岡山市議会は1人あたりの月額の政務活動費を2025年度から約8万円増額することになりました。1992年以来、実に33年ぶりの増額です。その背景は?
1人月額13万5000円→21万8000円に
(岡山市議会/田口裕士 議長)
「やはり議員活動がだんだんその物価高騰に伴ってできなくなってきた。じゃあどうすればいいのか考えたときに、やっぱり政務活動費を上げて今までどおりやらなければならないという思いで政務活動費を上げることに至った」
政務活動費は、議員に調査研究などのために必要な経費の一部として交付するもので、その原資は税金です。使わなかった分は返還することになっています。
1992年以降、岡山市議会の議員1人当たりの政務活動費は月額13万5000円です。半年に1度、各会派ごとに交付されます。
岡山市議会の指針では、政務活動費を調査研究以外にも市政報告書の作成や発送などの広報費、会派の活動に必要な職員を雇用する人件費、事務所の経費などに充てることができるとしています。
支出の内訳をみると、2023年度は広報費が約4割を占め、次いで人件費などとなっています。
2024年6月、岡山市議会は物価高騰などを理由に政務活動費の増額を市に申し入れ、市の審議会は月額を8万3000円引き上げ、21万8000円にすることが適当との見解を示しました。
ただし、これまで議会から支給されていた会派や個人の視察の旅費は出なくなります。
引き上げに関する条例案は、3月17日の議会最終日に全会一致で可決されました。
市民オンブズマンは増額に疑問 議長「市民に判断仰ぎたい」
政務活動費の無駄遣いがないかなどをチェックしているNPO法人市民オンブズマンおかやまの光成卓明代表幹事は、増額に疑問を呈しています。
(市民オンブズマンおかやま/光成卓明 代表幹事)
「正直言って戸惑っております。今まで必ずしも全額が使い切られているという状態ではなかったです。今まで余っていたやつが増えるというのは、余ったやつを返したくないのは人情ですから、どうしても『使い切っちゃおう』という動機が生まれてくるのではないかというふうに考えています」
支給された政務活動費に対して実際に使われた割合を示す「執行率」の推移をみると、2023年度までの5年間の議会全体の「執行率」はいずれも8割から9割です。
これについて、岡山市議会の田口裕士議長は……。
(岡山市議会/田口裕士 議長)
「私どももそこが気になっていた。かといって、足らない人は足らない、やはり大多数の人が(今の額では)どうにもならないという現状がある」
田口議長は細かい使い方は議員や会派に委ねているとした上で、支出について情報公開を進め、適切かどうかの判断は市民に仰ぎたいとしています。
(岡山市議会/田口裕士 議長)
「4年に1度、負託をいただく選挙があるので、その中でしっかりそれぞれの市民の皆さんがご評価をしていただいた上で、そこに結論が出ていくのではないか」
政務活動費増額の理由には「他の政令市と比べて低い」ということも
岡山市議会が政務活動費を引き上げる理由について、議会は「他の政令市と比べて低い」ことを挙げました。
2023年7月現在の岡山市の議員1人当たりの政務活動費は、20ある政令市の中で19番目、広島市の30万円と比べてもかなり低い金額です。さらに「物価」や「人件費」の高騰を加味した上で、議会では月額8万3000円の増額を決めました。
専門家「調査・研究活動にも生かして」
地方自治に詳しい専門家は、政務活動費は本来、議員が積極的に調査・研究活動を行い、よりよい政策を実現するために使われるべきだと話しています。
(近畿大学法学部/辻陽 教授)
「調査研究費と言われるものや資料購入費などまさに議員さんが勉強するためのお金として使っていただくのが一番いいのではないかなと」
政務活動費の使用実態について分析・研究している近畿大学法学部の辻陽教授は、一般的に政務活動費の支給額が大きいほど、広報費に使われる額も大きくなる傾向にあるとしています。
広報活動により議会や市政について知ってもらうこと自体は必要なことだとしながらも、議員は調査・研究活動にもっと多くの時間や費用を投じるべきだと話します。
(近畿大学法学部/辻陽 教授)
「もし従前の額で足りないのであれば、今回、政務活動費の額を引き上げるという判断はそれはそれでアリと思いますし、その分、よりしっかりとした議員活動をなさっていただいて議案の検証などにも生かしていただきたい」