岡山県の北部で県の郷土伝統的工芸品、郷原漆器の制作に取り組むアメリカ出身の作家の男性を紹介します。地域の自然や文化に魅了されたと話すこの男性は、伝統的な物作りを将来に伝えたいとの思いを胸に、制作に取り組んでいます。
木目を生かした素朴な味わい。3月6日、岡山市のデパートで開かれた岡山県の郷土伝統的工芸品・郷原漆器の展覧会には、汁椀、飯椀など普段使いの器が並びました。眺めていると手触りが伝わってくるようです。
手掛けたのは岡山県北部に住むアメリカ出身の作家・デービッド・ディロングさん(46)。
ディロングさんは発表した漆器のうち数点に、自分で樹木から採取した漆を初めて使いました。
漆の採取から生地づくり漆塗りまで全ての工程を自分で担う。その思いが初めて「かたち」になりました。
(アメリカ出身の作家/デービッド・ディロングさん)
「地元に根付いた郷原漆器を目指してますので、地域の素材を使って地域の中で作られた郷原漆器を目指していく」
2025年9月、真庭市蒜山上福田の明連地区で、ディロングさんに漆を採取する「漆掻き」の仕事を見せてもらいました。
日本人女性との結婚を機に、2004年に来日したディロングさんは、自然に囲まれた暮らしを求め2011年に夫婦で岡山県北部に移住。
岡山で漆器づくりを始めました。漆掻きを始めたのは2024年。素材の調達もふくめた伝統的な物づくりを将来に残したいとの思いからです。
伝統的な漆掻きは、まず、カマでウルシの木の表面をそいで平らにし、次に2種類の刃がついた専用の「カンナ」を使って……
(アメリカ出身の作家/デービッド・ディロングさん)
「傷をつけます。(Q.すでに出てますか?)じゅわっと」
さらに、「カンナ」のもう一つの刃で……
(記者)
「あっすごい出てきましたね。ヘラでかき集める。乳液のような」
(アメリカ出身の作家/デービッド・ディロングさん)
「ですねー」
(記者)
「おいしそうな」
(アメリカ出身の作家/デービッド・ディロングさん)
「そうそうそう。ちょっとおいしそうな。クリーム的な味がしそうな(笑)。マロン的な(笑)」
(アメリカ出身の作家/デービッド・ディロングさん)
「漆を知ることによって、時期による違いであったり、それが作品を作るときにフィードバックできて、作品により漆のいいところを生かせるように。ただ単に4日間に1回のやれやれの漆掻きではなく、勉強の場でもありますね。この森は」
次はロクロを使う生地づくり。ディロングさんは自分の「原点」だと話します。
岡山の豊かな自然に魅了され、木で何か作りたいと、まず初めにロクロで器を作り始めたそうです。
郷原漆器の生地には生木のクリの木が使われていて、器にすこし歪みが出ることが味わいになっています。
ディロングさんが考える漆器の魅力の一つは、使い込むごとに色やつや肌ざわりが変化し自分の暮らしになじんでいくこと。器と一緒に時間を重ねる楽しみです。
(アメリカ出身の作家/デービッド・ディロングさん)
「たくさん(漆を)吸い込ませたほうが、ここからの20~30年先の楽しみにつながっていきます。(Q.使う人の20~30年後?)そうなんです。経年変化。単純に吸わせてるだけなんですけど、手を抜いてはいけない」
何度も漆を塗り重ねるなどし、最後にハケで仕上げます。チリなどがついたり塗りムラができないよう神経をつかう仕事です。
漆の器の魅力を多くの人に知ってほしいというディロングさん。肩ひじ張らず、普段から気楽に漆器を使ってほしいと願っています。
(アメリカ出身の作家/デービッド・ディロングさん)
「大事に大事に使いたいというよりもなんでも使ってほしい。どんな料理でも入れてほしい。飾るものにはなってほしくない。郷原漆器を買った以上は毎日使ってほしい。ボロボロになるまで使っていただければ、それ以上のよろこびはないです」
(2026年3月23日放送「News Park KSB」より)