岡山市の中心部にある岡山城の堀です。草の先に止まっているのは美しいトンボ、チョウトンボのオスです。
陽の光を受け青紫色に輝くハネは繊細なガラス細工のよう! 「翅脈」という筋がつくるこの幾何学模様には、ハネの強度を高め、飛ぶのに必要な揚力を生み出す機能があると言われています。
チョウのようにひらひらと舞うチョウトンボ。水草があるような場所であれば街中の公園の池などでもみられます。
金色のような深い緑色のような渋い色合いのハネをもつのはメスです。
あっ!何かがカメラの前を横切りました! よく見るとチョウトンボのオスとメスがつながっています。これはチョウトンボの交尾。
交尾はほとんど飛びながら行われます。その間、わずか十数秒。夏の繁殖シーズン、チョウトンボは繁殖相手を求め、縄張り争いを繰り広げます。
岡山市北区の渓流。心地よい音を生み出す複雑な流れ。涼し気な姿で石の上に止まっているのはミヤマカワトンボです。
青緑色で金属のような光沢があるのがオス。茶褐色でハネのふちに白い紋があるのがメスです。
ミヤマカワトンボの成虫は初夏から真夏にかけ川の上流の、周りを樹木に囲まれたような場所で見られます。
オスが腹の先をピッと立て、裏の白い部分を見せるのはメスの気を引くためとも言われています。
オスがアタックしますが――。メスはハネを開いて接近を阻止。腹をまげて、拒否するようなポーズ。
オスがホバリングしてメスに近づき、2匹がつながりました!
先ほどの、オスの高速のホバリング。羽ばたきの速さはオスの能力を示し、メスが求愛を受け入れるかどうかの基準のひとつとも考えられています。
メスは腹を大きく折り曲げ、先の方をオスの体にくっつけます。これがミヤマカワトンボの交尾。2匹がつくるハートマーク。メスは、オスの副性器といわれる部分から精子を受け取ります。
この時の交尾の時間は約3分半。メスはすぐに植物の茎の上に舞い降り産卵を始めます。
枯れた茎に腹の先の産卵管を押しあて卵を産み付けます。産卵しながら茎を伝って水の中に入っていくメス。
じわりじわり、深い方へ。ミヤマカワトンボのメスは水に潜って卵を産む「潜水産卵」をすることが知られています。
体がほぼ水に入りました。ハネの周りに空気の膜をつくることで、水の中でも呼吸ができ、1時間ほど潜れると言われています。
このような産卵をする理由は諸説あり、産卵中にオスが干渉するのを避けるためや、もし川の水位が下がっても卵が乾かないようにするためなどと考えられています。
ところで、ミヤマカワトンボのオスはメスが産卵している間、近くで見守る「警護産卵」という習性が知られています。産卵中、他のオスを近づけないよう近くで警戒します。
さまざまな時期や場所で、種類ごとに異なる繁殖活動を繰り広げるトンボたち。一見すると、気ままに、のんきに涼しそうに暮らしているようなトンボたちですが、次の世代に遺伝子を残そうと奮闘している姿を見ると、つい「情熱的」と言ってみたくなります。
(2025年9月2日放送「News Park KSB」より)