“店頭価格2000円”の備蓄米で、令和のコメ問題は、収束に向かうのでしょうか?コメ農家の“廃業”が過去最多となる中、現場を取材すると、コメの増産も簡単にはいかない切実な理由が、見えてきました(サタデーステーション5月24日OA)
■“米フェス”のおにぎり店に長蛇の列も「高い」
報告・仁科健吾アナウンサー(新潟・長岡市 24日) 「ステージの前は、身動きがとれないほど、人で埋め尽くされています」
24日、サタデーステーションが訪ねたのは、新潟県長岡市で開催中の“米フェス”
報告・朝倉有香ディレクター(新潟・長岡市 24日) 「最後尾が分からないくらい列が伸びています」
この行列の先にあったのは…おにぎり店です。音楽を楽しみながら長岡産コシヒカリや日本酒が味わえるこのイベント。ここでも聞こえてきたのは…
おにぎりを買った人 「1個450円とか、結構高いな…きっと美味しいんだろうなと思って買いました」
おにぎりを買った人 「なかなかお米が買えないので金沢の家族にも持ち帰りたいと思います」
■早ければ来月にも備蓄米“5kg2千円”店頭で
小泉進次郎農林水産大臣(札幌市24日) 「農林水産大臣として皆さんと日本の食を守る、それは日本を守ると同じ意味」
23日、早ければ来月にも備蓄米5キロを2000円で店頭販売すると意欲をみせた小泉大臣。そのためこれまでの競争入札ではなく、随意契約に制度を改めることも明かしていました。
小泉進次郎農林水産大臣(札幌市24日) 「(随意契約は)26日から正式に始めます。もしも事業者の方が手を挙げていただいて、契約ということになれば、いまいただいている声の一つは早ければ1週間程度で店頭に2000円の5キロの備蓄米を並べることができるという方が出てきています」
現在、全国のスーパーで販売されているコメの価格は5キロあたり4268円と最高値を更新しています。講演に先立ち、北海道のコメ農家らと、意見交換をしていた小泉大臣。
小泉進次郎農林水産大臣(札幌市24日) 「備蓄米をこれから店頭に2000円で並ぶようにやっていきますと、こういったことに対しても、詳しくお話をさせていただいて、よくわかったと、農家の方にも言っていただいたというのは非常にありがたかったです」
■「販売中のコメ売れなくなるのでは」不安も
5キロ2000円という価格設定に消費者からは…
米を買いに来た男性 「安くなれば買いますけど/ずっと2000円3000円でいけるのかはちょっと疑問です」
米を買いに来た女性 「農家さんもあんまり(価格を)下げ過ぎちゃってやっていけなくなると困るし…」
さいたま市で70年続く老舗コメ店。悩んでいたのは、前回放出された備蓄米の価格設定です。
角田商店・白川和江さん 「それよりも仕入れが高いからお値段は高くします、3000円から3500円位の間」
今回の備蓄米が2000円で並ぶ場合、いま販売するコメが売れなくなるのではないかと心配をしていました。
■随意契約に期待と不安 老舗コメ卸売業者
一方、この随意契約に期待を寄せているところも…群馬県高崎市で江戸時代から続く老舗コメ卸売業者。
コメ卸売業者 金沢米穀販売 金澤富夫社長 「(倉庫は)ガラガラですね、こんなに少ないということは普段はないですね、本当に明日の納品どうしようという感じで分納でちょっとしのいでもらえますかと、もう四方八方、手を尽くしてお届けをしました」
ホテルや病院などにコメを卸していますがこれまでまとめた量を一括で卸していたのを、量を減らし分割する対応に追われています。政府の備蓄米はこれまで3回の入札のうち95%はJAが落札していますが、金澤さんはJAと取引をしていないため備蓄米は入ってきません。そのため、今回の随意契約について…
コメ卸売業者 金沢米穀販売 金澤富夫社長 「随意契約をしてくれるということを聞いたときは、これはいけるかなと思った、だんだんそれが具体的になっていくと、どちらかというと大手小売全国のスーパーマーケットさんとか そういう所にダイレクトに随意契約をするのかと、結局、我々既存のコメ業者はカヤの外かなと…」
今週に入り、石破総理や小泉大臣が長期的な対策として、コメの増産の方針も示しましたが…
コメ卸売業者 金沢米穀販売 金澤富夫社長 「急に増産はできないわけですよ、また新しく田んぼを作ろうと思うと数年はかかるわけですね」
■コメ農家”廃業”過去最多…簡単に増産できない理由
コメ高騰の一方で、コメ農家の倒産と休廃業は去年1年間で89件に上り過去最多となっています。実際、どれだけ大変なのでしょうか?私たちは、新潟県長岡市でコメ農家を営む西村さんを訪ねました。
仁科健吾アナウンサー 「広いですけれども、どこまでが西村さんの田んぼになるんですかね?コメ作りをしているところは全部でどのくらいあるんですか?」
コメ農家 グリーンファーム・ナカムラ 西村和正さん 「全部では80ヘクタールです。東京ドームでいうと17個分くらいですね」
見渡す限り広がる田園風景。西村さんの田んぼでは、コシヒカリやひとめぼれ、暑さに強い品種の新之助など4種類のコメを生産。その量は年間380トンにも上ります。これだけ広範囲の田んぼを管理するようになったのは周囲の農家離れです。
コメ農家 グリーンファーム・ナカムラ 西村和正さん 「後継者がいなかったり、農機具の更新ができないから作ってくれないかというのが毎年増えていって、20~30人くらいの方が離農されています」
西村さんが管理する田んぼは元々3ヘクタールでした。ここ5年で農家を辞める人が増え、今では25倍以上の80ヘクタールまで拡大。そこへ、追い打ちをかけているのが「生産コストの高騰」です。
コメ農家 グリーンファーム・ナカムラ 西村和正さん 「(肥料が)すごく上がっていまして、一袋6000円~7000円くらい、自分が農業を始めてからだと(価格は)倍くらいになります」
さらに…
Q.トラクター1台の価格はどのくらいですか? コメ農家 グリーンファーム・ナカムラ 西村和正さん 「(1台で)700万円から800万円ぐらいです」
畑を耕すためのトラクターなどはローンを組んで購入したといいます。他にも、燃料費や人件費などが重なり、経営は赤字ギリギリだといいます。
コメ農家 グリーンファーム・ナカムラ 西村和正さん 「毎月の自分で売っている直接販売がちょっと順調になってきましたので その辺の月の売上もだいぶ安定してきたのかなと思われます」
Q.消費者と米農家のバランスについては?
コメ農家 グリーンファーム・ナカムラ 西村和正さん 「やはり一番(コメを)3000円台で買っていただければ、お互いに消費者と生産者がお互いに良いように進んでいけるんじゃないかなと思います」
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高島彩キャスター: 今後の価格にも注目ですが、気になるのはこれまでに放出された備蓄米の行方です。
板倉朋希アナウンサー:. これまでに放出された備蓄米は合計31万トンで、このうち95%を落札したのがJA全農です。ここから卸売り業者を経て店頭に流れていくわけですが、農水省によりますと3月に落札された備蓄米21万トンのうち、1か月後に小売りや外食事業に届いたのは、わずか1割にとどまっています。残りは一体どこにあるのか?ですが、9割以上を落札したJA全農が23日に発表したところによると、3月に落札した備蓄米の半数はすでに卸売り業者に出荷済みだということです。
高島彩キャスター: JAの言葉どおりに受け取りますと、卸売り業者より先には備蓄米が流通していないということになりますが、どうしてなんですか。
板倉朋希アナウンサー JA全農が落札した備蓄米というのは、JA全農グループの卸売り業者であったり取り引き実績のある卸売り業者に販売されて精米されるんですが、JA全中の藤間常務理事は、「流通には検品や精米だけではなくて、複数の銘柄を混ぜるブレンド米にする作業や新たにパッケージを作ったりする期間が必要」と話しています
高島彩キャスター: さまざまな作業があるというのは分かりますが、このあたりのスピード感、小泉大臣になってどう変わっていくかですね。
ジャーナリスト柳澤秀夫氏: 大臣が代わって問題が解決するのかどうか、そう簡単な問題じゃないと思います。早く問題が解決してほしいんですが、大臣の交代で本当に解決するかどうか、少し釈然としないところがあるんです。なぜこれまで“随意契約”ができなかったのか、これも合わせてしっかり我々に説明してほしいですし、JAの説明はありましたが、果たして本当なのかな?と首をかしげたくなってしまうのが正直な印象ですね。
高島彩キャスター: なぜこれまでできなかったのか、やらなかったのか、そのあたりも検証が必要だ思います。ただ小泉大臣は期日と値段を明確にしていますから、そこは期待して待ちたいと思います。