「選択的夫婦別姓」制度の導入が今の国会で焦点となっています。そんな中、香川県議会が19日、婚姻前の「旧姓」を通称として使うことを推進する法律制定を求める意見書を賛成多数で可決しました。
2月定例香川県議会最終日の19日、総額約4967億円の2025年度一般会計当初予算案など71議案の採決が行われ、いずれも原案通り可決・同意しました。
その後、最大会派の自民党県政会の議員らが「旧姓の通称使用」法制化を国に求める意見書案を議員発議しました。
意見書案では、選択的夫婦別姓制度により親子・家族別姓が強制され、子どもに好ましくない影響を及ぼすことや、戸籍制度の破壊につながる懸念などを指摘しています。
一方で、政府による「通称使用」拡大の取り組みは国民に広く認識されているとは言い難いとしています。
(記者リポート)
「通常は事前に示される意見書の文案ですが、今回は当日朝の議会運営委員会まで内容が明らかにされませんでした」
共産党の県議や市民団体は19日朝、「意見書案の中身が分からず検討もできない。最大会派の横暴だ」などとして議会の前で抗議行動を行いました。
2024年11月定例県議会では自民党県政会が「夫婦別氏について慎重な議論を求める意見書案」を提案しようとしましたが、事前に内容が報じられたことで会派の議員に反対意見が寄せられ、提案を見送りました。
今回の意見書案に「賛成」の立場で討論した自民党県政会の新田議員はこのときのことに触れました。
(自民党県政会/新田耕造 議員)
「事前に報道機関にリークし(意見書案を)上程させないよう、わが会派の議員に圧力をかけたり。このことはまさに言論封殺であり今回、このような事態を避けるために、事前協議はしなかったことでございます」
一方、2人の議員が反対の立場で討論しました。
(共産党県議団/樫昭二 議員)
「これから結婚を迎える若い世代にとって夫婦同姓を強制する国のままでいいのかが問われています」
(立憲・市民派ネット/植田真紀 議員)
「通称使用の拡大などでは根本的な解決にはならないという当事者の声を真摯に受け止めるべきです」
採決の結果、自民党県政会と1人会派・みらい香川の合わせて21人が賛成、自民党議員会や国民民主党議員会など6会派の18人が反対し、「賛成多数」で意見書案を可決しました。
香川県では2024年3月までに全ての市と町の議会が「選択的夫婦別姓」制度の議論活性化や法制化を国に求める意見書を可決。
香川県議会でも2021年に議論活性化を求める意見書を可決しています。
旧姓の通称使用による混乱と苦痛など、当事者の声を議会に届けてきた「ぼそぼその会」の山下紀子代表は「当事者の声を蔑ろにし、県議会への信頼も失墜するもので、ただただ非常に残念」とコメントしています。
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選択的夫婦別姓を願う香川県民の会(ぼそぼその会)山下紀子代表のコメント全文
香川県議会における突然の「旧姓の通称使用の法制化を求める意見書」可決のニュースに心底驚いています。
県議会では既に2021年10月議会で、選択的夫婦別姓制度の議論を活性化させるべきという意見書を可決しており、香川県では2024年3月までに全国で初めて、県内全ての自治体で同様の意見書が採択されています。
ぼそぼその会では、選択的夫婦別姓制度がないために苦しむ当事者の声を県内議会に届け、旧姓の通称使用による混乱と苦痛についても十分なご理解を頂き、「別姓は子どもが可哀想」などの偏見に基づく誤解も解いてきました。
今回の意見書は、内容が当日まで明らかにされないという異例の経過で可決されており、これまでの当事者の声を蔑ろにし、県議会への信頼も失墜するもので、ただただ非常に残念です。