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【解説】岡山市のバス改革 整備が進む「公設民営」路線の課題は

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 岡山市が進める「路線バスの改革」について考えます。車両の購入費やバス停の整備費などを市が負担し、民間の事業者が運行を担う「公設民営方式」を市内の路線バスに導入して2カ月、課題も見えてきました。

 6日、岡山市の担当者が訪れたのは岡山市南区のコンビニエンスストアです。
 市が2025年秋以降に設置を計画している新しいバス路線のバス停を、店の前に作らせてほしいとお願いに来ました。

 岡山市が設置しようと考えているのは、JR妹尾駅と天満屋ハピータウン岡南店をつなぐ路線です。南区役所や、ろうさい病院などを経由します。

(岡山市 地域公共交通交通推進室/秋永淳一郎 室長)
「この道路沿いは家もありますし、お店もあって人が集まってくるようなところなのでバス停としてはいいのかなと考えております。岡山駅から放射状に築港新町とか岡南飛行場とかはあったんですけど、それを横につなぐような路線はなかったので。一定のニーズはあるのかなと考えています」

 この周辺には岡山駅から南にのびるバス路線がありますが、市はさらに利便性を高めようと、もともとある路線を横断するような新たな路線を作ろうとしています。

(セブン-イレブン岡山浦安南町/平井茂オーナー)
「交通手段といったら車か自転車かでしょ。押し車をされる方もおられますので。年配の方が多いので、お年寄りの方も喜ばれると思いますよ」

利用者は目標の4分の1…PR不足も課題

 市はこのような路線をさらに増やす計画です。

 バス停の設置費用などを市が負担し、民間事業者が運行を担う「公設民営方式」を2025年4月に初めて導入しました。

 2025年4月にはその第一号としてJR妹尾駅と北長瀬駅をつなぐ路線を開設しました。2つの駅の間にはバス停が10カ所あり、1日20往復。運賃は200円均一です。

 市は初年度の運行経費を全額負担、2年目以降は最大65%を負担します。ただ、市によるとこれまで利用者の数は目標の4分の1ほどにとどまり、採算は厳しくなりそうです。

(松木梨菜リポート)
「こちらがバス停の一つです。岡山市は今後利用者をより増やすために分かりやすい表示にしたいとしています」

(地域住民は―)
「目立たないですね」
「朝晩は10人ぐらい乗っているときもありますけど、お昼は少ないですよね」
「みんな自家用車ありますのでね」

 運行していることを知らなかったというケースもあり、PR不足も課題に……。

(岡山市 交通政策課/金川伸也 課長)
「とりあえず走らそうということで仮設でプレート等を設置していますので、これから順次、分かりやすいバス停を設置していきたいと思っています。全国でバス路線が廃止・減便されている中で、岡山モデルって形で。新しい路線にチャレンジできたのは岡山市にとっても全国のバスのモデルケースになるのではないかと期待しているところです」

新たに17の支線を整備予定も…収支は厳しい予想

 路線の再編について岡山市はバス事業者8社と2018年から協議をしています。

 2024年2月には「地域公共交通計画」を策定。「路線の再編」と「運賃の適正化」などをテーマに検討を進めています。

 再編について、現在、バス路線はJR岡山駅を中心に鉄道路線に沿うようなルートを主に運行していますが、4月に運行開始となった北長瀬と妹尾をつなぐ路線をはじめ、今後は妹尾駅と岡南地区をはじめとした既存の路線を横断するような新たな路線を整備していきます。

 市はこれらの新たな路線を「支線」と位置づけ、市は2027年度までに公設民営であわせて17路線を市内に整備するとしていますが、収支は非常に厳しいと予想されます。

 初年度は市が全額負担する運行経費は、2年目以降は最大65%を負担し、残りは事業者負担になります。そのため初年度でいかに利用してもらえる路線にするかがカギとなります。

市中心部では初乗り運賃を160円に値上げへ

 そんな中、市の中心部ではバス運賃が値上がりしそうです。

 岡山市中心部を走るバス、岡山駅から表町地区に向かう路線では8社がバスを運行し、客の取り合いで事業者の競争が激化しています。

 「運賃」の値下げ競争により、国が認可した初乗り運賃よりも安い区間が増えています。

(岡山市 交通政策課/金川伸也 課長)
「収益が非常に厳しい事業者と話をさせていただいて。都心の運賃を元に戻しても赤字は全て解消しない見込みですから、根本的な議論が必要と考えています」

 市や事業者でつくる協議会は、現在100~120円の初乗り運賃を2025年10月にも160円に値上げする方針を示しています。

 利用者の減少でバス路線全体の9割が赤字となる中、今後の運行を維持するため、今後運賃体系をどうしていくかについて議論していくとしています。

 市は2028年度まで路線バスの再編に取り組むとしています。総事業費は約30億円です。

(岡山市 交通政策課/金川伸也 課長)
「自動車に過度に依存した都市構造ライフスタイルになっていますから、それをどう公共交通を中心とした街に変えていくか。それが大きなテーマかなと思っています」

専門家「長距離割引制度などサービス拡充を」

 公共交通に詳しい専門家は、車依存から脱却するためには長距離割引制度などサービスの拡充が大切だと訴えます。

(岡山大学大学院/氏原岳人 准教授)
「今回は中心部の値上げって話だったんですけれども、郊外から長距離乗っていただくような路線に関してはむしろ安くするような、都市全体で見たときに住民の方々にとっても乗りやすい体系を考えて行く必要はあるかなと思っています」

 市は6月末にバス事業者との協議会を開く予定で、路線の再編や運賃などについて話し合う予定です。全体の再編には時間がかかりそうですが、市民や利用者の目線にたった改革を考えてほしいと感じます。

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