ニュース

特集

【解説】香川県立高校のタブレット端末が自己負担に…なぜ? 県教委は負担軽減策を検討

ADVERTISEMENT

ADVERTISEMENT


 香川県立高校の授業で使う「タブレット端末」。これまでは生徒に1人1台貸し出していましたが、2025年度の入学生からは各自で購入することになりました。「自己負担」に変わった背景や問題点を解説します。

保護者らが無償貸し出し継続を求める

 17日、小中学生の保護者で作るグループが高松市の商店街に立ち、署名への協力を呼び掛けました。

 署名は、香川県教育委員会に対し、県立高校でのタブレット端末の無償貸し出しを続けるよう求めるものです。

 香川県の県立高校では2019年度から一部の高校でタブレット端末の貸し出しを始め、2023年度、全校で「1人1台」の配備が実現しました。

 さぬき市の県立志度高校ではネット検索やグループ学習、発表など、さまざまな授業で活用しています。

(1年生は―)
「タブレットを使うことによっていろいろな情報を取り入れることができて、楽しく授業を受けられる」

(志度高校/多田俊昭 校長)
「積極的に使ってくれるようにはなってきています。生徒もタブレットを操作していると楽しいし能動的な学びにつながっているという意味ではこれからもどんどん利用が増えていくんじゃないかな」

2025年度から「自己負担」に変更へ

 そんな中、県教委は2025年度の入学生から学校が指定する端末を各自で購入する「自己負担」に変更する方針を2024年2月に明らかにしました。

 きっかけは、現在使っているタブレット端末が更新時期を迎える中、財源にしていた国の新型コロナ対策の交付金がなくなることでした。

 義務教育の小・中学校と違い、高校では教科書などの教材費は個人負担が原則のため、県教委は、元々はタブレット端末を購入してもらう方針でしたが、新型コロナ禍により臨時休校が続いたことを受け、国の交付金で端末を購入し貸し出すことにしたという経緯があります。

(香川県教育委員会/淀谷圭三郎 教育長)
「ここは緊急避難的にでも公費で(タブレット端末を)入れた方がこの間の学びの保障ができるのではないかとそういう判断でした。改めて(自己負担に)ご理解いただくための丁寧な説明をしていきたい」

 県教委が中学3年生と保護者に配布しているリーフレットによると、端末はセキュリティーの観点から、すでに個人で所有しているものを持ち込むことはできず、高校入学時に購入する必要があります。

1人約7.5万円…重い負担

 負担額は端末代とアプリや付属品をあわせて7万5千円程度です。

 学校にまつわる保護者負担を「隠れ教育費」として問題提起している千葉工業大学の福嶋尚子准教授は、この金額について……

(千葉工業大学[教育行政学]/福嶋尚子 准教授)
「(高校)入学の時には3月、4月、5月ぐらいで20万から30万円払わなければならないと現状でもよく言われています。そこに一気に7万5000円が加わるということになりますので、本当に教育行政や学校側が想像するよりも大きな負担であるというふうに思います」

 香川県議会の6月定例会には高校の教職員組合から公費負担の継続を求める請願も提出されましたが、反対多数で不採択に……。

 署名活動を行っている保護者たちは2025年度以降、学年によって差が出てしまうことや子育て世帯の負担増加は少子化につながることなどを訴えています。

 署名は街頭やオンライン署名サイトで募り、10月中には県教委に提出する予定です。

(署名活動の発起人[中1・小5・小2の母]/福本由紀子さん)
「子ども3人となると22万5000円ということでかなり負担だなと思っています。県の財政が厳しいといっても家庭も厳しいのは同じ」

(署名活動の発起人[小3・小1の母]/加藤梢さん)
「保護者の意見とか、今子育てしてる人たちの意見も無視じゃないけど、聞いてない状態で進められるのはちょっと怖いなっていうも正直ありますね」

公費負担か自己負担か 全国で分かれる対応

 高校のタブレット端末の費用負担、実は自治体によって対応が分かれています。 岡山県は、「家庭学習でも使用するため」として、導入当初から自己負担としています。

 2024年5月に文部科学省が行った調査によると、香川県と同じように原則、公費で負担しているのは47都道府県のうち23。自己負担としているのは24と真っ二つに分かれました。

 都道府県立と市区町村立の高校をあわせた端末の「台数」をみると、公費負担の端末が前の年よりも約6万台減ったのに対し、保護者負担のものは約26万台増えました。

 文科省は、香川県と同じように国の交付金がなくなったことで自己負担に切り替える自治体が増えているとみています。

県教委は負担軽減策も検討

 こうした全国的な流れはありますが、香川県教委は負担軽減策も検討しています。

 8月9日、香川県は県政に関心を持ってもらおうと高校の新聞部や生徒会の生徒を招いて知事の「記者会見」を開催。

 タブレット端末の自己負担に関する質問も出ました。

(高校生の質問)
「県からの支援がなくなったら、ICTの活用について子どもたちができないのかなと思うかもしれないんですけど、考えを伺いたいです」

 これに対し、池田知事は―

(香川県/池田豊人 知事)
「導入してしばらくの間国費で対応されてたものが、いきなり私費負担になるということに対しての負担感が極めて大きい。今の段階でどういうことが一番適切なのか、もう一度検討して改めて2025年4月に向けての方針を固めていきたいと考えております」

 また、淀谷教育長は9月17日の会見で、経済的な事情で購入が困難な家庭に端末を貸し出すことに加え、保護者に一律で負担軽減策を行うことも視野に検討を進めていることを明らかにしました。

(香川県教育委員会/淀谷圭三郎 教育長)
「全体的に結構高額ですから、それをどう対応していくのかという観点で今考えているということです。2025年4月の話ですからできるだけ早めに(負担軽減策を)ご提示する必要があるかなと思っています」

専門家「本来は国に要望すべき」

 教育とお金の問題を研究する福嶋准教授は「購入費の一部補助をすれば喜ぶ保護者は多いだろうが、本来県がやるべきことは違う」と指摘します。

(千葉工業大学[教育行政学]/福嶋尚子 准教授)
「コロナの予算がなくなった分、きちっとデジタル端末を整備できるだけの補助金を用意してほしいと国の方に言っていく方がおそらく重要なやり方だったはずで、やっぱりそれを安易に住民の方に投げ返してしまうっていうのはすごく問題が大きいというふうに思います」

 今回、取材をしていると小中学生の保護者からは「全く知らなかった」という声も多く聞かれました。香川県教委は、「1年以上前に方針を決め、早めにアナウンスしたつもりだったが、負担軽減策とともにより丁寧に説明して理解を求めていきたい」としています。

関連ニュース

全国ニュース(ANN NEWS)

新着ニュース