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【解説】バス路線維持を…岡山市がバス路線再編計画の素案を提示 事業者「みんなで協力して」「絶対もめる」

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 30日、岡山市がバス事業者らとバス路線の再編などについて話し合う協議会を開きました。協議会で市は、各事業者が「競争」ではなく「協力」して運行をすることを前提とした再編計画の素案を提案しました。

岡山市がバス路線再編へ素案示す

 協議会には、岡山市内で運行するバス事業者9社と大森市長らが出席しました。

(岡山市/大森雅夫 市長)
「市民の足を守るというのは我々にとっても至上命題。『3つの柱』を重点的に推進していくことで、利便性が高い公共交通サービスを安定的に提供していきたい」

 市は素案の中で、「3つの柱」として、「持続可能な公共交通ネットワーク」「利用しやすい運賃体系」「官民連携による利用・業務環境の改善」を掲げています。

 そして、バス路線を維持するために、複数の事業者が重複して運行している区間での路線廃止や、車両の小型化などに取り組むとしています。

 さらに、市の中心部では「供給過多の状態」だとして減便する方針です。

(松木梨菜リポート)
「岡山駅のバス乗り場なんですけれども、向かい側に見えるこちらのバスは、すべて回送中のバスなんです」

 岡山市で、最も多くの事業者が運行しているのが、JR岡山駅と天満屋バスセンターの区間です。

 終点が天満屋バスセンターの場合、駅周辺の待機場へは「回送」として走るなどしていて、市は効率が悪いとしています。

6月の協議会では「協力」の声相次ぐ

 2023年6月に開かれた協議会。この場で事業者から相次いだのが……。

(両備グループ/小嶋光信 代表)
「競争から協調へと」

(両備ホールディングス バスユニット統括カンパニー長/大上真司さん)
「岡山市内のバス事業者が協調して交通連合を形成していく協議を提案したい」

(下津井電鉄/永山久人 会長)
「無駄や無理をなくすしかない。交通連合であったり共同経営であったり」

 これまでのような「競争」ではなく「協力」しての運行です。

 この背景について、岡山市と倉敷市を中心に路線バスを運行する下津井電鉄は――。

(下津井電鉄/永山久人 会長)
「なかなか未来が見えない状況まできてまして、一番大きな業界としての問題はドライバーの不足」

 岡山市中心部を循環するバス「めぐりん」を運行する八晃運輸も……。

(八晃運輸/成石敏昭 社長)
「乗務員不足は一過性のものではないと思う。いわゆる生産人口は減っているわけで、その中で乗務員を確保して、今までの既存の事業を進めていくのは無理だと思う」

「共同運行」提案の背景は…

 岡山市のまとめでは、2023年7月時点で、市内バス事業者の運転手は57人不足しているとされています。さらに経営面での厳しさも6月の「共同運行」提案の背景にありました。

(下津井電鉄/永山久人 会長)
「今まで各社が各路線を持ってやってきましたけど、共同運行でありましたり、各社の運行経費を徐々に落としていかないといけない」

(八晃運輸/成石敏昭 社長)
「民間と民間で争う時代ではない。民間が束になって、自治体とか行政が主体になって、そういったもの(再編)を進めていくべきだと思う」

岡山市のまとめによると、市の路線バスの収支は、コロナ禍前の2019年には8億2000万円の赤字、コロナ禍の2021年には、赤字額が11億6000万円にまで膨らみました。その後、各事業者が便数を減らすなどして、経費や人件費を抑えた結果、赤字額は5億2000万円まで減少しました。それでも厳しい経営状況は続いています。

岡山市が提示した素案とは

 事業者からの声も踏まえて、岡山市は6月の協議会以降、事務レベルの担当者同士の会議などを非公開で重ねてきました。今回の素案は、その内容も踏まえてまとめられました。

 効率的な運行をするために、「都心」「幹線」「支線」「生活交通」とエリアを階層分けします。そして、その需要度に応じて運行本数や車両の大きさなどを検討するとしています。

 岡山駅と天満屋の間などの「都心」では、多くの事業者が運行していて「供給過多」の状態だとして、減便します。

 「都心」から各拠点をつなぐ路線も、事業者同士で重複している部分は廃止を含めた路線の整理を進めます。

 また、現在都心と各地域をつないでいるバス路線も整理。都心と各拠点をつなぐ「幹線」と、各拠点と各地域をつなぐ「支線」に分類し、「幹線」は大きな車両、「支線」は小さな車両で走ることで、より効率的な運行を目指します。「支線」は新たに設ける予定です。

 また岡山市は、素案に「運賃体系」の変革も盛り込んでいます。

 競争が激しい岡山市の中心部では、初乗り運賃が100円と適正価格より安い状態だとして、利用者の許容価格の範囲内で見直すとしています。

 その上で、中心部などにゾーンを設定。ゾーン内は全ての事業者が全路線で同じ価格に設定するなど、利用する側にもわかりやすい運賃設定にします。
 また事業者間で乗り継ぐ場合にも、乗り継ぎ割引などを設けたり、定期券の発行を一元化したりと、事業者が一体となったバス路線の運行を目指しています。

 岡山市は、「路線」や「運賃体系」を変えることで、利用者数と運賃収入、両方の増加を目指す、としています。

 岡山市が提示した素案は、これまでの在り方とは大きく違い、事業者同士の協力・理解を前提としています。
 一方、どの路線を廃線にするのか、どの事業者がどのエリアを運行するのかは、今後の協議としています。

素案に対する事業者の反応は?

 この市の素案に対する事業者の反応はさまざまです。

(両備グループ/小嶋光信 代表)
「両備グループとしては、今の計画に対しては基本的に賛同したい」

(宇野自動車/宇野泰正 社長)
「コロナは言い訳にはならない。一過性のクライシスでなしに構造的なもの。(事業者の)少数への再編が必要だと思う」

 市は今後、素案についてパブリックコメントを募り、2024年1月にも地域公共交通計画をまとめる方針です。

 その後、路線の再編などを盛り込んだ「利便増進実施計画」を国に申請した上で、2024年度、準備が整ったものから、路線の再編や新しい運賃体系などを実施したいとしています。

(岡山市/大森雅夫 市長)
「設備投資の一部を我々としても、公の費用で一部負担していくと考えている。日程はタイトだが、できるのではないかと考えている」

 今後について事業者は――。

(両備グループ/小嶋光信 代表)
「みんなで協力協調していって、無理無駄のないような公共交通の路線を作っていく」

(八晃運輸/成石敏昭 社長)
「各社の思惑とか思いがおありでしょうけど、それを言ってたら共倒れをするじゃないですか。生き残って行くためには、民間でどんな努力ができるか」

(宇野自動車/宇野泰正 社長)
「協力してみんなうまくいくなら、こんなにみんな難儀していない、何十年も。絶対もめる」

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