暮らしに密着した経済の話題をお伝えする「暮らし×経済」です。今回は「男性の育児休業」です。「①男性育休の現状は?」「②取得率40%超えで給付も拡充」「③職場は欠員前提の体制作りへ」をお伝えします。
岡山県倉敷市で双子が生まれたことをきっかけに1年間の育児休業を取った男性に話を聞きました。
男性育休の現状は?
倉敷市に住む三宅治輝さん(34)と妻の美幸さん(35)、長女の穂香さん(7)、双子の壮祐くん、祐仁くん(1)の5人家族です。
カメラの前で得意の歌と踊りを披露する穂香さん。将来の夢は……
(穂香さん)
「将来アイドルになるのが夢です」
小学校教諭の三宅さん。7年前、穂香さんが生まれたときは育児休業を取りませんでした。
しかし、2024年4月、壮祐くん、祐仁くんが生まれたのをきっかけに1年間の育児休業を取得しました。
(三宅治輝さん)
「1つは双子というのに背中を押された。2つ目は、穂香の時は妻に任せきりだったので今度は夫婦で子育てをしたいと思った」
もともと料理は得意でなかった三宅さんですが、育児休業中は主に食事づくりを担いました。その経験が職場復帰した後の今も生きているといいます。
(三宅治輝さん)
「男の家事修行の期間だと思います。結婚する前は最低限生きるためみたいな料理だけでした」
今では、朝食や仕事が休みの日の食事を担当することも多いそうです。
(美幸さん)
「1人目の穂香の時からとても協力的ではあったが、どうしても手伝う感じ。一緒に育休を取れたことで一緒に悩みながら、考えながら、試行錯誤しながら育児ができたというのはとても良かった」
一方、育児休業を取る上で、金銭的な不安もあったそうです。
(三宅治輝さん)
「最初の半年は考えなかったが、半年過ぎたくらいから経済的なことも考えるようになってきた」
2024年度の制度では、開始から180日目までは給付金が休業前の賃金の67%で、さらに社会保険料も免除されるので手取りで8割程度。181日目以降は賃金の50%に下がり手取りで約6割となります。
こうした中で、三宅さんは家計簿のアプリで支出を「見える化」。飲み会代や携帯代、有料チャンネルなどを見直し、月に5万円ほど削減して家計をやりくりしたといいます。
(三宅治輝さん)
「経済的な不安ももちろんあるが、長い人生の中でちょっとそこに目をつむって、子どもたちや妻とゆっくり過ごす時間を得られたというのは本当にかけがえのない時間だった」
男性育休の取得率が上昇
こうした男性育休の取得率は年々上昇し、その給付も拡充されています。
厚生労働省によりますと、2024年度、育休を取った男性の割合は40.5%となり、前の年より10.4ポイントも増えたんです。
ちなみに15日、岡山県が発表した2024年度の取得率は30人以上の事業所で60.1%。29人以下の事業所で56.7%と半数を超えています。
育休の給付制度は2025年4月に拡充されました。
一定の条件を満たせば最大28日間は給付額が13%上乗せされ、実質、手取り10割相当の給付を得られるようになりました。
欠員前提の体制づくり進む
男性の育児休業取得が広まる中、職場では、「欠員を前提とした体制づくり」が進められています。
2025年、岡山市に採用された高木栄太さん、23歳。7月から、広報広聴課で広報誌の編集や市の公式SNSで情報を発信するなどしています。
岡山市は育児休業の取得を後押しするため2023年に、1カ月を超える育児休業で欠員が出た場合、代替要員を補充する取り組みを始めました。
代替要員は2023年度は2人でしたが、2025年は4人に増員されました。欠員の補充だけでなく新人職員にとっては研修の機会にもなっています。
(代替要員として勤務/高木栄太さん)
「いま2部署目だが、どちらの部署の方も温かく迎え入れてくれてさまざまな業務に携われていて、1年目からいろんな業務ができたり人脈が広がるというのは自分の今後のキャリアにとってもいいことと思う」
2024年度、子どもが生まれた市の男性職員のうち育児休業を取得した人は約9割で、そのうち1カ月以上が32.8%でした。これは2年前と比べて12ポイント増えています。
(岡山市 広報広聴課/柳井雅世 課長)
「育児休業を取りやすい職場環境につながると思うし、私たちからも勧めやすい職場環境になってきている」
今後は介護休暇も課題に
男性の働き方改革や育児休業の取得を推進するNPO法人「ファザーリング・ジャパン」の徳倉康之副代表理事は「今後は育児だけでなく親の介護休暇も課題になる」と話し、男性育児休業の推進は、「介護休業」などの課題を見据えると企業側のメリットになると話します。
(ファザーリング・ジャパン/徳倉康之 副代表理事)
「ある程度、円熟味が出てマネジメント層になった時に介護の問題に直面して離職をするとなると、企業にとっても大きなマイナス。介護と仕事の両立を見据えた運用を育児と仕事の両立の中で生かせる企業が20年後のあるべき姿」
さらに制度を生かすには、「有給休暇の取得率の向上」も欠かせないと話します。
(ファザーリング・ジャパン/徳倉康之 副代表理事)
「育児や介護を担わない方も組織にはいる。休業制度を使う人とのあつれきを生まないためにも、まずベースとしては全ての従業員、社員が取れる有給取得率を上げていく。その中の次のステップに育休があり介護休業制度があるという認識に立つと実はうまく制度が使える風土がつくれる」
(2025年10月15日放送「News Park KSB」より)