刑務所から出た後に犯罪を繰り返してしまう「再犯者」を地域全体で減らそうと、香川大学の学生たちが活動しています。受刑者を取り巻く状況について広く知ってもらうため、学生と刑務所が協力してある製品を開発しました。
学生が見ているのは自分たちで形や色をデザインし、高松刑務所の受刑者が作った「エコバッグ」。全国的にも珍しいコラボから生まれた刑務所作業製品です。
大学の生協で販売することを踏まえて、お弁当を入れた時に傾かないよう底を広くしたりペットボトルや箸が入る収納袋を付けたり、学生目線でデザインしました。
この日は、大学生4人と顧問の教授が、高松刑務所の工場で受刑者による縫製やアイロンがけの作業を見学しました。その後、実際にエコバッグの制作に当たっている受刑者3人と対談しました。
(大学生)
「学生とコラボ製品を作ると初めて聞いた時どんな気持ちになりましたか」
(受刑者 [40代])
「マーク付けるときに香川大学と書いてあったんで、あぁ、大学生の方からの依頼なんだとちょっと驚きがあって。見た人がきれいに作ってくれてるなとか少しでも感じてもらえたらという気持ちで作っている」
(受刑者 [50代])
「今回大学生が来てくれるというからうれしかった。『コラボはどっちが手を挙げたの?』って先生(刑務官)に聞いたくらい。僕らは技術を持ってるから、中に入ってきてほしいですね。うれしいです。一般の方と近づけるから。閉鎖された空間だからやっぱり。もっと明るくなると思う」
元受刑者に「居場所と出番」を 学生の活動
受刑者とエコバッグを作ったのは、香川大学の学生団体さぬき再犯防止プロジェクト、通称PROSです。この団体は、再犯防止を目的に2020年8月に発足し、現在は20人ほどが所属しています。
元受刑者が社会で孤立しないよう「居場所と出番」が重要だとして定期的に交流したり、地域の人たちに彼らを差別なく受け入れてもらうためのシンポジウムを開いたりしています。
PROSは、2022年の大学祭で、全国の刑務所作業製品を展示し、来場者にどんな製品が欲しいかのアンケートを実施。その結果を踏まえて、2023年度からエコバッグの企画を本格的に進め、2023年の大学祭では試作品を展示しました。
(訪れた人)
「なかなか受刑者の人と接点がないですよね。身近なところで言えばその方たちが作っているものを通して、その方の生活とか背景とかを知るっていうのはすごく大切なことかな」
そして、色や形について高松矯正管区や高松刑務所と打ち合わせを重ねエコバッグが完成しました。
受刑者の社会復帰に必要なものは…
高松刑務所の受刑者は大半を再犯者が占めます。対談では、エコバッグの制作を入り口に社会復帰についても話が及びました。
(受刑者 [40代])
「『受け入れられている』という状態が分からない。自分もそれで再犯してしまった」
(受刑者 [50代])
「もっと外の方と近づいて自分ら知ってほしいね。手を差し伸べてくれる人、私はいるけど社会に。みんなほかおらん人もおります。でも手を差し伸べたら立ち上がれる人は何人もおるんですよ自分が見ても」
(PROSメンバー)
「これからPROSの活動を続けていくところで、居場所を作るというのは大事にしていきたいなと思っています」
学生は約40分間、受刑者の話に耳を傾けました。
(PROSメンバー)
「一人一人はきはきとしゃべられていて自分の考えを持っていて、社会に出た時に周りが受け入れてくれたらうまく社会で生活できる人なんじゃないかと思った」
(PROSメンバー)
「PROSは生きづらさを抱えて犯罪をしてしまった人を受け入れる社会づくりというのが目的なので、われわれ自身が元受刑者がとなりにいるということを自覚することが大切だと伝えていきたいと思った」
エコバッグ販売開始「知るきっかけに」
大学生協での販売を前に、学生たちはエコバッグを紹介するポップを作りました。学生や来校した人に気軽に手に取ってもらえるよう心掛けました。
(PROSメンバー)
「刑務所作業製品と元受刑者の方について知っている人が増える。で、知って関わろうと思ってくれる人が少しでも増えたらそれだけで考え方も変わると思うし」
(PROSメンバー)
「受刑者の人とか元受刑者の人がどういうふうに過ごしていくのかなと、考えるきっかけがエコバッグにあればいいな」
今回制作したエコバッグは、高松市の香川大学幸町キャンパスの生協で7月から販売されているほか、大学祭での販売も検討しているということです。