケットボール・B3のトライフープ岡山によりますとジップアリーナで土日に試合を開催したいと計画しても、平日しか使えない場合もあるということです。

 また、バレーボール、バスケットボールは今後、ホームの施設の設備や規模がトップリーグへの参入条件となります。

 これについて、岡山市は「現在、岡山市内に参入条件を満たしている施設がない」と新アリーナ整備の必要性を訴えています。

(岡山市/大森雅夫 市長[2023年11月])
「今の基準じゃ、このプロスポーツ界の人たちが試合ができなくなる。Bリーグでも、モチベーションが取れなくなる、これはやっぱりよくないだろう」

 この新アリーナの整備に向けて焦点となっているのが「岡山県が参画するかどうか」です。

 これに対して岡山県の伊原木隆太知事は……。

(岡山県/伊原木隆太 知事[2023年2月])
「まず我々が理解をするためにも、きちんと必要なものについては説明をしていただく、それがまず第一歩なんじゃないかと思っています」

 岡山県が指摘したのは岡山市の試算の不備です。

 岡山市の2022年の試算では新アリーナ整備の経済波及効果は20年間で約771億円。このうち、43%が岡山市内、57%が市外としていました。

 これに対して岡山県は「試算に使ったデータが不適切」と指摘。これを受けて岡山市が改めて試算した結果、経済波及効果は約911億円で、岡山市内が64%、市外が36%だとしました。

(岡山市/大森雅夫 市長[2023年11月])
「県単位で動いているプロスポーツ支援のためにやっているので、県が乗り出してきていただきたい」

 この試算に対して伊原木知事は……。

(岡山県/伊原木隆太 知事[2023年12月])
「経済波及効果は県内(岡山市外)の方が大きいですよという理由についても、今崩れた状態になっています。そもそも(県が参画する)理由は何なのですかという、そういうところから始まっています。(アリーナが)必要でないと考えているわけではなくて、県が乗り出していかなければいけないとは、今の時点で思っていない」

 アリーナを巡る岡山県と岡山市の主張について地域公共政策の専門家は――。

(岡山大学 経済学部/中村良平 特任教授)
「スタジアムやアリーナは市だけで収まるものでなくて全県下に効果があるものなので、本来はこういう広域的な施設というのは、県が『やりましょうよ』と。その中で『市の中に造るので市にも負担を』というのが普通の流れだったと思うんですけども、順番が逆というか、その辺がちょっとボタンが掛け違ってて……」

 中村特任教授は、岡山市がある程度計画を作った上で県に費用負担などを求める……という今回の流れに原因の一つがあるとみています。

 また、岡山市が「年間1億5000万円ほどが維持管理に必要」と試算しているアリーナの今後を考えた場合、より慎重な議論が必要だと考えています。

(岡山大学 経済学部/中村良平 特任教授)
「競技人口自体も全体的に減ってるわけですね。人口自体も果たしてこれがもうある意味乱立してきた時に、全国的に維持可能なのかどうかというのはちょっと難しい」

 スポーツ庁のまとめによりますと2023年2月の時点で、全国88カ所でアリーナやスタジアムの建設計画などが進んでいます。高松市で建設中の「香川県立アリーナ」もその一つです。

(岡山大学 経済学部/中村良平 特任教授)
「岡山のアリーナというのはどういうような役割を果たすのか、建設費出せば、当然、あとの運営とか管理のことも県はやっぱり責任を持たざるを得ませんので、やっぱりもう一度、計画そのものを県と一緒に考えてみる必要があるのではないでしょうか」

 岡山県と岡山市の間では1月12日にも担当者の間で協議が行われました。しかし、伊原木知事は16日の会見で「いまだ説明が不十分」という見解を示しています。

(岡山県/伊原木隆太 知事[1月16日])
「公金の支出というのは非常に厳格な手続きをしなければならない。その理由についてはまだ説明がないなと」

 1月、岡山県と岡山市はそれぞれ新年度当初予算の要求額をまとめました。しかし、そこにアリーナ整備に関するものは含まれていません。岡山市の大森市長は「1月中には新アリーナに関する予算を決めたい」としていて、今後の動向が注目されます。

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