富士山の山梨県側で山開きを迎えました。2025年の富士山、何がどう変わるのか徹底取材です。
■どう変わる?富士山登山
雲間から浮かぶ朝日と共に富士山の新シーズンが開幕です。
1日に山開きしたのは最も登山者が多い山梨県の吉田口。初日から5合目は大にぎわいです。
79歳の登山者 「行かねばならない。きょうの7月1日を待っていた」
この日を待ちわびた登山者が山頂を目指すなか、戸惑う人も続出。
危険登山の撲滅へ。今年の新ルールで富士登山はどのように変わったのか。山開き初日の富士山を追いました。
■“入山料”¥2000→¥4000
午前3時、登山客を出迎えたのは関所のようなゲートです。去年は木製の仮設ゲートでしたが、今年から新たに常設ゲートを設置しました。
ゲートだけではなく、登山ルールにも大きく3つの変更点があります。
まず1つ目の変更点は料金です。2000円だった“入山料”が今シーズンから倍の4000円になっています。
登山客 「ちょっと大学生には痛いと思うが、しょうがないこと。安全上しょうがない」
アメリカ人の登山客 「僕は構いません。この体験はそれだけの価値があると思う。すごく混んでいるから、この場所を手入れするのにお金が必要ですし、理にかなっていると思う」
中国人の登山客 「少し高いと感じるが、自分の趣味だから大丈夫かな」
しかし、登山者は安全管理や環境保全のためだと、おおむね受け入れているようでした。
■時間規制強化 ゲート閉鎖午後2時
続いて2つ目はゲートを通れる時間の短縮です。
午前3時に開いたゲートが昨シーズンよりも2時間早い午後2時に閉まります。それ以降は登り始めることができません。宿泊せずに夜通し登る“弾丸登山”への対策です。
なかには間に合わなかった登山客も…。
デンマーク人の登山客 「富士山に午後にならないと来られなくて、さっき私たちがもう登れないことを知った。とても残念。1時間半くらい散歩しようと思っていたのに」
■“富士山レンジャー”入山拒否も
そして、3つ目の大きな変更点が安全指導をするスタッフ「富士山レンジャー」らの権限強化です。
フランス人の登山客 「大丈夫、大丈夫」
タンクトップ姿のフランス人登山客を見つけると早速、呼び止めます。
富士山レンジャー 「服はありますか?」 フランス人の登山客 「では、あちらで購入します」
登山道とは逆の方向に戻っていくフランス人の登山客。
今シーズンから半袖やサンダルなど、登山にふさわしくない格好をしている登山客に対して入山拒否ができるようになったのです。
■売店で装備を整えれば入山可能
入山拒否されたフランス人グループは売店で買い物。
フランス人の登山客 「1万5000円したよ」 「パンツも買ったよ」 「(Q.準備はできた?)ああ、これから登るよ」
買ったばかりのおそろいの服を着て再び受付に行くと、今度は無事に入山が許可されました。
入山拒否されても売店で装備を整えればゲートを通ることができるのです。
■新ルールに戸惑い 3度目でようやく入山許可
1日は山開き初日とあってか、新たなルールを知らずに戸惑う登山客があちらにもこちらにも…。
登山客 「今、カッパを買ってきて…」 「(Q.なぜ?)これがないと登れないと登ろうとしたら言われて…」
出会ったのは雨具がないため入山拒否された男性です。売店でポンチョを買って再び受付へ…。
スタッフ 「買ってきましたか?」 登山客 「はい」 スタッフ 「ズボンはありますか?」 登山客 「入ってると思う」 スタッフ 「開けてもらっていいですか?」 登山客 「ズボンもないと(駄目)?」 スタッフ 「上下セパレートでないと駄目なんです」 登山客 「買い直してきます。返品できるのかな…」
スタッフは男性が買った上から羽織るポンチョタイプの雨具では入山を許可できないと説明。山梨県は富士登山に必要な装備として上下セパレートの雨具や防寒着、登山靴などを挙げています。
登山客 「これが700円で安かったが、ズボンもある1800円の高いものでないと駄目」
トボトボと売店に向かって歩き出します。
数分後、男性が戻ってきました。
登山客 「(Q.ありましたか?)買ってきました」 「(Q.先ほどより大きな…?)Lサイズ、ズボン付き。ズボンがないと駄目ということで帰らされて」
3度目のトライでようやく入山が許可されました。
登山客 「ようやく(入山許可を)もらいました。(到着から)40分くらいかかって、やっと」
右往左往しながらも登り始めることができました。
■登山道具 セットでレンタル可能
装備が全くないという人のために、こんなサービスも…。
登山客(大学生) 「装備を全く持っていなかったので、一式レンタルしてバッグに詰めて」
5合目の売店では、登山道具をセットで借りることもできます。
大学生2人組は登山靴からウェアまで一式を借りたといいます。
登山客(大学生) 「(一式で)約1万円。普段、登山しないので」 「(Q.服装のルールについて?)危ない山だから必要なことだと思う。軽装備で行って事故でも起きたら命を失うかもしれない。必要なことだと思った」
山梨県によりますと、山開き初日に富士山レンジャーらが軽装だと注意したのは約50人。しかし、多くの登山者が指導に従い、目立った混乱はなかったということです。
富士山レンジャー 藤間由起さん 「入らせないための権限ではなく、楽しく安全に帰ってくるための権限。そういうことを心掛けて皆さんが危険な目に遭わないように、安全に登山を楽しめるように私たちも協力します」