香川県高松市の男木島は、震災直後から宮城県の島と交流を続けています。
遠く離れた2つの島を繋いだのは「スイセン」です。今年もそれぞれの島で美しい花を咲かせました。
遠く離れた島を繋ぐきっかけは「スイセン」
高松市の中條慎也さん(63)が話しているのは、宮城県の三浦勝治さん(75)です。
2人の交流は、10年前に送った「スイセン」をきっかけに始まりました。
(テレビ電話で会話する中條慎也さんと三浦勝治さん)
中條さん「いまね、男木島に渡ってスイセン見てきたけど、桂島のスイセンいかがですか?」
三浦さん「ところどころ見れば…」
中條さん「おお!咲いてるじゃん!」
男木島を元気にしてくれた「スイセン」を東北に…始まった交流
宮城県塩竃(しおがま)市にある桂島。
2011年3月11日。桂島は津波で約半数の住宅が全壊しました。
死者は出なかったものの、多くの住人が仮設住宅での生活を余儀なくされました。
桂島の状況を知った男木島の住民たちは、何か支援ができないかと「スイセンの球根」を送ることにしました。
この頃、男木島は「スイセン」で島に活気を取り戻そうと取り組んでいました。
(男木水仙郷をつくる会/中條慎也さん)
「震災で壊滅的な状態になった東北を、男木島を元気にしてくれたスイセンを送ることによって東北、桂島が元気になればいいなという思いもあって。みんなで掘り起こして送ったんです」
スイセンは桂島でも少しずつ数を増やしました。
2つの島の人たちはスイセンの花が咲くころに、お互いの島を訪れて交流を続けていました。
三浦さんは4年間仮設住宅で暮らしたあと、島内の復興住宅に移りました。
生活には慣れてきたそうですが10年経った今でも、周辺では道路の整備など復興に向けた工事が続いています。
「震災のことを忘れて、前に進むことだけを考えたい」
(三浦勝治さん)
「言ってみれば、『通過点』で10年っていう節目という感じではない。もう震災のことを忘れて、前に進むことだけを考えたいね」
桂島と男木島。
毎年この時期にお互いの島を行き来していた2人ですが、新型コロナによって去年も今年もそれができない状況が続いています。
(テレビ電話で会話する中條慎也さんと三浦勝治さん)
中條さん「コロナが収まったら、来年は来てよ」
三浦さん「それこそ、新しい『めおん』ちゃんに乗らなきゃ」
「辛かった“冬”を乗り越えたらきっと“春”が来る」
(男木水仙郷をつくる会/中條慎也さん)
「スイセンを植えてくれて、スイセンウォークをやったり、その後には海水浴場を新たに作ったり、桂島がどんどん元気になっていく姿を、この10年間ずっと見てきました。スイセンって寒い中、もうちょっとの辛抱だよ、春が来るよっていうときに、その前に咲くからね。いいなと思いますね。ちょうど震災乗り越えてね、辛かった冬を乗り越えてねパッと咲くように、この花が咲いたら春が来る、この辛い時期を乗り越えたらきっと春が来る、それを告げるような花ですよね」