香川県の伝統工芸や地場産業を担う職人と、日本を代表するアーティストがコラボレーションし、新たな価値を生み出す「讃岐リミックス」プロジェクト。斬新なアイデアを高い技術で形にした商品の展示会が高松市で開かれました。
高松市のデザイン会社「人生は上々だ」と旅行会社のJTBが主催した「讃岐リミックス」。漆器や盆栽、手袋など、香川の職人6組と日本を代表するアーティスト4人が2021年11月から新たな商品開発に取り組んできました。
1月22日と23日、高松市の玉藻公園・披雲閣にバイヤーなどを招き、完成した商品の展示会を開きました。
(記者リポート)
「コンベンションセンターなどで行われる一般的な展示会と違い、重要文化財である披雲閣を巡りながらそれぞれの商品に合わせた展示空間も楽しめる仕掛けです」
石工グループ「たぶん、加工。」×花澤啓太『THE TIME』
高松市の特産、庵治石の加工に取り組む若手の石工グループと東京のプロダクトデザイナーが作ったのは砂時計型の椅子、スツールです。石では難しそうな滑らかな曲線に、石工さんたちの技術が光ります。
薫る農園・川口屋漆器店×楠本勝三『薫(kaoru)』
讃岐漆器の象谷塗りの器から出てきたのは、高松市の農園の新鮮な野菜で作った「ばらちらし」。肉や乳製品など動物由来の食材を使わない「ヴィーガンレストラン」の口コミサイトで世界一の評価を得たフードスペシャリスト・楠本勝三さんが手掛けました。
職人の工房などを巡るツアーも企画
展示会の前日には、プロジェクトに参加した職人の工房などを巡るツアーも企画され、県内外のバイヤーらが参加しました。
丸亀うちわの伝統工芸士・三谷順子さん。今やプラスチック製のうちわが一般的ですが、1本の竹から手作りする伝統的な「丸亀うちわ」作りを20年以上続けています。
(丸亀うちわの伝統工芸士/三谷順子さん)
「これ1本がうちわ1本になるんですね。ひと管って言うんですけど、節を境に持ち手と穂になります」
東京から来たバイヤーの男性は、上部に切り込みを入れた竹を左右にひねりながら節までもみおろす工程を体験しました。
(東京のバイヤー)
「プラスチックのうちわを何となく使っては、気が付けばなくなって、またあってみたいな。作っているところを見て実際に家にあったら扱い方が全然違ってくるだろうなと」
丸亀うちわの新たな形は……
三谷さんとタッグを組んだのは、企業の広告デザインなど幅広く活躍するアートディレクターの小杉幸一さんです。当初、うちわの技術を生かした照明など新たな「形」の提案を考えていたところ……
(アートディレクター/小杉幸一さん)
「三谷さんから『やっぱりうちわを作りたい、そのものを使ってほしい』という要望があって、今まで考えてたことがすべて崩れて。やっぱりうちわとしての機能美というか、本質から逃げちゃいけないと思って」
そして完成したのが「Marugame Uchiwa〈BAR〉」。丸亀うちわが「1本の竹」からできていることを強調するため、竹に色をつけて表面に薄い和紙を張り、骨組みを見せるスタイリッシュなデザインに。
また、竹にレーザーで切り込みを入れ、1本の竹から模様が広がっていく様子を感じられるものもあります。竹に傷を入れると作る際に折れやすくなるため、三谷さんの熟練の技をもってしてもかなり苦労したそうですが……
(アートディレクター/小杉幸一さん)
「1年目の新卒生くらい、『やります!』っていうのが前のめりに来て、『これできますか?』『やります!』『1回やってみます!』っていうのがすごい新鮮っていうかびっくりした」
(丸亀うちわの伝統工芸士/三谷順子さん)
「やってみて、できるんだなと思いましたね。竹うちわを少しでも前進させながら、新しいものに挑戦しながら残していきたいなと思っております」
2022年秋には第2弾を計画中
今回、新型コロナの影響で展示会は当初の予定を短縮し2日間のみの開催となりましたが、2022年秋には第2弾を計画しています。
(讃岐リミックス総合プロデューサー 「人生は上々だ」代表/村上モリローさん)
「小手先のデザインでは今回は全くなくて、本質を追究してそこに対してどういうふうな答えを出すか。それもやっぱり今回のアーティストの方々と一緒にやらないと多分できなかったことで、これが基準になっていけば、全然違った表現が香川県からどんどん生まれてくるようになるかなと」