ニュース

特集

【特集】香りで体調不良に…香害に苦しむ人たち「普通の生活ができない」 岡山市

ADVERTISEMENT

ADVERTISEMENT


 柔軟剤などの香りによって体調不良になる「香害」。この「香害」により生活に大きな影響が出ている人がいるほか、子どもたちにも広がっているという調査結果もあります。当事者の声を通じてその実態を探りました。

自宅を訪れた人の香りがきっかけで体に異変

(「香害」に苦しむ/高見里美さん[73])
「戸を開けた瞬間にすごい、もう今までにないきつい臭いで、えっと思った瞬間に喉がカリカリして、うっとなって」

 岡山市に住む高見里美さん(73)。10年ほど前、自宅を訪れた人の香りがきっかけで体に異変が起きました。

(「香害」に苦しむ/高見里美さん)
「せき込んで、すごいそれが治まらなくて、うがいをしたり水を飲んだりとかいろんなことをし続けて、30分ぐらいでも落ち着かない」

 高見さんは、その後、日常生活の中で同じような症状が出るようになりました。

(「香害」に苦しむ/高見里美さん)
「(症状が出るのは)バスの中、それからエレベーター、要するに密室のような空気がずっと一緒のところにどなたかが入ってこられたり。本当に油断ができない。空気だからしょうがないけど困ったなっていうのは思っています」

 高見さんは、マスクはもちろん、厚手のタオルや水を持ち歩くようにして対策をしています。それでも生活に支障が出ています。

(「香害」に苦しむ/高見里美さん)
「よそのお宅に行ってもそういうもの(芳香剤)を置いてあったりするでしょう。だからすごくもう緊張して我慢します」

 香害による症状は頭痛や喉の痛み、吐き気などさまざまです。その原因は、柔軟剤や制汗剤などに含まれる香料だと言われています。

香害に詳しい医師「生命に関わることもあり得る」

 高知県で、香害など化学物質過敏症の患者の診察に当たっている小倉英郎医師は、いつ誰に症状が出てもおかしくないと話します。

(「香害」に詳しい/小倉英郎 医師)
「自分では発病する前に予見することはできないだろうと思うんですね。(症状が出ると)普通に歩くことができないから交通事故の原因になるとかですね、階段から落ちるとかそういうようなことが起こってしまいますので、生命に関わることもあり得るということですね」

つらい生活が続く中で感じる「社会的孤立」

 岡山県内に住む50代の女性は4年前、除草剤をまいたときに激しいめまいや頭痛に襲われ2日間寝込みました。そこから徐々に、香りによる生活への影響が出るようになりました。

(「香害」に苦しむ女性[50代])
「それまで使えていた洗剤、洗濯洗剤とか柔軟剤の香りでなんとなく気分が悪くなったり食器洗剤とかシャンプー、トリートメントとかスキンケア用品がなんとなく肌に合わなかったり喉が痛くなったり目がチカチカしたり、そういう症状が徐々に出始めました」

 さらに、転職したばかりの職場でも。

(「香害」に苦しむ女性[50代])
「同僚が身につけている整髪料とかそこにある食器洗剤とか。いろいろなものに自分が反応して気分が悪くなって頭痛がするようになって。その会社の中にいることが難しくなりました」

 会社は環境の改善に取り組んだものの女性の体調不良はおさまりませんでした。女性は会社をやめざるを得ませんでした。

 さらに、自宅にいるだけで体調が悪くなったため天井や壁を特別なものにリフォーム。バスや電車に乗るときに防毒マスクを着けることもありました。

 スーパーマーケットで買い物をするのが難しいことなどから、食料品はインターネットを使って購入しています。

 こうした生活が続く中で女性は「社会的孤立」を感じるようになりました。

(「香害」に苦しむ女性[50代])
「例えば、人と会うときにその人が使っている柔軟剤だったり整髪料だったりスキンケア品で体調を崩すので。会うことができたとしても外で会うことになりますし、そこまでしてなかなか会うことはできないんですけども、この症状に合わせてもらうことがわがままと思われたり気のせい・気にしすぎっていうふうに思われることがつらい」

子どもたちにも広がる香害

 市民団体、「香害をなくす連絡会」が2019年度に行った調査によると「香害で体調が悪くなったことがある」と回答した人のうち18.6%が「仕事を休んだり職を失ったり学校に行けなくなったりしたことがある」と回答しました。

 そして、香害は子どもたちにも広がっています。日本臨床環境医学会の分科会と室内環境学会の分科会が2024年度、小中学生約8000人に行った調査によると、10.1%の小中学生が「香害による体調不良の経験がある」ということです。

普通の生活ができない…病気への理解を

 9月11日まで赤磐市で開かれていた香害に関するパネル展です。パネルには香害の原因や症状などが書かれています。

(宮川周三リポート)
「パネルの横には訪れた人たちのメッセージが貼られています。中には当事者のものもあって苦しい現状が分かります」

(「香害」に詳しい/小倉英郎 医師)
「本人がそういうふうに勝手に言っているだけの思い込みだと。あるいは精神疾患じゃないかとか。そういうふうに思われることが一番大きな問題だと思います。相互理解というのが大事だと思うんですね」

 国は、啓発ポスターを作って香り付き製品を使うときは周囲に配慮するよう呼び掛けています。

 一方、「香害をなくす連絡会」と、地方議員らでつくる「香害をなくす議員の会」は8月20日、文部科学省に対し全国的な実態調査を行うことや学校内での香り製品の使用に関するガイドラインを策定することなどを要望しました。

(「香害」に苦しむ女性[50代])
「私のように仕事をやめることになったり、建物に入れなかったり、レジャーに行けなかったりっていう普通の生活ができなくなったので、こういう病気の人がいるっていうことも理解していただきたいなと思います」

 香害のパネル展は、現在岡山市北区の「建部町公民館」で開かれています。10月6日からは岡山市北区出石町の「コットン古都夢」で、12月10日からは玉野市役所で開かれます。

(2025年9月22日放送「News Park KSB」より)

関連ニュース

全国ニュース(ANN NEWS)

新着ニュース