職員に訓示を行った小泉進次郎農水大臣(44)。意欲を示しているのが備蓄米の新ルールです。安くなるのでしょうか。
■備蓄米の随意契約「無制限に」
22日午後のことです。
小泉進次郎新農水大臣 「農業も林業も水産業も、構造的に抜本的に変えていかないといけないのは、私よりも、この分野で生きてきた皆さんがご存じだと思います。とはいえ、いま国民の皆様に最も求められているのは、コメの問題をスピード感をもって結果を出せるかどうかです。そういった点において言えば、この会場にはコメの政策を日夜、睡眠時間も削りながら働いてくれている農産局の皆さんもおいでだと思います。本当にありがとうございます。しっかりと全省をあげて取り組むことができる体制をともに作って、そして国民の皆さんが求めているスピード感と強度で結果を出して信頼回復を必ず果たそうじゃありませんか」
新たに就任した小泉進次郎農水大臣。ゲームチェンジャーとなるのか、否か。22日朝の一幕にも決意がにじんでいました。
小泉新農水大臣 「(Q.きょうから本格始動だが何から着手する?)きのうから本格始動してます。随意契約にする方針を示して、そして需要があれば無制限に出すと」
■備蓄米“随意契約”で価格は?
強調したのはこの“随意契約”という4文字熟語。本格始動した21日も…。
小泉新農水大臣 「随意契約を活用した」「随意契約という形で」「随意契約の詳細な」「随意契約を始めたい」
「競争入札」から「随意契約」へ。コメの価格高騰に歯止めを掛けるため、備蓄米放出のルールをチェンジしようというのです。
小泉新農水大臣 「最重要、そして今最も力を入れなければならないのはコメ。とにかくコメに尽きる」
これまで行われてきたのが競争入札。入札に参加する集荷業者の中で高値を提示したところに備蓄米が売り渡されます。
一方、随意契約は政府が備蓄米の価格を決め、業者を選んで売り渡すことになります。なぜ随意契約に変える必要があるのでしょうか。
取材班が向かったのは、備蓄米が販売されている福井市のスーパーです。
Aコープやしろ店 山上剛副店長 「値段は5キロ3180円。税込みで3434円」
備蓄米、3434円。
備蓄米を購入した人(70代) 「今までコシヒカリを食べていた。でももう経費削減」 「ずっと『いちほまれ』だったが(価格が)下がらないので応急手当て」
この備蓄米、売り渡しのルールが競争入札でなければもっと安くできたのではないか、と言われています。
日本総合研究所 チーフスペシャリスト 三輪泰史氏 「最初の入札(では)(国に)備蓄米を納めてもらう時と、出す(売り渡す)時の差額で国がもうけている状況と指摘されていた。これは入札という仕組み上、一番高い値段で入れた人から順にコメを買っていく形になるので、備蓄米の値段が下がりにくい構造になっていた」
例えば、3回目の入札で放出された2023年産のコメの場合、政府の買い取り額は60キロあたりの平均が1万2829円でした。ただ、放出する際の競争入札では集荷業者に2万1926円で売り渡されています。つまり9000円ほどの金額が上乗せ。この分、市場に出回る備蓄米が高くなっている可能性があります。
そこで、今回進めているのが随意契約です。
三輪氏 「随意契約の場合、相手との個別の契約を結ぶ形になる。色々な条件を今回、農林水産省から付けることが可能。『店頭に並べる時期』『小売価格の調整』『経費の調整』(条件を)縛れる。(随意契約)第1弾だと3200から3300円くらいで、今の状況が改善される兆しが出てくる」
■備蓄米“随意契約”メリットは
他にも随意契約のメリットについて…。
三輪氏 「手続きの簡素化を含めて期待できる。もう一つは随意契約で渡したコメについて、より迅速に流すことを最初から契約に盛り込むことが可能」
一方、随意契約といえば、アベノマスクもそうでした。この時は…。
安倍晋三元総理 「店頭でのマスクの品薄が続く現状を踏まえ、急拡大するマスクの需要の抑制をはかり、国民の皆様の不安解消に少しでも資するよう速やかに取り組んでまいりたい」
コロナ禍に予算規模500億円ともいわれた肝煎り(きもいり)政策は、業者を選ぶ過程が不透明などと野党から批判を招く事態にもなりました。
備蓄米の随意契約は果たして…。小泉新農水大臣は、その対象者をスーパーなどの小売店や外食産業にも広げたいとしています。
追い風は新米にも。新たな流通網で安く買えるかもしれません。
客 「ちょっと高いですね。備蓄米放出すれば下がるとかなんとか言っていたけど」
コメの価格に頭を悩ませていたスーパーアキダイ。新米のシーズンに向け、新たな仕入れ先の開拓を決めたと言います。
スーパー アキダイ 秋葉弘道社長 「(去年冬以降)生産者から直接連絡があって、お付き合いを直接してもらえないかというのが4件あった。新たに生産者から直接買う。次回の新米から増やしていく方向で話を進めている」
生産者から直接売り込みがあり、契約が成立するという珍しいケースです。
秋葉社長 「『彩のきずな』という種類。コシヒカリに匹敵するくらいのおいしさ。以前食べたがおいしかった」
これまで出荷先がJA一本だったという埼玉県内の生産者。販路を増やすことで収入を安定させる狙いがあるといいます。
生産者が市場まで運び、それをアキダイが売り場に搬送。集荷業者や卸売業者を挟まないため、コメが安くなります。
秋葉社長 「一生懸命、良いものを作っているというのを確認したうえで販売するので責任持って販売できる。3000円後半くらいで販売できると思う」