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流産した赤ちゃんを冷蔵庫に 「手詰まり…」逮捕された夫婦が語る苦悩 香川

 9月、流産した赤ちゃんの遺体を遺棄したとして20代の夫婦が逮捕されました。「不起訴」となった後、夫婦は自分たちの対応を後悔しながらも「手詰まりだった」と当時の心境を語りました。

弁護士「逮捕は極めて早計だった」

(妻)
「早く気づいてあげられとったら、こんなことにならんかったのかなって思ったり。今回はちょっとあれやったもんな」

 丸亀市で1歳の長男と一緒に暮らす20代の夫婦。9月24日、警察に逮捕されました。逮捕容疑は「死体遺棄」。流産した赤ちゃんの遺体を冷蔵庫に入れて遺棄した……というものでした。

 この事件について、高松地方検察庁は10月5日付で「不起訴」という判断をしました。理由は明らかにしていません。

 10月14日、妻の元弁護人は香川県警に抗議文を提出しました。

(妻の弁護人を務めた/佐藤倫子 弁護士)
「お二人から、少し事情をお伺いするなどすれば本件が罪に問われるような事案でないことはすぐに分かったはずです。警察による本件逮捕は極めて早計だったと言わざるを得ません」

妊娠に気づいていなかった妻

 発端は9月21日の未明。20代の妻が自宅で赤ちゃんを流産しました。

 妊娠4カ月から5カ月ほどだったとみられていますが、妻は妊娠に気付いていなかったということです。

 その後、かかりつけの婦人科クリニックを受診しようと考えましたが、この時期は休診していました。夫婦は金銭的な余裕がないため、他の病院の受診をためらってしまい、かかりつけのクリニックが再開したら受診しようと考えたということです。

 赤ちゃんについては夫と相談した結果、腐敗を防ぐために冷蔵庫に一時保管することにしました。

(夫)
「悪意だったり罪の意識があってそうしたかって言われたら全くそうじゃないし、ちゃんと生まれてこれんかった、産んであげれんかったっていうことに対して、ちゃんと最後まできれいな状態で供養してあげたいっていう、自分らなりの考えの中でそうしたのは間違いない」

妻の流産を保育園に伝え……

 24日の朝、夫は1歳の長男を保育園に預けるときに「妻が流産したこと」を園に伝えました。すると、その日の午前中に住民票がある自治体から夫に電話がありました。

 自治体の担当課によると、保育園からの連絡で「死産して遺体を冷蔵庫に入れている」ということだったので、事実確認のために電話したということです。

 夫によると、職員に状況を説明して対応を相談したということですが、職員からは「流産から数日経っていることもあり、どのような対応が必要か役所だけでは分からないので、関係機関と相談する」と伝えられたということです。その後、夫婦は自宅に来た警察に任意同行され、夜に逮捕されました。

(夫)
「モラルというか、倫理的に外れてるんかなって言われたら、確かにそうかもしれんけども、その時の状況で言ったらもう手詰まりだったから。役場に電話しても分からへん。じゃあ本当にどうしたらいいのって話で……。あれよあれよという間に逮捕されて、12日間勾留された」

(妻の弁護人を務めた/佐藤倫子 弁護士)
「お父さんやお母さんに落ち度が一定程度あったとして、だからじゃあ、こんなふうに社会的不利益・制裁を受けるようなことでいいんだろうかと私は思っています」

同様のケースは過去にも

 同じようなケースは過去にもありました。2020年12月、東京都で死産したとみられる赤ちゃんの遺体を袋に入れて遺棄したとして、20代の女性が逮捕されました。

 女性は、「死産したがどうしたらいいかわからない」と「赤ちゃんポスト」を運営する熊本市の慈恵病院にメールで相談。病院が警察に「保護」を求めたところ、女性は逮捕されました。

(慈恵病院/蓮田健 院長)
「この状況で逮捕というのは遺憾であります」

 この事件でも女性は不起訴になりました。

(慈恵病院/蓮田健 院長)
「とっさの判断がちょっと苦手な方もいらっしゃいますので、だから行政とか警察の方が思われているようには、悪気はなくても『できない』という人は結構多いです。この事件に関しては」

稀なケースだからこそ「指針」が必要

 蓮田院長は、全国の同じような事件の裁判で意見書を書くなどしています。その上で、稀なケースだからこそ全国的に事例を集めて「指針」を作っておくべきだと訴えています。

(慈恵病院/蓮田健 院長)
「警察官にとっても検察官、裁判官にとってもおそらく一生に1回くらいだと思います。立ち会うのが。だからそれを現場任せではなくて、一定のガイドラインとか指針作りみたいなのがあってもいいのではないかな……。悪意のない、『明らかな過失』のない人たちを逮捕しない1つの予防策かなと思う」

 丸亀市の夫婦は逮捕から12日間勾留されました。夫は、釈放された翌日に1歳の長男と再会した時の顔が忘れられないといいます。

(夫)
「やっと会えた、お前らどこ行っとったんやっていうあの顔ですかね。それを見た時に僕はもう言葉が出んかったです。それをさせてしまった俺らの認識のあまさやったりとか、失敗だったりとか、それが一番の後悔かなって」

実名報道による誹謗中傷

 今回の事件を巡って、妻の弁護人を務めた佐藤倫子弁護士は、警察が逮捕を実名で発表し、報道機関が実名で報道したことも「配慮を欠くものだった」と批判しています。

 このことで夫婦は誹謗中傷を受け、妻は仕事をやめざるを得なくなり、夫は新しい職場の内定を取り消されたということです。

(妻の弁護人を務めた/佐藤倫子 弁護士)
「逮捕よりもケアを必要としている人も多いかもしれない。社会においてどう受け止めて、どう扱っていけばいいのかっていうのを今一度、考えていただければいいなと思っています」

 香川県警は「抗議文の内容を確認して適切に対処していく」とコメントしています。

 香川県産婦人科医会は「もし自宅で流産した場合は医師に連絡をすべき」としています。

 産婦人科の診療所に問い合わせるのが良いとしていますが、緊急の場合は救急車を呼んでほしいということです。

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