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【独自】ミャンマー“犯罪都市”の偽計画書入手 詐欺集団と国境警備隊の蜜月の歴史

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タイとミャンマー国境、世界中へ特殊詐欺を行っていたとして摘発が入った“犯罪都市”「シュエコッコ」。番組では、この街に関する“偽の建設計画書”を独自入手。明らかになったのは、巨大な中国系犯罪組織の影でした。

■詐欺拠点 新たに外国人“2000人”保護

(藤富空記者)「きょうも詐欺拠点には国境警備隊の姿が確認できます。きょうも捜索が行われるようです。」 “KKパーク”と呼ばれる、中国系犯罪組織の拠点に続々と到着する少数民族の武装勢力「国境警備隊」。ロケットランチャーのようなものを担いでいる隊員の姿も見えます。「国境警備隊」はミャンマーの国境地帯を支配していて、今月28日までにすべての拠点の摘発を終えるとしています。 (国境警備隊の幹部)「“KKパーク”の取り締まりを始めた。取り締まりは毎日行われている。」 「国境警備隊」の幹部が我々の電話取材に応じました。 (国境警備隊の幹部)「日本人がいるかは調査中だ。ボスとして詐欺ビジネスをやっている日本人はいないが、部下や料理人として働いている日本人は数人いると聞いている。」 そして先ほど、この幹部は2日間のKKパークの捜索で約2000人の外国人を保護したと明かしました。ただその中に、日本人は含まれていないと言います。 中国系犯罪組織の拠点はミャンマーとタイ、どちらの首都からも遠く離れた国境地帯にあり、タイの市民団体は合わせて25人の日本人が監禁されている可能性があるとしています。

■恐怖の監禁生活「お前の臓器売る」

(松本拓也ディレクター)「いきなり大きい建物が立ち並んでいます。川の向こう側に見えるのがミャンマー南部のシュエコッコです。」 この“シュエコッコ”も、外国人を監禁している拠点があるとされる、いわば“犯罪都市”です。 (松本拓也ディレクター)「一見すると普通の建物なんですが、窓にはすべて鉄格子のようなものがはめられています。中にいる人を逃がさないためでしょうか。」 実際に詐欺が行われていた建物の内部はどうなっているのか。これはシュエコッコでの摘発の映像です。 「ここは以前(特殊詐欺の)メッセージをやり取りする“仕事部屋”だったそうです。ここにあるものが摘発で押収されたものです。」 強制的に連れて来られた人たちの荷物なのか、大量のスーツケースが置かれています。その脇にはたくさんの配線と、オンライン詐欺に使っていたであろうパソコンも残されていました。別の部屋には、監禁されていた中国人が大勢集められていました。 「よく聞いて。中国籍の人。家に帰りたい人、手を挙げて。」 「みんな全員、家に帰りたいか?」 「はい。」 我々が入手したシュエコッコの映像では、様々な国の人たちが解放され、お互いに喜びを分かち合う姿も見られました。 監禁されていた人たちの証言から、“犯罪都市”で何が行われていたかも、徐々に明らかになってきました。 (監禁されていた中国人 許博淳さん)「韓国人は韓国人に、台湾の人は台湾の人に、日本人は日本人に(詐欺をやる)」 国別にグループに分けられ、投資詐欺や結婚詐欺などを強要され… (監禁されていたバングラデシュ人 アリヤンさん)「先週もノルマを達成できなかったので、電気ショックを与えられました。」               中には、こう脅された人も―。 (監禁されていたバングラデシュ人)「『ミャンマーには最大の“臓器売買市場”がある。やらないなら、お前の臓器を売る』と言われた。」

■4年前から…国境“違法カジノ”の実態

このような“犯罪都市”はどうやってできあがっていったのか。我々は4年前にシュエコッコ周辺を取材。その当時から国境地帯は、違法ビジネスの温床になっていました。 (松本健吾記者 バンコク支局(当時))「私の後ろに流れる川の向こう側がミャンマーになるんですが、建物の中を見ると“オンラインカジノ”をやっている様子を見ることができます。」 「あっ、カメラがありますね。カメラで配信をしているようです。カメラでカジノの従業員の女性を映しています。」 これは中国人をターゲットにした、違法な“オンラインカジノ”です。 さらに取材を進めると、新たな街が建設されていることが分かりました。 (松本健吾記者 バンコク支局(当時))「正面に見える川の左側がタイ、右側がミャンマーになります。そして私の後ろに見えているあちらの大きな建物、建設中のホテルと言われていますが、工事は着々と進んでいます。」 この建設中の街こそが、今回、中国系犯罪組織の拠点として摘発された、シュエコッコです。 (松本健吾記者 バンコク支局(当時))「ミャンマー側の建物に中国の国旗が掲げられています。」 シュエコッコの開発プロジェクトは、ある中国系企業が150億ドル、今のレートで2兆円以上を投じるとして、2017年から始めたものです。

■独自入手 ミャンマー“犯罪都市”の偽計画書

これは我々が入手した建設計画書。カジノや高級ホテル、空港もつくると書かれていて、中国が推進する巨大経済圏構想、「一帯一路」政策に基づくものだとうたっています。 衛星写真で見てみると、何もない平野に道路ができ、一気に巨大な街へと発展していく様子がわかります。 これは開発が進んだ後のプロモーション動画です。真新しい住宅やジムなどが紹介され、そこに住む人たちの暮らしぶりが映し出されています。さらに夜の飲食店やグルメ、ナイトプール、ナイトクラブなどの娯楽施設の様子も大々的にアピールされています。ただ表向きの華やかさの裏側で、シュエコッコには中国系の犯罪組織が流入し、“犯罪都市”へと変貌。国連の報告書でも、違法カジノやサイバー犯罪、人身売買、マネーロンダリングなどの違法行為の一大拠点になっていると指摘されています。 この中国系企業のトップだったのが、シャ智江という男。違法なオンラインカジノを運営したとして、後に中国から国際手配され逮捕された、曰くつきの人物です。 在ミャンマー中国大使館は2020年、シュエコッコの開発プロジェクトについて、「一帯一路」政策とは全く関係ないとする声明を発表しました。 (在ミャンマー中国大使館の声明 2020年8月)「報道ではこのプロジェクトは賭博に関与し、現地社会にマイナスな影響を与えた。中国資本が海外現地のカジノに投資することは禁止しているし、中国人が経営に関与することも許していない。」

4年前の取材時にはすでに怪しい動きも。シュエコッコの元住民から得た証言です。 Q.この建物は? (シュエコッコ元住民)「この街にやってきた中国人労働者の住宅だよ。」 Q.彼らはどんな仕事をしている? 「聞いた話だと一日中部屋にこもって、パソコンで何かの作業をしているらしい。」 最初から犯罪拠点にする計画だったのか。私たちは中国系企業を直撃しました。 Q.こんにちは。 (中国系企業)「こんにちは。何ごとですか?」 「切られました。」 国境警備隊など、少数民族の武装勢力に詳しい研究者、佐々木研さんです。以前、シュエコッコを訪れたこともあります。 (駒澤大学 佐々木研非常勤講師)「華人企業と犯罪集団がセットとなって計画していた可能性はあるかもしれないですね。ここを支配している少数民族武装勢力(国境警備隊)に対して活動の自由が認められているところになりまして、中央政府とかの法による統治があまり及ばない地域になります。」

■中国系犯罪組織と警備隊の蜜月関係

シャ容疑者と一緒に映っているのは、「国境警備隊」のトップ。実は、シャ容疑者による開発の後ろ盾となってきたのが、今回、摘発を実施した「国境警備隊」でした。 2019年の式典で、「国境警備隊」のトップはこう宣言していました。 (国境警備隊のトップ)「シュエコッコを国から認められる大きな街にする。」 (駒澤大学 佐々木研非常勤講師)「彼ら(国境警備隊)が持っている会社と、華人企業が共同で都市開発を行っておりまして、華人企業からは、国境警備隊に対して、土地リース料と警備負担料という名目で資金がいっている関係にあります。少数民族武装勢力(国境警備隊)からしても、華人企業からしても、利益を得られる場所だったので、見て見ぬふりをしていたのではないかと思います。」 2022年8月、シャ容疑者は逮捕されますが、現在までシュエコッコでの犯罪行為は続いてきました。 Q.中国の犯罪グループと国境警備隊の関係は? (国境警備隊の幹部)「特別な関係はない。彼らから受け取っているのは、土地の賃貸料だけだ。それ以外は何も受け取っていない。」 詐欺には関与しておらず、中国系犯罪組織からは土地のリース料以外は受け取っていないと主張した、国境警備隊の幹部。なぜ今、犯罪拠点の摘発に乗り出したのか。

■なぜ一転摘発? 「メディアの圧力」

(国境警備隊の幹部)「メディアは事実と違うことを報道し圧力をかける。国境警備隊が悪いことをしているとの誤解する人もいる。だから今回、我々は詐欺拠点を暴いた。」 (駒澤大学 佐々木研非常勤講師)「国際社会から注目を浴びてきたので、見て見ぬふりができなくなったという事情があったのと、タイが強行措置として、電源とか燃料の供給とかその他の物資の供給をストップしましたので、それでこのような対応をせざるを得なくなったのではないかなと。」

2月23日『有働Times』より

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