学校に行かない選択をする「不登校」の児童生徒が年々増える中、学習支援や居場所の提供などを民間で行う「フリースクール」の重要性が高まっています。
香川県の小豆島にあるフリースクールでは、島の外の子どもを短期間受け入れる「離島留学」のプログラムを行っています。
重い「くわ」を使って畑を耕しているのは、東京に住む小学6年生の優多くん(12)と弟で4年生の愛輝くん(10)。9月4日から1カ月間、親元を離れて小豆島に滞在しました。
2人が参加したのは香川県土庄町のフリースクール0Live(オリーブ)学園が行っている「短期離島留学」プログラム。提携する農家のもとで畑作業をするなど、島の自然を生かした体験学習を多く取り入れています。
(優多くん)
「東京じゃできない、例えば木切ったり、たき火したり、どこでもできるからそういうのが好き」
(記者)
「じゃあこの畑作業も好き?」
(優多くん)
「……。」
(記者)
「それは暑いからあれか」
(農家/今川早苗さん)
「頼もしいです! 将来こういうことしてくれるとうれしいなあって。その第一歩二歩が今始まったかなって思って。『頑張れー!』っていう感じやね」
実は2人とも2024年から小学校に通っていません。優多くんは小学4年生のころ勉強する意味を見つけられなくなり、5年生の4月から学校に行かない選択を。それを見た弟の愛輝くんも一緒に行くのをやめたそうです。
全国的に増加傾向にある不登校の児童生徒。
香川県教育委員会によると、香川県の不登校の小学生は2019年度の285人から2023年度には767人と2.5倍以上に。
新型コロナ禍の休校を経て、親子ともに学校を休むことへのハードルが下がったことも背景にあります。
学校に行かない選択をした優多くんと愛輝くんのお母さんは複雑な気持ちになったそうです。
(母親/美穂さん)
「今まで通りにはいかないから、じゃあどうにかしないといけないなっていうのと、嫌々行っていたのがとうとう限界にきて、そこまで我慢させちゃってたのかという気持ちと両方」
自分が働いている間ずっと留守番をさせるわけにもいかず、「フリースクール」を探したものの、費用面や本人たちが気に入るかどうかで難航……。
そんな中、たどり着いたのが小豆島で2024年に開校した0Live学園です。
これまでに不登校以外の子も含めて20人以上を受け入れ、主体性や個性を伸ばす体験型の学びを提供。
島外の子どもも救いたいと運営スタッフの自宅や古民家などを宿泊先とした離島留学のプログラムを始めました。
2人が初めて参加したのは2024年5月。ここでの生活が気に入り、延長を繰り返して3カ月ほど滞在しました。その後も、3日間や10日間の留学を行い、今回で4回目です。
(母親/美穂さん)
「助けてもらったなっていうか、私も仕事に集中できましたし、(2人は)生き生きしていた感じがする。思い出話をするときのキラキラした感じがとても印象的で……」
0Live学園を運営する代表の藪慶太朗さんと、理事の須藤奈美さんです。
(0Live学園 代表/藪慶太朗さん)
「小豆島に来たら人と人とのつながりが強くなる分、自分のいいところとかやりたいことがあるとそれを応援してくれる人が出てくるっていうところがこの島はすごくいいなと思う」
0Live学園を開校して1年、不登校の子どもが100人いたら100通りの理由があることに気づいたそうです。
(0Live学園 理事/須藤奈美さん)
「(不登校は)誰でも本当にいつでもなるもの。なったときにどうするかっていうケアを考えていった方がいいのかなと。いつなっても通えるところがあるんだよっていうのが0Live学園の今小豆島にある意味」
東京ではゲームや室内のボール遊びが好きだったという優多くん。新しい経験を重ね、自身の変化に気づきました。
(優多くん)
「けっこうわがままであれこれやりたいやりたくないが激しかったけど、今はそんなにわがままじゃなくなったかなあって思う」
さまざまなスケジュールの提案に「とりあえずやってみよう」を続けた愛輝くんが得意になったのは……?
(愛輝くん)
「釣り! (Q料理するのは?)おれ! きのうも作ったよ、刺身!」
この日は福田港へ。自分の釣り竿で挑みます。
(愛輝くん)
「引くのが楽しい! 巻くの。ちっちゃい鯛!」
手を変え品を変え約3時間、糸を垂らし続けました。そんな愛輝くんには一つの夢ができました。
(愛輝くん)
「漁師……になりたい!」
島での経験に背中を押され、前に進んでいる2人。0Live学園の短期離島留学は期間は3日間からで、希望に合わせてスケジュールを組むそうです。
(2025年10月20日放送「News Park KSB」より)