香川県のネット・ゲーム依存症対策条例は「憲法違反ではない」とした高松地裁の判決から、9月30日で丸1カ月です。29日時点で原告の高松市出身の大学生は控訴をしていませんが、判決も確定していません。いったい今、どういう状態なのか取材しました。
この裁判は、2020年9月、高松市の当時の高校3年生と母親が「ゲームの利用時間の目安などを定めた条例は憲法違反」だとして県にあわせて160万円の損害賠償を求めたものです。
8月30日、高松地裁は「条例は努力目標であり、原告側に権利の制約を課すものではない」などとして「憲法違反とは言えない」と判断し、原告側の訴えを退ける判決を言い渡しました。
判決に不服がある場合の「控訴」の期限は、一審の判決文が送達=届けられた日の翌日から起算して14日以内です。
8月30日当日に裁判所で判決文を受け取った場合、9月13日までに控訴がなければ14日に一審判決が確定します。
しかし、この裁判では判決の日に原告側は出廷せず、郵便による送達手続きがとられました。
高松地裁によると原告のうち、母親は9月1日に判決文を受け取り、15日までに控訴状の提出がなかったため、16日に一審判決が確定しました。
一方、大学生は、29日現在、控訴の申し立てをしていませんが、判決はまだ確定していないということです。
高松地裁は、取材に対し「送達の状況については答えられない」としていますが、訴訟記録の閲覧手続きを行ったところ、29日午前10時の時点で裁判所には郵便局からの「送達報告書」がないことが分かりました。つまり、何らかの理由で原告の大学生の元にはまだ判決文が届いていないとみられるのです。
判決当日、大学生は「主張が認められず大変残念です。控訴の有無や内容については関係各所と相談して検討します」とメールでコメントしましたが、その後、連絡が取れなくなっています。
全国的に注目を集めた裁判ですが、判決から1カ月が経ってもまだ「宙ぶらりん」の状態という異例の経過をたどっています。
高松地裁は今後どうするかを明らかにしていませんが当事者が所在不明の場合裁判所の掲示板に判決文を掲示することで送達したものとみなす「公示送達」の手続きが行われる可能性もあります。