川が増水した時に堤防の役割を果たす「陸こう」についてです。西日本豪雨の被害が大きかった倉敷市真備町で「陸こう」が閉まっていれば、浸水を遅らせることができた可能性があることが分かりました。
倉敷市真備町の決壊した末政川に架かる橋に設置された陸こうは、溝に板などを差し込むタイプのもので、川が増水した時に水をせき止め堤防の役割を果たします。しかし、西日本豪雨でこの陸こうは閉まらず、橋をつたってあふれた水が堤防を決壊させました。そもそもこの場所には10年以上前から溝に入れる板が用意されていませんでした。
管理する倉敷市はー。
(倉敷市建設局土木部/梶田英司 部長) 「土のうを準備して積んでいこうという作業に入ったんですけど、それができなかった。経験値以上のスピードで水位の上昇があったというところで間に合わなかった」
一方、西日本豪雨の浸水メカニズムを調査している、東京理科大学の二瓶泰雄教授はこう指摘します。
(東京理科大学/二瓶泰雄 教授) 「(有井地区は)陸こうが閉じていれば、そこからの乗り越える水の量が、ほぼ0か非常に少なくなりますので、陸こう部分の決壊というものが防げた可能性が高いと」
二瓶教授のシミュレーションによると、陸こうが閉まっている呉妹地区と有井地区では、浸水スピードが遅いことが分かります。浸水が深かった川辺地区の中心部では、陸こうの閉鎖によって浸水のピークが3時間から4時間遅くなり、最終的な浸水の深さも約40センチ低くなりました。
(東京理科大学/二瓶泰雄 教授) 「避難にかけられる時間というのが、陸こうがあれば相対的に長かったのかな、というふうに思います」
14日に倉敷市が開いた懇談会でも、住民が陸こうの運用を問う場面がありました。
(倉敷市/伊東香織 市長) 「急激に水が出ていく場合に、本当に、対応というところが非常に難しくなってきますので。陸こうをとにかくなくしていけるような、そういうので検討してもらいたいということを強くお願いしています」
岡山県によると、県内の陸こうのうち、西日本豪雨では少なくとも16カ所が適切に閉められず、247カ所については管理が不明などの理由で、調査中としています。
国土交通省は、去年12月、陸こうをどのタイミングで閉鎖するのかなど、運用体制を定めるよう全国の自治体に通知しました。