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脱ネット・ゲーム依存「オフラインキャンプ」の効果は? 香川県が新年度から本格実施へ

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 香川県がネットやゲーム依存の対策として行う「オフラインキャンプ」。小・中学生に、一定期間ネット環境から離れて自分の生活習慣を見直してもらうもので、県は、新年度から本格的に取り組む方針です。2022年夏に試験的に行ったキャンプでは、参加した児童生徒、そして保護者にどんな変化があったのか? その効果を改めて検証します。

「オフラインキャンプ」3カ月後の変化は?

 2022年8月、高松市の五色台少年自然センターと周辺施設で行われた「オフラインキャンプ」。小学5年から中学3年生の男女20人が参加しました。

 4泊5日の間、スマホやゲーム機などのデジタル機器は持ち込み禁止。

 自然の中でさまざまな体験をしたり、臨床心理士や相談役の大学生と一緒に、ネットやゲームとの上手な付き合い方について学んだりしました。

 2022年11月、再び、五色台に集まった児童生徒たち。3カ月後の変化を見るための「フォローアップキャンプ」です。

 体調不良や学校行事による欠席者もいましたが、久々に顔を合わせた16人が、近況を報告しつつ、野外でホットサンドを作って味わいました。

 8月のキャンプの後、生活に変化はあったのでしょうか?

(中学1年生)
「(ゲームを)1日3、4時間やってたのが、30分とか1時間ぐらいになりました。(ゲームを長く)やってしまう原因とか、やらない方法とかがいっぱい分かったんで、それを意識したら、何となく減ってきたような気がします」

(中学3年生)
「学校の先生とかと話す機会が増えたりしました。(Q.ゲームとかネットにかける時間という面はどうですか?)時間はちょっと大して変わってないような気が……」

 キャンプの後、いわゆるリバウンドで元の生活に戻ってしまったというケースも一部ありましたが、多くの児童生徒が、ネットやゲームの時間を減らせたり、外で遊ぶ機会が増えたりしていました。

 県から委託を受けてキャンプを運営した高松市の三光病院は、ネットやゲーム依存の「専門外来」を設けています。

 病院内での診察やグループワークでは、短期間でここまで大きな変化は見られないそうです。

(三光病院 臨床心理士/野仲和真さん)
「少し驚くような結果だったかなということを思っています。このキャンプでいろんな体験をしてもらうことで、友達を作ること、協力して何かを達成することというのは、こんなに楽しいんだというところを肌で感じてもらったのが、一番大きかったのかなということは思っています」

保護者を対象にした教室も開催

 オフラインキャンプのフォローは、子どもたちだけではなく、保護者にも行われました。

 香川県の小・中学生がネットやゲーム中心の生活を見直す「オフラインキャンプ」から3カ月。2022年11月のフォローアップキャンプでは、保護者を対象にした教室も開かれました。

 依存症治療の専門家、三光病院の海野順院長は、ネットやゲームを長時間やりすぎる子どもたちとの接し方についてアドバイスしました。

(三光病院/海野順 院長)
「『こうしなさい』と言うのではなくて、本人から『こうするわ』という言葉をどうやって引き出すかというのが基本的な考え方」

 そして、アメリカの心理学者らが開発した「動機づけ面接」というカウンセリング手法を実演しました。

「動機づけ面接」の実演
子ども役「ストレスが溜まってたから夜中にもゲームしちゃった」
母親役 「ストレスが溜まっていると発散したくなるよね。ちなみに何のゲームしてたの?」
子ども役「『原神』。最近面白いんだよね」
母親役 「疲れているときの『原神』は最高よね!」
子ども役「まぁでも夜中までしてるのはよくないよね。反省反省」
母親役 「よくないって?」
子ども役「寝不足にもなるし、宿題もできてないし、怒られたら嫌だし」
母親役 「どうしたらいいのかしら?」
子ども役「朝型の生活に切り替えて朝に宿題しようかな」
母親役 「なるほど、効果ありそうね」

 その後、保護者同士でわが子のゲームへのハマり具合や、普段、どんな「攻防」を繰り広げているかなどを共有しました。

(中1男子の母親)
「『いま何時だと思ってるの!?』とか、『じゃ何時に寝るつもり?』て言って『1時くらいかなぁ……』って言うから『はぁ?!(怒)』ってなって……(会場笑)」

 会場からは多くの笑い声が聞かれました。

(中2男子の母親)
「こんなことしてうまくいかなかったとかっていうのを、一緒に笑いながら話を聞いたりするのも、普段できないことだったので、親の私たちもリフレッシュできてすごくよかった」

(小6男子の母親)
「今までは短期的なこと、目の前のことばっかり注意したりとかしてたけど、中期的なこととか、長期的な目線で見られるようになったらいいな」

(三光病院 臨床心理士/川口知栄子さん)
「同じ悩みを共有するというところで、癒やされる部分があったり、ちょっと優しい気持ちになったりすることがあって。保護者の方自身が工夫をしたりとか、対応を変えていくことで、お子さんが元気になったり、あるいは問題から回復していったりすることは多くあるかなと思います」

 フォローアップキャンプの締めくくりには、児童生徒たちが今後の目標をみんなの前で発表しました。

(中学2年生)
「今後は生活リズムを整えるという目標に挑戦していきたいです。そのためにも、あしたから6時30分に起きる、寝る前30分はネットはやめる、に取り組んでみようと思います」

(中学3年生)
「優先順位を考えて行動する、という目標に挑戦していきたいです」

第三者委員会がキャンプの有効性を検証

 2022年度、香川県が行ったオフラインキャンプは「モデル事業」の位置づけです。

 2022年12月、キャンプの有効性について検証する第三者委員会がオンライン形式で開かれました。委員は、精神科や小児科の医師、教育委員会、PTAなどのあわせて6人です。

 委員会は冒頭を除いて非公開でしたが、情報公開請求で入手した「議事録」によりますと、キャンプを運営した三光病院側が、参加者のネットやゲームへの「依存度」、「使用時間」が3カ月後も下がっているという結果を報告。

 委員たちは、キャンプの有効性を認めた上で、「費用対効果」面での課題や、応募した子ども、親ともに、もともと問題意識を持っていて変化が出やすいという「バイアス(偏り)」を指摘する声も出ていました。

 三光病院の海野院長は、キャンプの体験をいかに現実の生活につなげるかが課題だと話します。

(三光病院/海野順 院長)
「せっかく参加後にいい変化があったので、それをいかに継続していけるようにサポートできるか。キャンプの開催、主催側だけでは、そこはフォローしきれないところですので、いかに学校、あるいは家庭とつなげていくか」

新年度から「オフラインキャンプ」を本格実施へ

 香川県は、新年度、オフラインキャンプを本格的に行う方針を固めました。

 当初予算案にネット・ゲーム依存対策事業費として、2022年度より約50万円少ない1018万円あまりを盛り込んでいます。

 香川県は、全国初となるネット・ゲーム依存症対策条例が施行された2020年度以降、3年連続で「ネット・ゲーム依存対策」を「重点施策」に掲げていましたが、池田知事に代わって初めての当初予算では「重点施策」からは外れました。

記者「これまで取り組んできた事業を引き続きやっていくという?」
知事「そのとおりでございます」
記者「何かまだ足りないなとか、もう少しここをこうしたらいいなみたいなところは?」
知事「現時点ではですね、あのー、ございません。継続して取り組む中で改善すべきはしていくというそういうことで」

 現在開会中の2月定例県議会では、代表質問、一般質問、委員会の場でネット・ゲーム依存対策事業に関する質問は出ていません。

 新年度当初予算案は3月15日に採決が行われる予定です。

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