備前焼の「かめ」で中世の酒造りを再現しようと山形県の酒蔵の男性が12日、窯元を訪ねました。
兵庫県相生市。備前焼作家、松井宏之さんの窯です。松井さんが作っているのは、容量300リットルの大きな「かめ」です。大きいため、窯の中で作ってそのまま焼きます。ろくろが使えないため、伸ばした粘土を足しながら「かめ」の形を整えます。
松井さんの作業を見つめるのは、山形県米沢市の酒蔵、小嶋総本店の小嶋健市郎さんです。小嶋さんは2020年の秋、備前焼の「かめ」で日本酒を仕込む予定です。
安土・桃山時代から続く小嶋さんの酒蔵は米沢藩の上杉家に代々、酒を納めた御用酒屋です。かつては酒の仕込み作業に備前焼の「かめ」を使っていたそうです。
小嶋さんは備前焼の「かめ」で中世の酒造りを再現しようと考え、松井さんに制作を依頼しました。
(小嶋総本店/小嶋健市郎 社長) 「こういうかめは何かしら容器そのものがお酒に影響する容器なので、しかも土で。こういうかめでお酒造ってるとこってほぼほぼ日本酒の世界ではないですから」
(備前焼作家/松井宏之さん) 「飾り物じゃなくて実際の実用、用に足るという形で非常に興味があります」
大型の「かめ」は需要が少ない上、特殊な技術と広い窯が必要なためほとんど作られていません。
(松井宏之さん) 「大きな物を作る時は粗い方が良いんです。作りやすくて。ただ粗い土だと水漏れをしてしまって、醸造では水漏れが多いと実用面で疑問もある。だから今回は制作の方は、大きい物には難しいかもしれませんけど、細かめの土を使っています」
松井さんは以前、瀬戸内市にあった森陶岳さんの窯で備前焼の「かめ」作りを学びました。
小嶋さんはこの日「かめ」の材料となる土も見学しました。「備前焼」の理解を深めた上で中世の酒造りに挑みたいと話す小嶋さん。
備前焼の「かめ」は7月に完成し、10月ごろから酒の醸造に使われるということです。