大阪・関西万博に、岡山と香川、それぞれの大学が研究を進めている食べ物が販売されています。香川の学生が考えた商品は、おにぎりに香川を代表する料理をかけ合わせた斬新な発想です。
陸上で養殖された高級魚
大阪・関西万博のくら寿司。日本の寿司のほか、世界各国のグルメ約70種類を楽しめます。
(訪れた人は―)
「サーモンとかいっぱい食べた」
「ベルギーのベルギーワッフル! 甘いところ(が気になる)」
ここで数量限定で提供されている「マツカワガレイ」。カレイの王様とも呼ばれる高級魚です。ただ、この店で提供されるカレイは、「育ち」が違います。
(岡山理科大学 生物生産教育研究センター/山内啓誠さん)
「大阪・関西万博の『くら寿司』に向けてのマツカワガレイになります」
このカレイを養殖しているのは、岡山理科大学の生物生産教育研究センターです。
(荻津尚輝リポート)
「マツカワガレイを育てるのに使っているこの水。実は海水ではなく人工的に作られた飼育水、好適環境水というものなんです」
好適環境水は海水より成分の種類が少なく、生育に適しているのが特徴です。場所や魚の種類を問わない持続可能な養殖が目的で、これまでに約20種類を育ててきました。マツカワガレイは、2023年7月に養殖を始めました。
(岡山理科大学 生物生産教育研究センター/山内啓誠さん)
「毎朝2匹ずつやっています。(Q.大変じゃないですか?)もう慣れたものです(笑)」
出荷後は、大阪府にあるくら寿司の加工センターでさばかれて店舗に送られます。
(岡山理科大学 生物生産教育研究センター/山内啓誠さん)
「盛大なイベントで扱ってもらえてすごくうれしいと思いました。どういう評価をもらえるかな」
(荻津尚輝リポート)
「かんだ時にそれを跳ね返してくる弾力を楽しめます。エンガワを食べた時の口の中に広がる味に近いさわやかな甘味がありますね。全体としてはサッパリしているんですが、濃厚なマツカワガレイのコクを楽しむことができます」
(実際に食べた人は―)
「(Q.陸上で養殖されているんですよ)えー! めっちゃおいしいです!」
「コリコリしていて食感いいです」
マツカワガレイは1皿320円。会期中は毎日提供されます。
おにぎり×うどん
(荻津尚輝リポート)
「世界中のさまざまな文化が集まる万博。こちらの建物には、日本の企業などが飲食ブースを設けています。そこで、香川県の学生が考えた『香川の魅力が詰まった食べ物』を食べることができます」
それが、おにぎり! その名も「うどん出汁ジュレ」。中には、いりこだしのジュレや油揚げなどが入っています。
(荻津尚輝リポート)
「うどんだしのジュレがジュワーっと一気に広がります。その後にお揚げが登場するので、きつねうどんを食べている気分です。万博会場でうどんのおにぎりを食べることができる。香川の味を、香川の姿を思い起こすことができるという、素敵な経験だと思います」
外食パビリオン「宴」の中にある象印のブース。国内外の食とコラボしたおにぎりを出している「ONIGIRI WOW!」で9月16日まで購入可能です。
この商品を作ったのは、香川大学の「おむすび研究室」。コピー機の横には炊飯器。なにやらお米への愛が強そう……。
(香川大学4年/藤田若葉さん)
「100個は握っていますね」
(香川大学4年/堤彩翔さん)
「手に水分が無くなるくらい握りました。フフフ」
「おむすび研究室」は、香川大学でデザインを学ぶ「サービスデザイン研究室」が、2023年立ち上げたもの。香川県産米「おいでまい」のPRを行っています。
その中で作った「うどん出汁ジュレ」が、万博で出すおにぎりを探していた象印の目にとまり、2月に、出品が発表されました。ただ、出品までにはジュレならではの壁が。
(香川大学4年/藤田若葉さん)
「どうにか溶けないようにできないかっていう……」
というのも、開発当初は冷ましたご飯を使っていましたが、万博で使うのは、アツアツのご飯。ゼラチンが熱で溶け、水分で形が崩れてしまうことが分かりました。
ゼラチンの代わりはないのか? 学生が話し合いを重ねて見つけたのが、ゼリーやプリンを固める時に使う「パールアガー」。アツアツのご飯でもジュレが溶けませんでした!
(香川大学4年/藤田若葉さん)
「感動。溶けてない!」
(香川大学4年/堤彩翔さん)
「なんか食べていてもジュレの食感が残っていて、驚きでした」
壁を乗り越えて完成したおにぎり。特別な思いがあるそうです。
(香川大学4年/堤彩翔さん)
「うどん出汁ジュレが香川らしいよねって思ってほしいのと、後はそこから香川以外の人にももっと香川に興味を持ってもらうための入り口として少しでも多くの人に届いたらいいかなと思っています」
9月4日。万博に、学生たちを指導している香川大学の石塚准教授の姿が。
(香川大学/石塚昭彦 准教授)
「(万博仕様のものは)正式には食べていないので、初めて食べます。楽しみです!」
(香川大学/石塚昭彦 准教授)
「うまい! だしの再現性がすごい高いですね」
すると、石塚さんのもとに、「ONIGIRI WOW!」の責任者、岩本さんがやってきました。
(香川大学/石塚昭彦 准教授)
「売れ行きはどうですか?」
(象印マホービン 新事業開発室長/岩本雄平さん)
「売れ行きは本当に好調で、お客さんきょうもだいぶ並ばれていただいているけど、ほぼほぼ毎日売り切れている状態」
(香川大学/石塚昭彦 准教授)
「売り切れるんですね! 良かった!」
(香川大学/石塚昭彦 准教授)
「プライドを持ってうどんのことをアピールしようとしていたので、それが本当にここで実現されているのがうそみたい。1つのおにぎりでも色んな人が関わっているし、色んな会社が協力してくれていることを分かってくれれば、学生にとってはいい経験だろうなと思います」
(2025年9月8日放送「News Park KSB」より)