相撲の行司さんが勝負を判定する時に使う「軍配」にちなんだ名前のトンボをご紹介します。水のきれいな場所にすむこのトンボ、今、生息があやぶまれています。
岡山県和気町の水辺で見られたグンバイトンボ(モノサシトンボ科)。
まず目を引くのは中脚と後脚の白い部分。これを相撲の行司さんの「軍配」に見立てグンバイトンボと名が付きました。
軍配を持つのは、オスです。オスは縄張りをつくり別のオスが近づくと追い払います。
その姿はまさに相撲さながら、縄張りを守りメスとの出会いを待っています。
一方、メスには軍配はありません。
辺りを見渡すと2匹のトンボがつながっているのが観察できました。これは、いくつかのトンボに見られる「連結産卵」という行動です。
何とも不思議な光景。つながったまま浅い水辺に降りメスが水草などに産卵します。
オスは直立し産卵のあいだ、メスから離れません。他のオスにじゃまされないよう仁王立ちし、産卵するメスを守ります。
人知れず繰り広げられる水辺のドラマ。一見、ユーモラスにも見えますが、これは自らの遺伝子を残すためのもの。悠久の年月の中で獲得した行動です。
グンバイトンボは水草が豊富な川の中流や、湧き水があるような澄んだ水辺で見られます。水質汚染に弱いため数を減らしており、環境省では準絶滅危惧としています。
相撲の軍配に由来する楽しい名前のトンボですが、その生息環境は土俵際なのかもしれません。