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【解説】平井卓也衆院議員の政治資金パーティーを巡る疑惑を検察が再捜査 10枚購入で出席依頼は3人!?

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 自民党の平井卓也衆院議員の政治資金パーティーを巡る政治資金規正法違反の疑惑です。7月、市民の代表からなる検察審査会が「不起訴不当」の議決を出し、高松地検が再捜査を行っています。KSBでは、刑事告発のきっかけとなった女性を取材。いったい何が問題になっているのか改めて解説します。

パーティー券 10枚購入で出席依頼は3人!?

 「平井卓也を励ます会」。自民党の平井衆院議員が代表を務める「自民党香川県第一選挙区支部」による政治資金パーティーの案内です。
 2020年1月、香川県内の企業で経理を担当する女性は、この開催案内に付けられた「チケットご購入依頼の件」とする文書を読んで驚いたといいます。

 「依頼枚数」として1枚2万円のパーティー券を10枚、20万円という金額を記した上で、その下に「ご出席依頼人数3名」とありました。

(パーティー券購入依頼を受けた企業の経理担当者)
「こちらから10枚(分の金を)出したけど、3人だけしか行きませんよっていうのでなくて、あちらから3人だけ来てくださいっていうお手紙だったので、おかしいなと思いました」

 その前の年のパーティー券購入依頼の文書です。この年は8枚の購入依頼ですが、出席依頼は同じく3人。この会社では少なくとも5~6年は「依頼」の通りに購入・出席していたそうです。女性は前任者から引き継ぎを受けて20万円を振り込んだものの、上司に「違和感」を訴えました。

(パーティー券購入依頼を受けた企業の経理担当者)
「だってこれぼったくりじゃないですかって。2万円で10枚、20万円払っているのに、なんで3人なんですかっていうふうには会社の人(上司)には話はしたんですけれども。『まぁまぁまぁ……』っていう感じでした」

 このパーティー券の依頼文書の存在と女性の話を取材したのが、ドキュメンタリー映画監督の大島新さん。2021年の衆院選を追った映画『香川1区』の中で紹介しました。

(映画『香川1区』/大島新 監督)
「自民党の強さ、大きさというのを知りたいという思いがありまして、取材していく中でそれについてはなるほどと思えることもあれば、そういう『からくり』はあまり知りたくなかったなということもありまして……」

パーティーの対価なのか、寄付なのか

 そして、この映画をきっかけに独自に調査をして高松地検に刑事告発したのが政治資金問題に詳しい、神戸学院大学の上脇博之教授です。

(刑事告発した神戸学院大学/上脇博之 教授)
「まずびっくりしたんですね。もう最初から10人分で1人2万円で20万って書いてあるもんですから、これはもう限りなく弱い立場の会社にパーティー券を強制的に買わせている可能性があるなと。さらに、10人分パーティー券を買わせておいて3人しか参加を認めないということは、7人分は寄付なんですね。ところが、寄付とパーティー収入を分けてどうも書いてないんですね。となると、これは悪質だろうと」

 上脇教授によるとパーティーに出席する3人分の6万円はパーティーの「対価」ですが、出席を求められていない7人分の14万円は政治団体への「寄付」に当たります。

 政治資金規正法では政治団体が年間5万円を超える「寄付」を受けた場合、氏名や住所、金額などを収支報告書に明記することを義務付けています。
 一方、政治資金パーティーの場合は1回あたりの支払いが20万円未満の場合はパーティー券を購入した個人や企業・団体名を記載する必要がありません。

 この年の平井議員の政治資金パーティーは当初3月に開催予定でしたが、新型コロナウイルスの感染拡大で2度延期となり、2020年11月に高松市のホテルで開かれました。出席者によると、感染防止対策で例年のような立食形式ではなく、間隔を空けてイスが置かれていたといいます。

 女性の会社では、例年は依頼通り3人がパーティーに出席していたそうですが、この年は延期後の開催連絡がなかったため出席は「ゼロ」。1月に振り込んだものの返金はなく、結果的に20万円が丸々「寄付」という形になりました。

 しかし、自民党香川県第一選挙区支部の2020年度の政治資金収支報告書を見ても寄付の内訳欄に、女性が勤める会社の名前はありません。

 また、この収支報告書によるとパーティーの収入は2477万円で、対価の支払いをした人は931人でした。パーティー券は1枚2万円のため、購入者が1238.5人か収入が1862万円でないと数が合いません。

平井議員側は文書送付を否定「あり得ない」

 平井議員の事務所に問い合わせると、後援会の幹部が取材に応じました。そして、金額の食い違いについては「購入したけれど当日出席できなかった人がいるため」とし、10枚購入して3人の出席を依頼する文書を送ったことは「絶対にない。あり得ない」と否定しました。

 上脇教授はこの収支報告書について政治資金規正法違反の不記載、虚偽記入の疑いがあるとして平井議員と、政治団体の会計責任者を2022年11月に刑事告発しました。

(刑事告発した神戸学院大学/上脇博之 教授)
「政治団体が事実上ですね、(パーティー券を)企業に大量に買わせて、実際には参加させないで寄付を受け取っているということは違法な寄付ですよね。違法な寄付を受け取っていながらパーティー収入に紛れ込ませちゃうと、これ誰も分かんないですよね。裏金が作られている可能性だってあり得ます」

「捜査を尽くすべき」検察審査会が不起訴不当の議決

 上脇教授の告発を受けた高松地検は2023年10月、平井議員と会計責任者を「嫌疑不十分」で不起訴に。これに対し、上脇教授が高松検察審査会に審査を申し立てました。

 国民の中からくじで選ばれた11人が審査する検察審査会。7月10日、11人中6人以上が「不起訴処分に納得できない」と判断した「不起訴不当」の議決を出しました。

 高松検察審査会の議決では、パーティー券10枚の購入と3人だけの出席を依頼する文書と同様の文書が「より広い範囲で送付された可能性もある」として、照会先の母数を増やして捜査を尽くすべきだと指摘。
 パーティー券の売買の時点で購入者に出席の意思があったかや、政治団体側が実際の参加者をどのように認識・把握していたかなど、なお「捜査の余地がある」としました。

 また、平井議員にこの依頼文書などの認識を「聴取等をしない理由はない」とも指摘しました。

(刑事告発した神戸学院大学/上脇博之 教授)
「(Q.検察審査会の議決についてどう受け止めていますか?)よくぞ出してくれたなと、僕としては拍手喝采ですよね。これに検察が応えないと、検察審査会の存在意義がなくなってしまいます」

(パーティー券購入依頼を受けた企業の経理担当者)
「(検察審査会は)上の方の人たち、忖度する人たちではなくて、純粋に市民の人たちが集まってだと、そういうふうに判断してくれたんだなと思います」

 女性が調べたところ、この依頼文書と同じものは、グループ会社にも送られていたそうです。

(パーティー券購入依頼を受けた企業の経理担当者)
「(Q.検察にどんな捜査をしてもらいたいですか?)検察審査会に参加した方々のどうしてそれがバツだと思ったかというところをしっかりと聞き入れて、フラットに再捜査をしていただきたいです」

 高松地検の高宮英輔次席検事に他の企業・団体に幅を広げての捜査や平井議員への聴取を行うのか聞いたところ、「捜査の内容について答えるのは差し控える」とした上で、一般論として「必要だと思えばやるだろうし、必要ではないと思えばやらない。議決の内容を含めて必要性を判断する」と話しています。

平井議員は2010年のツイートで…

 自民党の広報本部長を務める平井議員は今回「多忙」を理由に取材には応じてもらえませんでした。

 2010年7月の平井議員の旧ツイッターへの投稿です。当時民主党の小沢一郎議員の資金管理団体の土地取引を巡る事件で検察審査会が出した不起訴不当の議決について「国民が政治とカネの問題に納得していないということ」「国会での説明責任を免れるものではない」と記しています。

 派閥の裏金問題で揺れた自民党の新たなリーダーを選ぶ総裁選が9月に行われますが、政治とカネを巡る国民の不信感を払拭するためにも、平井議員にはしっかりと説明責任を果たしてほしいと思います。

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