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【解説】15年ぶりにロゴも刷新 高松市のシティプロモーションの狙いと課題は?

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 高松市が取り組む「シティプロモーション」。高松市の魅力を発信し、ブランドを向上させようというものですが、なぜ今、力を入れているのか? その背景と市の戦略を取材しました。

 3月3日、市議会に提案された高松市の2025年度一般会計当初予算案。「シティプロモーション推進事業」の費用として約3500万円が盛り込まれています。

 高松市は2023年度、地元出身の音楽プロデューサー、塚田良平さんに「シティプロモーションプロデューサー」を委嘱しました。

 2024年度は、首都圏から人を呼び込もうと東京駅の近くのシェアオフィスに「東京事務所」を開設したり、うどん以外の魅力をアピールするPR動画を作成したりしました。

 そして2月、事業費1650万円をかけて行った企画が「インフルエンサー100人旅行」。主に「Z世代」の若者に向け、SNSで影響力を持つ約100人を2泊3日で市内に招待しました。

 参加したインフルエンサーのSNSの総フォロワー数は5000万人超。うどん作り体験などを通じ、高松のグルメや景観などの魅力を発信してもらいます。

 委託を受けたPR会社によると、2月末時点でインスタグラムやTikTokなどの総再生回数は1億1000万回を上回っています。

(高松市/大西秀人 市長・2月5日)
「これまでのやり方ではなかなか若い世代の人たちに伝わらないというところがあると思います。若い人たちはそちら(SNS)が中心でいろいろ見聞をするということですから、そういった人たちに訴えかけるためにこういう催しが必要ではないか」

2035年に高松市の人口は40万人未満に

 そもそもなぜ高松市はシティプロモーションに力を入れているのでしょうか? その背景にあるのは「人口減少」です。

 国勢調査に基づく高松市の2020年の人口は、41万7000人で、2005年の合併以降、ほぼ横ばいです。ただ、その後の推計では緩やかな減少傾向となり、2035年には40万人を下回ることが予想されています。

 また、市外から転入する人と転出する人の差を年齢別にみると、特に、20~24歳と15~19歳の「若い世代」で高松市から出て行く人が多いのが分かります。(2019年から5年間の平均)

(高松市 広聴広報・シティプロモーション課/久保慶浩 課長補佐)
「50年100年先を見据えた街づくりをする時に人が少なくなっていくのは大きな問題」

 高松市は、この問題を解決するため、外から中に人を呼び込むPRだけでなく、「市内の人に向けたPR」も重要だと位置付けています。

(高松市 広聴広報・シティプロモーション課/久保慶浩 課長補佐)
「若い方々が高松という街に誇りと愛着を持ってもらえるような施策が求められている」

 高松市で暮らす人、訪れる人、関わる全ての人から「選ばれるまち」になるために。2月、市は「シティプロモーション推進ビジョン」を初めて策定しました。その理念を形にしたのが新しいロゴマークです。しかし……

(高松市民は―)
「タカマツ……? 知らんなあ。なんかちょっと(フォントなどが)かたい」
「このアルファベットを見ただけでは、なんのことか分からないなぁとは思いますね」

 市民の反応は、今ひとつ。15年ぶりに刷新したロゴマークの狙いとは?

市民による自発的な情報発信を

 2月20日、高松市の大西市長が香川県内の大学などの学長らと「若者が定着する街」に向けて意見を交わしました。この中で、市長がお願いしたのが新しいロゴマークを活用した自発的な情報発信です。

 淡い青色の背景に「TKMT 高松」とオレンジ色で書かれたロゴマーク。背景と文字の色は、複数から選ぶことができます。

 最大の特徴は、T・K・M・Tの頭文字を使って「(T)たのしい(K)けしき(M)みんなで(T)つくる」のような「あいうえお作文」ができる点です。

(高松市/大西秀人 市長・2月20日)
「オリジナルのキャッチコピーを、使う人が自由に作って、SNS等で発信できるようにするものでございます」

 これまで行政が一方的に行ってきた魅力発信を、市民にも楽しみながら行ってもらうのが狙いです。

 高松市が2010年から使ってきたのは、海と城をデザインした「瀬戸の都 高松」のロゴマークです。広報誌などを通じて一定の認知度はありますが、民間に活用されていないのが課題でした。

 そこで、市は推進ビジョンの策定支援と新しいロゴマークなどの作成を電通西日本高松支社に968万円で委託。2024年12月、「とにかく・きょうも・みんな・たのしそう」というキャッチコピーが入った素案を発表しました。

批判的な意見受け…市はキャッチコピーを削除

 しかし1カ月かけて行ったパブリックコメントでは市の内外から149件の意見が寄せられ、ほとんどが批判的な内容でした。

(高松市 広聴広報・シティプロモーション課/久保慶浩 課長補佐)
「中でも多かったのが高松らしさを感じられないというもの」

 ほかにも「ポエムのようで稚拙、ゆるい」などの声もあり、高松市はキャッチコピーを削除して今の形にしました。

 「TKMT」を使った情報発信はできそうか、高松市民に聞きました。

(高松市民は―)
「(T)楽しく(K)活動して(M)みんなで(T)ともに遊ぶ。おかしいかな?(Q.作ってみてどうですか?)いや~あんまり思いつかないというか」
「(T)楽しく(K)輝く(M)街(T)高松。難しかった。(Q.どういう活用の仕方がありそう?)SNS以外で何かあるかしら」
「ピアノとか音楽とか美術とかをすごい頑張っているイメージが(高松市に)あるので、それにつなげられたらいいですけどね……難しいですよね」
「難しい。あるかな?」

 市は今後、新しいロゴマークを使ったポスターやステッカーなどの活用事例を示し、市民が使いやすい流れを作りたいとしています。

Q.市がいろいろな発信をしても、民間側からのレスポンス、活用例がなかなか出てこない可能性も考えられるが?
(高松市/大西秀人 市長・4日)
「今からやって、少しずつ積み重ねていくしかないと思っております」

専門家「市民が達成感を得られる仕組み作りが必要」

 行政の広報やシティプロモーションに詳しい東海大学の河井孝仁客員教授によると、高松市が目指すようなロゴマークの活用に成功している自治体もあるといいます。

(東海大学 文化社会学部/河井孝仁 客員教授)
「先行事例としては宇都宮市。『住めば愉快だ宇都宮』というのがある」

 栃木県宇都宮市が2009年に作ったロゴマークは「住めば」の部分を好きな言葉に変えたり色を変えたりして、民間企業などが自由に使えるようにしています。現在約1500団体が活用しています。

 河井さんは、市民がロゴマークを使うことで、「達成感」を得られる仕組み作りが必要だと指摘します。

(東海大学 文化社会学部/河井孝仁 客員教授)
「例えばシティプロモーションの何らかの媒体に載せてあげるだけで、それを考えた市民の皆さんが『僕のTKMTがここに載っている!』『私の店が考えたTKMTがここに載っている』みたいな。市民や市外の人が作ったTKMTであふれています。みたいな形にできれば、高松市のシティプロモーションとしては大きな成功を収めるのではないか」

 自治体のロゴマークは公募をしたり、複数の案から市民に投票してもらったりするケースが多いため、パブリックコメントでは「決め方」を問題視する意見もありました。

 ロゴやブランドの浸透には時間がかかるため、「T」作って終わりではなく「K」活用することで「M」みんなの「T」宝にできるか、注目していきたいと思います。

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