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【特集】「不存在」とされた議事録があった⁉ 旧香川県立体育館の分岐点…民間利活用調査の庁内議論は

 香川県が進める旧県立体育館の解体工事。一つの「ターニングポイント」となったのが、2021年度に行なった民間への利活用調査です。この調査結果を受けて県庁内ではどんな議論が行われたのか? 情報公開請求で「ない」とされた議事録の存在が明らかになりました。

民間への利活用調査 2カ月で10の提案

 老朽化などを理由に2014年に閉館となった旧香川県立体育館。

 保存か活用か「宙ぶらりん」の状態が続いていましたが、2021年、香川県教育委員会が動きを見せました。

(記者リポート・2021年9月)
「『あなたの提案で新たな息吹を』。県教委が作成したリーフレットではミュージアムや宿泊施設、オフィスなど体育館にこだわらない幅広い用途を例にあげています」

 民間から利活用策を聞き取る「サウンディング型市場調査」。参加条件は保存・活用事業の「実施主体」となる意向がある法人や団体で、施設の改修・運営費用は原則、「事業者の負担」としていました。

 2カ月という短い募集期間にもかかわらず、9つの事業者から10の提案が寄せられました。しかし……

「厳しい結果…」解体方針を決定

(香川県教育委員会/工代祐司 教育長[当時]・2022年1月)
「なかなか厳しい調査結果だなというのが率直な感想でございます」

 演劇、アートといった文化の拠点施設やカフェなどさまざまな用途が提案されましたが、県教委は「いずれも県の財政負担を想定しているか、資金回収計画の具体的な記載がない」として翌2023年2月に解体の方針を決めました。

(香川県/池田豊人 知事・2023年2月)
「広く募ってご意見をいただくことも行いましたが(活用策が)見つからなかった。解体の方向というものしかもう……道がないという」

 提案の一つは屋根を取り除いてスケボーやスポーツクライミングの拠点、カフェ、ジムなどに利用するというもの。

 最低限の耐震化や改修費用を13.4億円と見込み、解体にかかる費用分を県に負担してもらうプランと、県から改修費を借り、施設の収益によって30年で返済するプランを示していました。

 しかし、「県の財政負担がある」として採用されず、提案者によると、調査の後、意見交換の場も一切なかったといいます。

調査後の議論は?議事録を開示請求も「存在しない」

 KSBの記者は2023年6月、「解体方針決定に至るまでの庁内での協議内容が分かる文書」を情報公開請求しました。

 約2カ月後に開示されたのは、知事や教育長の会見録など、「協議」の内容とは言えないものばかり。

 ただ、「サウンディング型市場調査連絡会」という県と県教委の関係課の職員による会議が、調査開始前の2021年7月と調査後の2022年3月に2回開かれていることが判明。

 その「議事録」を再度、開示請求したところ……「当該文書が存在しない」として非公開の決定通知が届きました。

民間団体が「公費ゼロ」の再生案 県は協議に応じず

 その後、県議会で約10億円の解体工事費の予算が可決。

 2025年7月、建築家らでつくる再生委員会が土地と建物を買い取るなどして民間資金で耐震補強と改修を行い、ホテルなどに再生する「公費ゼロ」の再生案を出しました。

 しかし、県は「安全確保が急がれる」として協議に応じず。再生委員会は解体費用の支出差し止めを求める住民訴訟を起こしました。

不存在の文書があった!? 県教委「探していたら出てきた」

 2026年9月、この裁判の中で、被告の県側が「ある文書」を証拠として提出しました。

 第2回の「サウンディング型市場調査連絡会」の議事録。3年前にKSBの記者が情報公開請求したときには「不存在」とされた文書です。

 記者は再び開示請求し、10月、文書を入手しました。

 A4版1枚のメモに記されていたのは、「そもそも改修まで、全てを民間に委ねることには無理があるのではないか」「提案Eについては、取り壊し費用に相当する額を提案者に渡してくれれば良いという趣旨であり、単に県費負担を求めるものとは意味が違うのではないか」といった職員の意見でした。

 なぜ、「ない」とされた文書が出てきたのか?

 県教委の担当者は「3年前の請求の際には見つけられなかったが、裁判の過程で探していたら出てきた」と説明します。

 10月19日の定例会見で池田知事にただしました。

(記者)
「これまでもいろいろな情報公開請求をしてきてますけど、不存在というのはよくあります。これが『後で探したら出てきました』ということが起きるのであれば、何を信じたらいいんですか?」

(香川県/池田豊人 知事)
「3年前の公開請求の際に見つけることができなかったことについては、申し訳なく思っております。今後、より徹底して適切に対応していきたいと思います」

 情報公開請求などを活用して行政の監視を行なっている市民オンブズ香川の渡辺智子事務局長はこう指摘します。

(市民オンブズ香川/渡辺智子 事務局長)
「文書の管理の方法としてそんなどこにあるか、我が家じゃあるまいし、ごちゃごちゃになっているわけはなくて、ある問題についてきちんと整理されている。それはもう県の職員の方のお仕事です。ですから、探したら出てきましたというのはあり得ない言い訳ですね」

あり方検討会とは? 解体決定理由は検証できるのか

 議事録の最後には、連絡会は今回で終了し、今後は「あり方検討会」で検討していくことについて説明し、了承を得たと書かれていました。

 「あり方検討会」とはどんなメンバーによる会だったのでしょうか?

(香川県/池田豊人 知事)
「このあり方検討会については開かれていない。そして、それに類する特定の会議や協議体も開かれていないということを、今の時点で記録をさかのぼって確認しております。記録は残っていないということでございます」

 「あり方検討会」が開かれた記録は残っていない……。

 改修費用まで全て民間に委ねることを疑問視する声が上がっていた連絡会での議論と、「民間利活用の可能性はなく、解体しかない」という結論。

 この2つの間でどんな検討がなされたのか、公文書ではうかがい知ることはできません。

(記者)
「記録を残していないというのは、例えば10年後、20年後に、なぜこの旧県立体育館が解体されたのかを県民が検証できないということになると思うんですね。今からでも、まだ関わった職員はいらっしゃると思うので、なぜ解体を決めたのかというところをちゃんと記録として残しておく必要があるんじゃないですか?」

(香川県/池田豊人 知事)
「やはり行政のいろいろな記録というのは重要なことであると思います。それはしっかりとこれからも改善、より適切に進めてまいりたいと思います」

 市民オンブズ香川の渡辺さんは、この旧県立体育館の問題に限らず、行政が信頼を得るには「記録と公開」が欠かせないと訴えます。

(市民オンブズ香川/渡辺智子 事務局長)
「きちんと記録を残しておく。どんな議論があって、どういう根拠のもとに、どういうデータのもとにこういう判断をしました、ということが必ず県民に説明されなければならない。情報公開というのは、やはりいろんなことの全ての基本にあるべき問題だと思っています」

(2026年11月3日放送「News Park KSB」より)

KSB 報道
執筆:KSB報道
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