香川県が解体を進める旧県立体育館をめぐり、新たな法的手続きに発展です。解体工事の中止を求め、近隣住民が高松地裁に「仮処分」を申し立てました。
(仮処分を申し立てた近隣住民)
「建物を保存するタイムリミットが近いので。何もせずに壊されるのを見るのはちょっとしのびがたい」
仮処分を申し立てたのは、旧香川県立体育館の近くに住む62歳の男性です。体育館がある小中学校区で生まれ育ち、32年前からはすぐ近くに店舗と住宅を構えています。
申立書によると、「文化的、公共的価値を備えた建物を解体することは社会的相当性を欠く」などとし、県に解体工事の差し止めを命じるよう裁判所に求めています。
仮処分申請は、通常の裁判の結果を待っていては取り返しがつかない不利益が生じる場合、裁判所に一時的な措置を求める法的手続きです。
旧県立体育館を巡っては、建築家らでつくる再生委員会が2025年11月、民間資金での再生の提案を協議、検討しないまま解体工事に約8.5億円の公金を支出するのは「違法」などとして支出差し止めを求める住民訴訟を起こしました。
しかし、訴訟を起こしただけでは解体工事を止める効力はなく、県は2026年4月に工事に着手。敷地内の植栽や石垣など外構の撤去が進んでいます。
再生委員会は建物の耐震性などを鑑定するため、解体工事を中断するよう「証拠保全」を申し立てましたが、裁判所の判断に時間がかかっています。このため、近隣住民と連携し、今回の「仮処分申請」に踏み切りました。
(旧香川県立体育館再生委員会/長田慶太 委員長)
「(建物)本体に手をつく前、ギリギリのタイミングになりましたけど、本当にもう最後の手立てとして」
建築家の長田さんが原告となった住民訴訟は「公金支出の違法性」を訴え、解体工事を止めることを求めるものです。
一方、仮処分申請は近隣住民が原告となり、民事保全法に基づき「景観・生活環境利益の保全」を求めるもので、入り口が異なります。
一般的に、住民訴訟は判決までに半年から1年以上かかるのに対し、仮処分は数週間から1、2カ月と審理期間が短いのが特徴です。
その分、仮処分が認められるハードルは高く、申立人側は「緊急性」や「回復が困難であること」などを主張する必要があります。
並行して進む2つの法的手続き。共通して争点になりそうなのが「建物の耐震性」です。
香川県側は、2012年に行った耐震診断の結果をもとに「大地震で倒壊する危険性がある」と主張。この診断には「一般社団法人建築防災協会」が策定した診断基準・指針が用いられています。
しかし、原告側が協会や国交省などに問い合わせたところ、この診断基準は既存の「中低層の鉄筋コンクリート造の建物」が対象で、旧県立体育館のようにあらかじめ圧縮力を与えた「プレストレストコンクリート造」で、つり屋根構造の建物は「適用対象にならない」という回答を得ました。
(旧香川県立体育館再生委員会/長田慶太 委員長)
「明確な指針外なので、あそこで出た数字を法的根拠にすることは不可能だというはっきりした文言を(協会、国交省側から)いただきました。(香川県側が主張するように)信頼性もあって多用された指針なのは事実なんですけど、ただそれに適用範囲外のものを持ち込んで解いていいとはどこにも書いてない」
今回、仮処分を申し立てた男性は2026年3月、県と県教委、解体工事業者が開いた近隣住民対象の説明会に参加。
「県側の説明に納得がいかない」と再び住民説明会を開くよう要望書を提出しましたが、受け入れられず、解体工事が始まりました。
(仮処分を申し立てた近隣住民)
「壊すのは一瞬ですよ。二度とできませんよ。で、本当に本当に耐震がなくて危険なんですって言うのであれば、近隣住民も誰も反対することはないと思います。事実を確認していただければ、何かこれは違うんじゃないのか?っていうことを裁判官の人にも判断してもらえる一つの材料じゃないかなと私は思います」
(8日午後の知事定例記者会見)
(記者)
「一刻の猶予もないほどに解体を急がないといけないのか。倒壊の危険というのは本当にあるのかというのが近隣住民だけじゃなくて多くの人に納得されてないのでは?」
(香川県/池田豊人 知事)
「地震の際には特に安全性の懸念があるということについて、これからもしっかりと理解を得ていかないといけないと思います」
(記者)
「裁判の中で、別の専門家なりに本当に倒壊の危険があるんだという意見書を出してもらうなどの考えはありますか?」
(香川県/池田豊人 知事)
「今私たちは2012年の(耐震診断)結果について責任を持って不十分だという判断のもとで進めているところでございます」
香川県が示したスケジュールによると2026年9月には建物本体の解体が始まります。