12日未明、北海道福島町で新聞配達をしていた男性がクマに襲われ死亡しました。クマは今も見つかっておらず、町では、衝撃と不安が広がっています。(7月12日OA「サタデーステーション」)
■初の「ヒグマ警報」発令
クマによって12日、人の命が奪われました。
報告・仁科健吾アナウンサー 「福島町で男性がヒグマに襲われ死亡したのを受けて、北海道が初めて『ヒグマ警報』を発出しました」
3年前に制度ができてから「警報」が出るのは初めてのことです。
北海道福島町 鳴海清春町長 「これまでの常識では考えられないことが起きた。まずは捜し出して駆除することに力を入れる」
■被害男性「助けて」 未明のSOS
辺りが寝静まっている未明のことでした…。
目撃者 「叫ぶ声が聞こえて。目の前にクマが人間の上にかぶさるような状態が見えたので」
報告・仁科健吾アナウンサー 「近隣住民によりますと、男性はこの辺りに自転車をとめていたということです。新聞を2部持ってまず、こちらの住宅に1部新聞を投函しました。その後もう1部をこちらに投函したあとに、このあたりでクマに襲われたという事です。いまでも石に血痕がついているのが確認できます」
現場は両脇を森に囲まれた住宅地です。すぐ近くにはグループホームや、小学校、高校などもあります。男性を襲ったクマは、ヒグマとみられています。
目撃者 「馬乗りっていうんですか、そういう感じですよ」
通報者 「引っ張られてて、被害の人が『うわっ、助けて』って言ってたんですけど、抵抗は全然無力だったという感じです」
警察に110番通報が入ったのは、午前2時49分でした。
■「やぶに引きずられていった」
「新聞配達員がクマに襲われ、やぶに引きずられて行った」(110番通報の内容)
目撃者によると、男性を襲ったクマは体長1.5メートルほどだったといいます。
通報を受けて警察と猟友会が駆けつけると、藪の中で倒れている男性を発見。その場で死亡が確認されました。通報からおよそ2時間後のことでした。亡くなったのは新聞配達員の佐藤研樹さん、52歳。
佐藤さんが引きずられていった場所を見ると、草が折れ曲がっていて、“けもの道”になっていました。その後、この草むらは捜索の際にすべて刈り取られましたが、クマの姿はありませんでした。
■2日前にも町内でクマ目撃
福島町では、たびたびクマが目撃されていました。
報告・仁科健吾アナウンサー 「現場から1キロほど離れた場所でも、10日の夜、クマが目撃されていました」
長年、ヒグマの生態を研究している専門家によると…
北海道大学大学院 獣医学研究院 下鶴倫人准教授 「基本的に人を避けて行動する動物ですので、警戒心が高く、日暮れ後であるとか、日の出前後といった時間帯に活動する」
日没以降、行動を活発化させるというヒグマ。先月、苫小牧市で午前0時すぎに、体長2メートルほどの巨大なヒグマが住宅街の道路を歩いている映像では、突然、ヒグマが車のほうに向かってきます。
■専門家「大きな足音を立てず存在に気付きづらい」
北海道大学大学院 獣医学研究院 下鶴倫人准教授 「突然ばったり出くわしたりとか、クマを刺激するような状況であれば、クマの方からも威嚇してくるというような状況が十分あり得る。そんなに大きな音を立てて歩くような動物でもないので、なかなかその存在に気付きにくいのかなと思います」
今回、佐藤さんが襲われているのを目撃した男性は、クマの気配は感じずに佐藤さんの叫び声で異変に気づいたと話します。
目撃者 「全然歩いてる音も聞こえなったし、砂利なので何か歩けば音がすると思うんですけど、その音も聞こえなかったので」
その後、佐藤さんは襲われたクマに数10メートルほど引きずられ、藪の中へと運ばれました。この行動も、専門家によると“ヒグマの習性”だといいます。
■「藪に引きずる」ヒグマの習性
北海道大学大学院 獣医学研究院 下鶴倫人准教授 「人目を避けて行動したいので、あまり目立つところで行動したくない。例えばシカを狩った後に、そのシカをくわえて、藪の中に引きずっていったりとかですね」
警察はクマを駆除する方針を固め、ハンターとともに男性を襲ったクマを捜索していますが、まだ行方はわかっていません。佐藤さんの勤務先の新聞販売所の所長は、私たちの取材に、こう答えました。
佐藤さんが勤務する新聞販売店所長 「大雨降ろうが、大雪降ろうが欠勤することはなかった。本当にショックです」