日本の軍人・軍属として犠牲になったおよそ3万人の台湾出身者たちを祈る場として横浜市の寺に慰霊碑が建てられました。
4月、横浜市にある真照寺の慰霊碑を見つめるのは台湾出身で横浜市に住む呉正男さん(97)です。
「台湾で生まれて小学校まで台湾だし、育ててくれたのはやっぱり母国は日本だと思います」
呉さんは日本統治下の台湾で生まれ、中学進学を前に日本に留学。太平洋戦争の戦況が厳しくなっていた16歳のころ、日本軍に志願しました。
「やっぱり日本人になっているから、俺も入隊して日本のために頑張ろうと」
部隊に配属され、終戦の2カ月前には“特攻の意識調査”があったと言います。
「渡された紙には、それに書いてありましたね。志願、熱望、熱烈望。戦死の順番がきたんだなと思って熱烈望をつけました」
しかし、特攻隊として出撃することはなく、終戦後の2年間の抑留生活も生き延びた呉さんは、台湾出身者らでつくる団体の会長も務めました。
台湾出身の日本兵を追悼する碑が東京・奥多摩町の山間部にあることを知った呉さんは、十数年前から毎年、慰霊のために通っていました。しかし…。
「山道が壊れて危ないから、もう車で通れませんと。年寄りがいっぱいいるのに、車の往復ができないからやめた」
呉さんの思いを知った横浜市の真照寺の住職が寺の敷地を提供し、クラウドファンディングなどで費用を集めて碑の建立にこぎつけました。
そして25日、真照寺で、呉さんらが集まって除幕式が開かれました。
「この碑ができましたことは、戦没された3万余名の元兵士、元日本軍人の方々らは非常に喜んでおられることと思います」
碑には「あなた方がかつて我が国の戦争によって尊いお命を失われたことを深く心に刻み永久に語り伝えます」とも刻まれています。