岡山市の商店街などを舞台に役者や観客が移動しながら演劇を見る「徘徊演劇」が28日、上演されました。
今回の公演は、岡山市の新しい市民会館「岡山芸術創造劇場」のプレ事業としてNPO法人「アートファーム」が企画したものです。岡山県を拠点に活動する劇団「OiBokkeShi」が参加しました。
徘徊演劇「よみちにひはくれない 岡山バリアフリー公演」は、20年ぶりに岡山に帰ってきた主人公が高齢の男性に出会い、その認知症の妻を探しながら自身の過去と向き合う物語。
岡山市の表町商店街一帯を舞台に、観客は主人公と共に街を巡り演劇を楽しみます。
(劇団「OiBokkeShi」/菅原直樹さん)
「題材が認知症・介護になります。介護者の気持ちだったり、認知症の人が見ている世界を想像するきっかけ、そういったものを共有していただけたらいい」
「老い」や「認知症」という高齢化社会の課題に「演劇」でアプローチするこの徘徊演劇は、これまでに埼玉やイギリスでも上演されました。今回、岡山の公演ではオーディションで選ばれた一般市民も役者として参加しています。有安由香梨さんもその1人です。
(徘徊演劇に参加/有安由香梨さん[33])
「普段は東京にいて、お芝居をしながら東京にいるんですけど、コロナでリモートワークでお仕事できるようになったので、帰ってきて」
有安さんはこの春、岡山に戻ってきて祖母と二人暮らしを始めました。
(徘徊演劇に参加/有安由香梨さん[33])
「やっぱり久しぶりに会ったら、なんか思った以上に年を取っていて、あまり電気もつけないで、ずっと座って、ぼーっとしてる。3分置きぐらいに、『あれ、きょう何曜日だったかな』とか『えーきょう何曜日よ』っていう会話を、あれっと思いながら」
祖母の変化に戸惑いを感じた有安さん。変化を与えたのは劇団の看板俳優でした。
岡田忠雄さん、なんと95歳です。
(徘徊演劇に参加/有安由香梨さん[33])
「岡田さんが本当に楽しそうにお芝居をされていて、演劇は今この時だから、この時を一緒に楽しむことはできる。すぐ言って忘れちゃうこととか、できないことに目を向けるんじゃなくて、今、こうせっかく一緒にいるんだから、一緒にいる時間を楽しむことはできる」
劇の最後、岡田さんが演じる男性はこう締めくくります。
(演劇の最後のシーンより)
「若い時にはけんかばっかりしよった。老人ホームへ行ったらね、あそこが最後なんだから、だから本当はわしは寂しいんよ」