悲願のJ1昇格を果たしたファジアーノ岡山。クラブ創設から20年余り、選手だけでなく、これまでの歴史を支えてきた人たちの思いが実を結んだ瞬間でした。
プレーオフ決勝の試合前。スタジアムの外でサポーター1人1人と握手をしていたのはファジアーノの初代社長で、現在はオーナーの木村正明さんです。
(ファジアーノ岡山/木村正明 社長[当時])
「岡山の看板を背負ったチームをみんなで築いていきたい」
「ふるさとに恩返しをしたい」と当時勤めていた外資系の証券会社を退社して社長に就任した木村さん。就任時には資本金の一部を自ら出資し、無報酬でクラブの先頭に立ちました。
サポーターもその功績をよく知っていて、いつの間にか木村さんとの握手待ちの行列が。
(ファジアーノ岡山/木村正明オーナー)
「1人1人の力でクラブを育ててくださったと思っているので、直接お話をすると感極まってきそうになったんですけど、泣くのは勝った後で泣きたいのでただ本当に感謝の一言です」
過去の選手たちも集結
過去のファジアーノを支えた選手たちもスタジアムに集結しました。
(2008~2015年在籍/妹尾隆佑さん)
「脈々と引き継がれてきた思いとかがここまでつながったと思いますし、それが最後さらに花開いていってほしい」
増田繁人さん(2018~2020在籍)。
椋原健太さん(2018~2020在籍)。
そして、ファジアーノ結成時の選手でキャプテンも務めた藤井一昌さんの姿も。
(結成時のメンバー/藤井一昌さん)
「当時はちょっと想像できないような状態。いつかこういうふうになるのが僕らの夢だったので、きょう来られてよかった。きょうは昔の仲間も応援に駆け付けているんで頑張ってもらいたいです」
積み上げてきた歴史を背負い、全員で挑む大一番。
クラブに脈々と受け継がれる「ファジアーノらしさ」。最後まであきらめず、愚直にボールを追いかける姿を、いつも通り見せつける。
(ファジアーノ岡山/藤井一昌選手[当時])
「将来僕らがいるかどうか分からないですけど、今やっていることはすごく大事なことだと思うんで、将来があるしうちのチームはそれに向かって頑張っていきたい」
練習場の確保もままならなかった黎明期。
(記者リポート[当時])
「ファジアーノはここでJFL昇格を懸けて全国の強豪と戦います」
そこから地域リーグ、JFL、そしてJ2昇格と、一歩ずつ歩みを進めてきました。多くの逆境も乗り越えて着実に夢が目標へと変わってきました。
(ファジアーノ岡山/木村 正明オーナー)
「泣けるじゃないですか……。やっぱり長かったですよね。でもこれで終わりじゃないので、J1のタイトルも取りに行きたい。君たちが開いてくれた歴史だ。プロ化するって言ったときにアマチュアの選手19人が退団しました。きょう来たキャプテンの藤井一昌も泣きながら何度も話をして、僕のことを恨んでる選手もいたと思うけど、本当に彼らに自慢できるようなクラブを作ることがせめてもの恩返しなのでそこは自分の中で心に決めて、きょうは全員来てくれてうれしかったです」
「全員で勝つ」
創業者の熱い思いで始まった歴史に、また1枚新たなページが加わりました。
2024年12月7日。悔しさを味わったあの日とは違い、澄み渡る青空でした。8年前、雨に打たれて流した悔し涙とは真逆のコントラスト。
クラブと共に歩んできたサポーターはこの日も最高の雰囲気で選手を後押ししました。
(サポーター)
「勝って来年はJ1へみんなで乗り込みたい」
(コールリーダー/松下大和さん)
「J2に上がって16年。いろんな選手、いろんなスタッフ、いろんな監督、そしていろんなサポーターがここまでつないできました。(合言葉の)『全員で勝つ』というのは、この16年いろんな方が関わってくれたその全員で勝つということです! 今年俺たちがここにいるっていうことは今までの人がつないでくれた思い、それをきょう俺たちでJ1に連れて行きましょう!」
(サポーター)
「J1行くぞ!!」
試合前にはサポーター団体がスタジアムを回り、一体となった応援を演出しました。
(サポーター/河野良亮さん)
「やっぱりこのスタジアムはバックスタンドだけじゃ勝てない。メインスタンドとバックスタンド一緒になって応援しないと良さが出ないんで、とにかくやってほしいと。われわれサポーター団体のもしっかり準備してきたんで、最後は気持ちで声で伝えるしかないんで」
夢が現実に
最後まで声を張った12番目の選手たち。夢は少しずつ、現実へ。
(コールリーダー/松下大和さん)
「皆さんと共に昇格できてうれしく思います。本当に世界一のファジアーノサポーターだと僕は思います」
(サポーター/河野良亮さん)
「2022年にプレーオフをやったんですけどなかなか上手にいかなくて、声出し応援再開というところがわれわれには不利に働いちゃったところがあったかなと。いまビッグフラッグも若い子たちがいっぱい入ってきてくれて、大旗も太鼓も入ってきてくれて(号泣)。苦しいところからここまでできて本当に良かったと思っています。この先J1に行ったら勝てないし辛いし批判も受けると思いますけど、われわれはサポーターを迎える立場なんだというところだけはぶれずにしっかりやっていきましょう」