高松市のさぬきうどん店が、新型コロナと物価高の影響を受け、多くの人に惜しまれながら26日、閉店を迎えました。
(吾里丸うどん2 店主/渡辺錦司さん)
「気持ちの整理はもうついているので、心に残るうどん、そんなうどんが提供できたら」
この日、営業最終日を迎えたのは、高松市宮脇町の「吾里丸うどん2」です。
10時半のオープンから、多くの人が訪れ、11時には満席。うどんはいつもの3倍に当たる600玉を用意。鶏天や卵天など人気のてんぷらもたくさん準備しました。
こちらは常連の若者。うどんを2種類注文しました。
(常連の若者)
「最後だから、1玉ずつです」
「吾里丸のよさですか? おばちゃん優しいですよ。みんな優しいです、ほんま。温かい地元のうどん屋なんで寂しいですね、閉まるのが」
食べ放題に挑戦した記録も持って帰ります。
(常連の若者)
「吾里丸うどんで残るものが欲しかったので。紙でも家に飾りたいと思います」
「吾里丸うどん2」は、香川大学に近いこの場所で15年間営業していた「吾里丸」を引き継ぎ、2017年7月にオープンしました。
店長の渡辺さんに飲食店の経験はありませんでしたが、「吾里丸」時代のスタッフと常連さんに支えられながら営業してきました。
しかし、新型コロナの影響で一時、学生客が激減。さらに、小麦を始めとした原材料費と燃料費の値上げが追い打ちを掛けました。
(吾里丸うどん2 店主/渡辺錦司さん)
「いつかは戻るだろうと思って期待はしていたんですけど……そこまで行かなかったですね」
5年8カ月にわたる営業の最終日。香川大学のOBも、懐かしの味を求めてわざわざ県外から訪れました。
(香川大学OB)
「広島から来ました。家も近かったので週1くらいで来てました。ほんとに悲しいです」
営業終了の1時間ほど前に訪れたのは、この店の常連で、香川大学の大学院を卒業する中山雅登さん。
渡辺さんから厳しい経営状況を聞いたことをきっかけに、クラウドファンディングを実施するなど、他の学生とともになんとかお店を残そうとしてきました。
(中山雅登さん)
「やり残したことがたくさんあるなって、すごく感じます。悔しいです。このお店があったという記憶だったり、思い出だったり、与えられてきたものというのは、絶対になくならないので、それを糧に頑張っていくしかない」
中山さんら常連客から花束を渡された渡辺さんは一言……。
(渡辺店長から中山さんに)
「続けられなくてごめん……」
学生を中心に多くの人に愛されたうどん店。店長の渡辺さんは最後は笑顔で常連客を見送りました。